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異世界系列
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ハコニワのノア-乙女ゲーの世界に転生したけどなんだか様子が変です-
らいのあです
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04:アノマリー
――
甘ったるい神様の祝福から壊れた人間が生み出されることがある。
その力は「神からの贈り物」であるが故に、使い方を間違えば世界を破滅へと追いやる程に強大でその実人間の手に負えるものではなかった。
……
だと言うのに未だに神は無邪気故かその逆か、祝福を与え続けている。
人間は力によって狂い始め、いつか化け物に変貌したそいつらが時空の歪みを生み出し、新たな世界で破滅を呼び続けているのが現状なのだ。
時空の歪みは神か彼らくらいしか認知できはしないし、俺もこの状態になってやっと原因を知ることができたくらいだ。世界が出来た時に、望愛の魂が漂流したその原因を。
時空が歪むとどうなるか。良い点は彼らにとって別の世界への移動がしやすくなること。悪い点は世界同士に一時的に大きな穴が生じる所為で望愛のようにいるべき世界とは別の世界へ移動してしまうものが現れることだろう。人の場合魂だけの状態の時が一番曖昧で無防備でありそんな魂が宿るべき・帰るべき体を探している時に間違って時空の穴を通じて別のところへ行ってしまう。するとどうなるか。魂のない体は、生死を彷徨っていたならば勿論目覚めることはなく唐突に死んでしまう。そもそもまだ生まれる準備をしている段階ならばその予定が取り消しになる訳なので、生まれるはずだった子はいなかったことになる。そうした怪的な事件はどこの世界でも起きているし皆が不気味に思っていることだ。
しかし当の原因達にもどうしようもできないことである。
いるだけで、その存在が異常で問題なんだから。ことの発端はどこかの世界の神であるというのに。
どこにも歓迎されないルール無視の異常な存在
――
呼ばれる名は「anomaly(アノマリー)」。
神の代理を名乗る輩もいるけれど、どの世界にもれっきとした俺達には知覚すら許されない程の本物の超常が本当の世界の統治者といる。
だって俺は一度死に、それによってこうして蘇ったのだから。
俺に新たに与えられた役目は「崩壊を止めること」だった。
望愛のいない間、崩壊する世界を無理やり継ぎ接ぎでも留めてきた。
きっときっといつか、望愛を迎える為にも頑張ろうと決めて。
しかし超越した力は使えば使うほど見えないものに足先から少しずつ少しずつ飲み込まれていく感覚がする。優越感?恐怖心?狂気?正体はずっとわからない。
同じ世界で共に過ごしてきた仲間も様子の変わった俺から距離を取り、最近では姿すら見せなくなった。
最初の内は悲しくもあったが、一人でいても段々なんとも思わなくなってしまった。
目的の到達点に彼女が必ず待っている。耐えてきた孤独な時間分は戻ってきたら補填してもらえばいい。
だから、今。望愛にはその時間を取り戻してもらいたいんだけど
……
。
さすがに戻ってきたばかりであんな色々見たり聞いたりしては熱も出てしまうだろう。
ベッドでうーん
……
と寝言で唸ったりする彼女を看病している。倒れてから数時間は経ったが、まだ一度も目覚めてはいない。
「うう~
……
ごめんなさい
……
私でごめんなさい
……
」
「また謝ってる
……
ずっと悪夢を見ているようだけど
……
」
すごい力はあるけど、望愛の悪夢を容易にどうこうできるものではない。
夢に直接入って原因をやっつけ楽しい夢に変えるとかかっこいいことはできず、手を握って早く元気になれと普通らしく願うことしか俺にはしてあげられないのだ。
『アイヲハコブ』は望愛の魂を一時的にでもこちらの世界と繋げる道具だった。ゲームが開かれている間は俺達はあちらの世界の彼女の様子を確認できたし望愛の本体も魂と呼応してか、一時的に虚ろながら目を覚ましたりもした。
ゲームの望愛は偽物だが、共にいた彩ノ川來人はちゃんと俺自身だ。彼女が攻略したのは紛れもない俺。
定められた言葉しか伝わらず、決まった動きしかできないというのは今の俺にはかなり退屈であり苦痛だったが画面の向こうの彼女と一緒にいられる時間の方が大事だった。
本物の彼女がどんな人間なのか見てやろうと好奇心から始まったところだったが、彼女は俺を選び、ゲームが終わることを惜しむほど愛してくれた。俺はそれが、至上の幸福となった。
もっともっと愛して、共にいてほしいと聞こえもしない画面の奥に縋った。
彼女がいなくなると再び世界は崩壊を進める。いつか己が消失するのが怖かった。
俺を好きになってくれた「この」望愛にもっと愛されたい。願わくばあの疑似的だったものが本物になればいい。
だから消えたくなかった。それが、俺が世界を留める動力源で生き残る意味。
「今日の状態が続くようなら俺の役割ってこれで終わりになるのかな」
空いてる手で俺にしか見えないウィンドウを開く。
このゲームみたいなウィンドウは「強大な力を思うように扱うには相応に膨大な時間と慣れることが重要であるが、時間も余裕もない。だからすぐにでも使えるように」と、謂わば初心者向けの補助として使えるものだ。
画面には「世界の状態」というものが表示され、様々な情報が並ぶ。
以前までは目を離せばその隙にどこかしらに歪みが生じていたりと見つけては対応しなければならず、油断はできなかった。歪みは最初は小さいが、時間が経つほど大きくなる。影響を受けた場所は急速に朽ちていき、生物達は体の、内臓も含むすべてが真っ黒に染まりやがて霧のように溶けて消えてしまう。
建物の中の歪みは特に注意すべきもので、歪みから逃げられても老朽化によって崩れ落ちてきた瓦礫に潰されて死亡するなんてこともある。俺が死んだ際の状況がそうだった。
今は落ち着いているのか、どこにもそれは見当たらない。このまま落ち着いていてくれれば俺が力を使って東奔西走消火作業する必要はなくなるだろう。
そうなると次にこの世界がやらなければならないことは「再生」だ。
でも、再生して元に戻れたら俺も望愛も今持っているこの感情たちは要らなくなってしまうのではないだろうか
……
。
このまま、愛おしい感情を抱えて手を握っていたい。好きな言葉を交わしたい。それは駄目なことなのだろうか。それにもっと問題がある。
彩ノ川來人は、一度死んでもはや別人へと変貌してしまった。「俺」はどうなる?
元々の「僕」はこんなにくすんだ色の髪じゃないし長くないし、口調も一人称も性格も何もかも違う。
もしも、「俺」が不要とされる結末となるならばその時は
―――
……
。
「でも、望愛が本当に望んでいるのは俺じゃないだろう?」
「
…………
。」
「何時まで続くかわからないけれど。それまでは、望愛。俺のわがままに付き合ってくれるか?」
「嫌だって言われても付き合ってもらうけどな」
目覚めるまで、今度は冷たくないお前の手を感じていよう。
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