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トウメイ希望
2025-10-11 16:20:19
21571文字
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【ルデナナ】道の先へ
牧場物語「三つの里の大切な友達」の二次創作。ルデナナです。
一年目。春から夏へかけてぐらい。
憧れを胸にその道に飛び込んだお嬢さんが、現実を知って、悩んで、乗り越えて、強くなっていくのっていいよね。そんな妄想を収穫しました。
ルデナナは甘さ控えめ、ほんのり香る程度。
初めて書いたルデナナ小説です。今見返すと恥ずかしいよう。以前は某所で公開していたのですが、諸事情により非公開にしたためこちらで公開します。
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「やらずにはいられなかった
……
か」
牛がこちらを向いた。フラッシングをしている手は、知らず止まっていたらしい。
真っ黒な、ボールのように大きな瞳が、ナナミを見下ろした。彼女のまつ毛はとても長い。晴れた日は特に、まつ毛のかげが綺麗に見える。
大きな、つやつやと光沢のある頬を撫でる。気持ちよさそうな鼻息を聞きながら、彼女に囁きかけた。
「ね
……
初めてここに来た時のこと、覚えてる?」
彼女は数度瞬きをした。そのまま少しうつむいて、ただ耳を傾けていた。
「
……
遠く霞む山は、雪化粧をしていた。牧場を流れる川は、きっとあそこから来ているのだと思ったわ。
くわを振るうと、むき出しの土は黒かった。土が冬中かけて育んだ香りが、私を包んだ。
あなたを外に出すと、雪の名残の下から、枯れた去年の草の合間から、あなたは上手に春の新芽を探し出して食べていたわ。
僅かな若葉を見つけ出す癖に、どれだけ青々と茂っていても、絶対にあなたが食べない草もあった。そういうものには毒があることを、後から知った。
あなたは、私よりずっと、季節を見つけるのが上手いの。私はあなたたちから、自然を見つける目をもらったのよ。毎日の同じ仕事を繰り返しながら、昨日は見つけなかった春を、今日は見つける。草を食むあなたの傍に、ひょっこりとつくしが顔を出す。クローバーの隙間から、硬く膨らんだ蕾が顔を出す。そんな時、震えるほど胸を打たれて、動けなくなることさえあったわ。
季節を、ここに来るまで、見ているようで何も見ていなかった。春はカレンダーの中には無かった。あなたの視線の先に、いくらでもあった。
奔放な自然は、時にはバランスを崩して、他の何かを圧してしまう。
そんな時には、くわを振るわずにはいられない。草を刈らずにはいられない。あなたに話しかけずにはいられない。
あなたが、畑が、心地よい調和を取り戻すために、私の手を借りたがっているんじゃないかとさえ思ったの
……
そうやって丹精込めてあちこちを世話しているうちに、作物は実った。あなたのお乳は甘くなった。そしてね
……
」
そこまで言って、胸が詰まってしまった。
──そうして、ありったけの手間と時間をつぎ込んで育て上げたものを、三つの里に配り歩いた。
『おやまぁ、これは、うれしいおくりものだねぇ。ありがとう』
『野菜も牛乳も、とっても新鮮でおいしかったよ』
『あれは、うちの里では、なじみがなくてね。初めて食べたんだけど、気に入ったよ』
別に、見返りが欲しくてやっているわけじゃない。
ただ、嬉しくて。
私とあなたで見つけたもの、私とあなたで育て上げた作物たち。それらを三つの里に広げて、繋ぐたびに、人が笑顔になっていく。
私はこのために生まれてきたんだと、そう思わずにはいられないほど。
ナナミは彼女の胎を撫でてやった。顔を埋めると、あたたかくて、生き物の匂いがした。
「
……
ごめんね」
彼女は長いまつげを伏せると、ナナミに鼻先をすり寄せた。尻尾がぱたん、ぱたんと揺れていた。
空の高いところで、ヒイチリヒイチリ、ヒバリが声高に鳴いていた。求愛のさえずり方だ。
鳥たちも、子育てで忙しい。
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