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異世界系列
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ハコニワのノア-乙女ゲーの世界に転生したけどなんだか様子が変です-
らいのあです
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10:どこか似ている
「よしできたー!」
没頭しすぎてどのくらい時間が過ぎたのかは体感わからない。窓の外を見ればもう夕刻ではあるが。
出来立てほやほやの新たならいぬを抱きあげる。
「はじめまして、らいとくん!あなたの名前はらいとくんだよ!これから、私がいっぱい連れまわしたり一緒に寝たりすると思うけどよろしくね!」
前のものとはまた少し顔の違う、らいぬをぎゅっと優しく抱きしめた。
手のひらサイズの小さなものだけれどそこには愛をいっぱい詰めたつもりだ。
少しきょとんとした顔をしているような。まだ出来立てで戸惑っているのかもしれない。
だったら、私と同じだ。
「そういえば
……
ご飯の時間に来るって言ってたのに來人君来なかった、な?も、もしかして
……
私没頭しすぎてノック無視しちゃったかもしれない!?」
なんて失礼を
……
!と今更な慌てよう。後で土下座して謝らないと。
しかし、途端にお腹がすいてしまったな。
バスケットを返すついでにご飯のお誘いでもしに行こうかな。
私がいるところの反対の建物が男子寮になっていて、そっちにみんなの部屋がある。
「よし!行ってみよう
……
!確か2階にあるんだよね」
各部屋の前にはネームプレートがついているので錆びれているが、どれも読めない程ではない。
なので探すのは大変ではないだろう。
私はらいぬを胸ポケットに早速入れてドアを開けようとした。
すると、丁度コンコンとドアをノックされる。
「えっえっ!?すごいタイミング!
――
はい!」
なんという偶然だ。あまりにも丁度が良い。
なにも考えずに開けたのだ。
「よう
――
姫宮望愛、だっけ」
「ひっ
……
!れ、零紫君
……
っ!」
しかし現れたのは零紫君だった。
え、え、何故?あ。やはり生地を借りた所為で私今から零紫君に窃盗の罪で絞められる?
ならば仕方ありません。甘んじて死を受け入れましょう。
零紫君の手で制裁を受けられるならそれも又私への罰となるだろう。
「
……
出来たのかよ、ぬいぐるみ」
「え、は、はい。この子がそうです」
「この子、ねえ」
「わ、あ、き、気持ち悪いですよね!すみません
……
」
「へえ
……
まあ出来栄えは悪くねえな」
私の胸ポケットに入ったらいぬをまじまじ見る。
何をしに来られたんでしょうか?殺すなら早く殺していただいて構わないんですよ?
褒めてから殺す。なるほど、飴と鞭ですね。わかりました!
「お前、こういうの作るの好きなのか」
「え、えっと。作るのがというより、私の好きなものを形にするのは好き、です」
「あーまじでお坊ちゃんのこと好きなのか」
「あ!わ、私は來人君のファンなだけですので!恋愛感情とかいssssssssssssっさいありませんので!ご安心ください!」
「ご安心くださいって、何を
……
?っつか、お坊ちゃんったらかわいそーに。あんなに心酔してたのに好かれてねえんじゃん。ま、ざまあねえけどな」
ふっ、と軽く皮肉めいて笑う。
「零紫君は來人君のこと、好きじゃないんですか?」
「誰があんな狂った奴のこと好きになるかよ!まーじでなんか、ゲーム?始まってからあいつあんな気持ち悪いテンションになっちまって。ついてける訳ねえだろ。お前もそうだろ?」
「そ、その
……
まだよくわからないのでなんとも」
「
……
別に、昔は真面目でちょっと可哀想な奴くらいに思ってたんだよ。お前のそのぬいぐるみくらいの時期は。なんかあいつやたら人の期待に応えたがるから、そういうとこが気に食わねえんだけど」
「私は、來人君の不器用なところも好きです。話しててずっと感じていますよ
……
彼は歪なんだなって」
「あっそう」
「あ、あの。それで。結局なんのご用でしたか?」
「例の悪夢避けなんだっけ。ぬいぐるみ作ったのか気になって」
「
…………
」
「後、お前が作るの好きならうちの部員になってくんねーかなって」
「
……
れ、零紫君って私のこと好きじゃありません、よね?」
「まったく好きじゃねえよ」
「で、ですよね。な、なのになんで私を勧誘に?」
「実は去ったふりして様子見てたんだよ遠くから。來人の奴もお前に夢中で警戒心無くなってたのか全然気づかなかったし。
……
で、部屋で俺の作品見てただろ」
「はい
……
とても可愛い猫の編みぐるみでした。一個一個模様の違う子が並んでて良い作品だなと思いました」
「ふーん
……
」
「
…………
」
な、なんだこの沈黙は?私はどうすればいいのだ?
