Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ムクロジカ
Public
文字/Ibパロ
【失笑の歌と蒼い月】
自陣Ibパロ/まとめ読み版
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
カンジは緑の部屋を開ける。途端に差し込んだ眩い光に、思わず目を瞑ってしまう。ややあって目をゆっくり開けば、そこは室内とは思えないほど明るい部屋である。青空のような壁紙、草花が咲き誇る床、天井から下がる雲のモビールと大きな電球。
部屋の中心には、茶髪の男がいる。多種多様な動物のぬいぐるみに埋もれながら、何かの作業をしている。
「ん?」
カンジが声をかける前に、男が気付いて振り向く。赤と言うには黄の混じった瞳が、まっすぐにカンジを見つめる。しばらくじぃっと観察して、首を傾げて問いかける。
「オマエ、誰だ? 新しい〈作品〉
……
じゃないよな?」
「えっと、オレは外から来た人間なんや。迷子ってやつで
…
」
「えっ! オマエが人間ってやつ!?」
ガバッと立ち上がり、素早い動きでカンジとの距離を詰める。物珍しそうに周囲を回りながら、カンジのことをよく確認している。唐突なことに、カンジはされるがままである。
「ふーん、へぇー
……
なぁ。人間って、外から来るものなんだろ? 外ってどんな場所なんだ?」
「
…
外のこと知りたいんか?」
興味津々と表情で語りながら、男はカンジの言葉を待つ。しかしカンジが外について教えようにも、それはどんな世界かを聞かれているようなもので難題である。一先ず、この空間との違いを挙げようと考える。
「外には自然
……
森とかがあって、空気がとっても美味しいんや。人がいっぱい居って、夜も明るい。美味しい物もたっくさんある」
「
…
それって、《美術館》と同じじゃないのか?」
「え?」
「《美術館》にだって、自然は有るぞ。こことは階層が違うけど
…
それに人間はいないけど〈作品〉は大勢いるし、一日中明るい。美味しい物も山盛り用意できる」
そう言われて思い出したのは、前の階層にあった部屋。力自慢の男がいた部屋は、確かに森の自然で溢れている。それに時間という感覚がないのなら、そもそも夜も存在しないだろう。暗くなる、という概念が無いのである。袋に詰められた贈り物の木苺も、とても美味しそうな魅力を放っている。思い付いた外の情報は、この場所と変わりがない。
「外と《美術館》が同じなら、ここから出る必要なんて無いんじゃないのか?」
純粋に疑問なのだろう、男は言葉を素直に突きつける。困惑してしまったカンジだが、すぐに外に残してきた者たちを思い出す。そうだ、自分には友人や家族がいる。ヒロを探しここから出て、彼彼女らの元へ帰らねばならない。
「
…
それでも外には、オレを待ってる友達とか家族が居るんや。それをほっといて、ここに居るわけにはいかん」
「トモダチ?
……
ああ、仲間と同じような意味の言葉だな。うん。それなら仕方がないな。仲間がいるなら、ちゃんとそこに帰らないと」
うんうんと頷きながら、男はあっさりと引き下がる。あまりにも軽い反応に、カンジは少し拍子抜けする。男は元いた位置に戻りながら、思い出したように足を止めカンジに情報を告げる。
「オレは帰り道知らないけど、たぶんア
……
えっと、赤い部屋にいる男なら分かると思うぞ! じゃ、今はオレ宴の準備で忙しいからさ!」
ニカッと笑い「仲間のトコに帰れるといいな!」と応援してから、男は作業を再開する。先程は分からなかったが、どうやら色紙を使って折り紙や装飾品を作っていたらしい。
これ以上、ここにいても邪魔になるだけだろう。カンジは小さくお礼を告げてから、緑の部屋を後にする。
山のように重なったぬいぐるみの中、綿の代わりに詰められた物が溢れ落ちる。男はそれを見つけると、冷めた顔でぬいぐるみの中に押し戻す。
グシャリ。血肉のように赤い色紙が、乱暴に詰め直された。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内