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ムクロジカ
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文字/Ibパロ
【失笑の歌と蒼い月】
自陣Ibパロ/まとめ読み版
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教師がいるという部屋の前で、カンジは一瞬だけ硬直する。ここに来て何故か、とてつもない緊張に襲われたのである。直感が鳴らす嫌な警報、とでも言うのだろうか。
不吉な予感を振り払い、カンジは扉をノックする。これまた男の声で、「おう!」と声がかかる。先程と違うのは、その声が活気にあふれているところだろう。
カンジがドアノブを握る前に、扉が開く。現れたのは、ジャージ姿の男である。一見すると教師には見えないが、教師という事前情報があると体育教師なのだろうと察せられる。
「おっ? おお? 客人とは珍しい! はじめまして、オレは教師やってる〈名無しの作品〉だ! よろしく!」
元気いっぱいに手を差し出され、カンジは反射的にその手を握り返す。その握手を受け満足気に笑った男は、「用件は?」と聞く。男が壁になって部屋の様子は伺えないが、子供の話し声らしきものが聴こえる。
「あー、授業中にすんません。鍵を借りに来たんですが
…
」
「鍵?
…
ああ! 地下への扉のやつだな! ええっと
……
ほら! これで開くぞ!」
ジャージのポケットを探り、男は小さな鍵を差し出す。カンジはそれを、少しぎこちない動きで受け取る。何故かは分からないが、カンジは自分がこの男に苦手意識を抱いていることに気付く。こういう直感には、逆らわないのが吉だろう。感謝の言葉と別れのお辞儀をして、カンジは部屋から離れる。教師も笑顔でそれを見送り、扉を閉める。
扉を閉める瞬間、教師の部屋から啜り泣きが聴こえた気がする。授業中に泣くなんて酷く虐められているのではないか、カンジはそんな直感に身を震わせる。しかし教師がそれを見過ごすなんてことはありえないのだから、きっと大丈夫だろう。そう結論付け、カンジは最後の部屋に向かうのだった。
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