全く好きじゃないのに作るのが好きならと手芸部に勧誘されています。
え、いえ、だって私ですよ?原因作ったクソ女ですよ?そのくらい罵られて然るべきな。
入りますって言うのも何か違う気が。でも断るのも申し訳ない。
し、しかしここは意思はないとはっきり言うべき、でしょう。
「あ、あの。部員にはなれませんが
……
でも!また何か作りたいものができたら被服室の材料などお借りさせていただけませんか?零紫君には無断でこちらを作る為の材料をお借りしてしまいましたので今度は正式にお願いさせてください。ほ、ほらぬいぐるみなのでお洋服とかバリエーションも必要になってくるので!未定ですけど、他にも仲間を作ったりとかしたいなとか!」
「いいよ」
「いいんですか!?」
「うちは今部員がいない。臨時で俺が部長なんて名乗ってはいるけどよ。本来あそこは俺が息抜きできる場所だったんだ。でも、一人で使うには広すぎるし。それに
……
やっぱり誰かと作品を作ってるって時間が好きだったっつうか。だからお前が興味あるならどうだろうって思ったんだよ」
「そうだったんですか
……
」
「またなんか作るなら教えろよ。部室開けてやるから」
「は、はいっ!わかりました!快く了承してくださって有難う御座います!」
「おう。じゃあな」
「
…………
ほ、ほんとにお誘いに来られただけか
……
」
会話中終始心臓は恐れからバクバクしていたけれど、穏便に一対一の会話が終わった。
零紫君は私の部屋の前からすんなりと去っていく。
呆然とそれを見送っていたけれど、ぐう~っとお腹が鳴って腹減ってんだぞ!と怒られた。
後をゆっくり追うように、男子寮の方へと向かう。
彼のことはゲームでプレイしているから勿論知っている。
家の中では良い扱いを受けていなかった彼のお話は、どこか自分の境遇と重ねてしまいそうになるし読んでいて苦しかった。彼へのときめきとかそういうのより、トラウマばかり刺激されてしまったのだ。
家族とは上手くいっておらず、特に荒れた父からは幼い頃から暴力を受けていた。
母も毎晩他の男と遊んでから帰ってくる為零紫君は心にも体にも傷が絶えずそこかしこに絆創膏だったり包帯だったり痕が見える。ゲーム中では「いつも絆創膏でいっぱいだけど、大丈夫
……
?」と主人公が聞けば「うるせえ転んだだけだっての」なんて下手な言い訳をして心配をさせないように敢えて突っぱねることばかりしている。そんな人。
裁縫が趣味になったのも自分のことを自分でしなければならなかった中で、見出した楽しいと思えることの一つだったのだ。
手芸部が居場所だと感じるのも、好きなことをして時間を潰せるからだろう。
帰ればまた地獄。不要な罵詈雑言に痛めつけられ煮て焼かれて。
同じとはいえないけれど、私にもわかる。
家に居場所がないのであれば外の空気はあまりにも美味しいのだ。帰りたくないと思うほど。
ただし彼の場合はこの寮で暮らせばよかっただろう。
でも、狂った鬼には奴隷が必要だった。家事も買い物もなんでも勝手にやってくれる便利なものが。
メールで散々脅して、電話をかけまくり、最後は割れた瓶を持ち外で暴れ始めるのだ。
近所の人も相当に迷惑がっているが関わりたくないのか子供の彼を支えようと近づいたりはしなかった。
彼の心は手段を見失って押さえつけることだけしかなくなっていたのだ。
(最後はちゃんとハッピーエンドで終わっていた、よね
……
確か
……
安心した記憶はあるから)
彼は私の所為で世界が滅茶苦茶になった、と言っていたけれど元の世界に戻ることを本当に望むだろうか。酷い父親も帰ってきてしまうのに。私なら
……
会いたくないかもしれない。現に死んでもう会わなくて済まなくなったことにどこか安堵しているのだから。
……
さて。二つの建物を挟む中庭を抜け、男子寮へとやってきた。
少し不安になる階段をあがり、2階でネームプレートを確認しながら歩いていると。あった。
「207 彩ノ川」。ここが來人君の部屋
……
!
またドキドキしてきてしまった。こんこん、とドアをノックしてみる。
「來人くーん!私、ですっ!」
ついでに声もかけてみるが、反応がない。まだ帰ってきてないのだろうか?
いないのなら出直した方がよさそ
――
と私の思考と行動が転換する前にドアは派手に開かれた。
「望愛、会いたかった
……
!」
「わ、わあああ!?」
少しの間強く抱きしめれた。そして、心底嬉しそうな顔をして私を見つめる。
「部屋、ノックしたけど反応がなかったから
……
集中してるなら邪魔するのも悪いかと思って待ってた」
「やっぱり!無視なんてしてしまってすみませんでした!」
「それで、ここまで来てくれるなんてどうしたんだ?お腹がすいた?」
「あ、はい
……
お恥ずかしながら
……
」
「ふふ
……
。やっぱり口実になるね」
「ひぇ
……
」
どう考えてもこんなの互いにあまりにも手間だというのにこの人は絶対に私と会う為に食材の在処を教える気がないらしい。こういうところも確かにおかしい。ここまで人間って依存するのか。
「部屋入って、すぐ作るから」
「えええええええええええええええええええ、ららららら來人君の部屋に!?私が!」
「遠慮しないで」
にこにこ、手を引っ張ってくる。私がそれに抗えるはずもなく心の準備もできぬままアトラクションが始まった。
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