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山城まつり
2025-06-02 22:09:16
41939文字
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suicidal/leniency Karte01:聖戦の幕開け
スーリニKarte01、サイト掲載の前にちらりと載せて みます
めちゃくちゃ長いんですけどほぼ書き直してまして、頑張ってるので読んでくださると うれしい すみません、煩悩です
以前より恐らく、手術シーンが大幅に分かりやすくなっていると思います!みんな大好き冠動脈バイパス術、よければ楽しんでいってくださいませ!!!!!!!(狂気)
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8節 誰もが彼のようだった
結局、手術が終了するまで、ルミエールはその場から動く事が出来なかった。緊張感を失った術後の手術室────クレマリーは手袋を外し、髪を解くとルミエールに手を差し伸べる。
「
……
怖かったか?」
「
………
怖かった、です。今も
……
怖いです
…
」
「そうか
……
でも、彼は救えた。それは事実だ」
「クレマリーさんが居たから救えたんです。僕だけだったら
…
救えなかった。
…
あのまま僕一人でのオペだったら、間違いなく殺していた。
……
ドロシーさんにあんな事を言ったのにッ
……
僕は、本当に
…
誰かを救える医師になれるのかなって
……
それどころか人殺しにしかなれないんじゃないかって、怖くて
……
ッ」
「
………
。」
へたり込むルミエールの瞳から、大粒の涙が絶え間なく溢れた。クレマリーは差し伸べた手を引っ込めると
……
一心拍置いて、彼の正面にしゃがみ込み、背をさすった。優しく、硝子細工に触れるように、そっと。それも、彼女が失敗を知らない「天才」だからこそ見せられる余裕なのだと、ルミエールは微弱な悔しさを覚えた。
「
……
なぁ、ルミエール。お前の目に、私はどう映る?」
不意に彼女はそう問いかけた。その真意を知らないまま、そして自嘲と自責を孕ませて────ルミエールは嗚咽交じりに口を開く。
「
……
ッ、クレマリーさんは
……
天才的で、失敗知らずの凄腕なドクターです
……
僕なんかとは比べ物に、」
「その私も、最初は失敗ばかり繰り返していたと言ったら?」
「え────」
クレマリーさんが、失敗ばかり?
そんな馬鹿な。だって、今しがた目の前で彼女の神の手が紡いだ奇跡は紛れもなく本物で。彼女が失敗ばかりしていたなど、とても信じられない。
けれど、クレマリーは穏やかなトーンで語る。それは確かに、真実の色を含んでいた。
「
……
行き場の無かった私はDr.リズベルトに拾われ、彼の元で修行する形で知識と経験を得た。彼の手術に立ち会い、助手をひたすらこなした。
……
そんな私が初めて彼に執刀を委ねられたのが、今回と同じ冠動脈バイパス術の吻合だった。そこで私は失敗を招いた
……
吻合部から出血してな。複数の箇所から出血し───本当にあと少しで殺してしまうところだった。焦ったよ
……
人殺しになってしまうのではないかと、心の底から恐怖した。お前のようにな」
「
……
。」
「その時Dr.リズベルトは、私の失敗を責めなかった。聞けば、彼も研修医時代は失敗ばかりしていたらしい。患者にとってはたまったものではないだろうがな。
……
まぁ、つまり
……
だ」
クレマリーはルミエールの涙でぐちゃぐちゃになった顔を両手で持ち上げると、無理矢理視線を合わせて彼の本心に呼びかけた。
臙脂
えんじ]が、じっと覗き込んでいる。お前なら出来る。お前ならやれる。諦めるな────その強い思いが、情熱が、そこからひしひしと伝わってきて、ルミエールもまた同じように彼女の瞳を見つめた。
「失敗やアクシデントはどんな手術でも起こり得る。どんな凄腕の医者であろうと最初は誰もが混乱していた
……
〝失敗知らず〟の医者なんて居ないんだ。手術にトラブルやアクシデントは付き物だ
……
お前のような新人が葛藤しながら一人前に成長するためにベテランの医師達は居る。
私は居る
。そうでなければ新しい医師など育たないからな」
「
……
!」
「不安に負けるなと言われても無理なのは分かっている。むしろ、此処で不安を感じられるお前は患者の生死に向き合えるいい医者だ。
……
少しずつ強くなれ。精神的にも、技術面的にも、な」
いつからか、両手で顔を支えられなくても
……
ルミエールは自力でクレマリーの顔を見上げていた。彼女は優しく肩を叩くと立ち上がり、「その手袋のまま目を擦るなよ」と告げて手術室を後にする。ルミエールは贈られた言葉を噛み締め、それ以上涙が溢れないようぐっと堪えると、「はい」と掠れた声を振り絞って立ち上がった。
逃げる事を学ぶ、それは生きていく上で大切な事だ。
立ちはだかる巨大な壁を正攻法で登るなど、それは現実的ではない。
無理な事を、無理だと言う事。
自分に素直になる事、自分の出来ないところを許す事。
甘くたっていいのだ。追い詰められて心を壊すくらいなら、甘い方がいいのだ。
だけど────ルミエールは、逃げてはならない。
命から、逃げてはならない。
医師とは、病院とは、救いを願う患者にとっての最後の砦である。
故に、甘えてはならない。逃げてはならない。
〝救えるのは自分達しか居ないのだ〟
〝手術をしなければ、患者は助からない〟
────だから、苦しくても辛くても、「医師」という存在は目の前の命から逃げてはいけない。
辛い気持ちを呑み込んで、戦うしかない。
……
まだ、先程のアクシデントを完全に受け止める事は出来ていない。けれど
……
だからといって医師を辞めようとなどは思わない。
ルミエールは、恐怖に駆られながらも前を向いた。
彼という蕾が花開くのは────そう遠い話ではないだろう。
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