akinoshiroihana
2025-04-14 22:09:30
26278文字
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ノーマルぷらいべったーゲッターネタ倉庫2




さんぽするいぬたち

サーガですが、東映くさくもあり。セルフお題:なんちゃって70年代と皇帝ダリア
レイドボス倒しで夜更かししつつダラダラ書いたもの、カプ臭は超超超薄いです。一応竜隼

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冬の朝、武蔵の拾ってきた『ロボ』はしばしば彼らの内の誰かに散歩をねだる。小腹が空いて、こっそり冷蔵庫を覗きに来た武蔵だの、朝シャワーの後の濡れ髪の隼人だのの気配に目を覚ませば、外がまだ真っ暗であろうとお構いなしで、玄関脇の犬用ベッドでぱっと目を輝かせて身を起こし、さかんに甘えた哀れっぽい声で鼻を鳴らす
うえええ勘弁してくれ、とその朝小さい悲鳴を上げたのは、アルミの鍋焼きうどんをガスコンロで温めていた武蔵だった。よく煮えた液面に卵を落としたところでもあった。
ああもう何やってんだと起き出してくる、三人揃いのパジャマのあと二人、しょうがねえな俺が行ってやるよ、今シャワー使ったって頭にうどん出汁の匂い移っちまいそうでたまったもんじゃねえや、と一度引っ込むその内一人、残った一人は大あくびしながら灯油ストーブの前でしゃがみ込み、マッチを擦る。夜明け前。

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まだ放し飼いというのがまかり通っていた時代だった。しかし別荘族が捨てて行ったらしいその犬は、イエローラブラドールと見るにはそれほど大きく逞しくも見えず、それに「猿なんぞと遭遇したら、あいつら頭いいから二匹で両方から引っ張って真っ二つにして、なんなら食っちまうよ」などとハンターに脅かされもし、『ロボ』は当時にしては珍しい半屋内飼い犬だった。ゆえに散歩も必要になる。
彼は専用の整髪料を使う隼人の髪の匂いが気になるのかツボなのか、それとも彼が好きなのか、身支度して来た彼に後ろ足で立って縋ってぷすぷすと鼻を鳴らし匂いを嗅ぐ

「まったく、朝刊が来るより前にお散歩のおねだりなんて、いい度胸だよお前さんは」
白い息を吐きつつ懐中電灯を片手に未舗装の、立ち枯れた雑草が銀色に凍った敷地の一角を彼は歩く。おそらく土地の前の持ち主の意匠か何かだろう、研究所の周辺には早乙女博士には似合わない、長閑で規則性の乏しい花木が多く残っていた。この辺りは離れがあったのを潰したのか、このあたりが井戸か、放してやった犬が栗の枯れ葉を踏みつつ用足しにいい場所を探している足音がする中、隼人は普段興味のなかったそのぐるりを照らし見渡す。ここに施設を拡げるならどうしようか、俺だったらこの栗は切らせるな、こいつは馬鹿馬鹿しく育っちまう品種だ、でもこの時期は膨大な枯れ葉が嫌でも侵入者の足音を知らせてもくれるな、などと。考えて脳内で図面を書き起こしていれば、すっきりしたらしい犬が戻って来て用足し後の上機嫌で飛びつき、勢い余って彼の脚にしがみついて腰を振る。本当いい度胸だよお前さんは、と重ねて言って、その長い鼻先をぎゅうと掴み、ぴいぴいというゴメンナサイ声が漏れるまで待っていれば、夜が明けた。

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こんどはなんだい、と聞いてもそこでお座りして動かなくなった犬がにこにことした顔で見上げて来る、頭を撫でてやっても違う、うん気持ち良いとても気持ちいいああそこそこ、でもそうではないのだ、と前足でせっつくようにひっかき、頭上を見上げる、もっと上だよというように。
ああ、ヒネ柿が生えてるって言ってたか、
「いいか?甘夏ミカンだって糖度で調べれば普通に甘いんだぞ?糖尿病は怖いんだからな」
言っても通じるでもなく、武蔵あたりはここを通る度にもいで与えていたのだろうか、もらった柿を咥えて犬は尻尾を振り、研究所に一目散。そして山際から太陽が、お天道様本体が顔を出す

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朝刊をポストから抜き出し一面をざっと眺めていれば、お帰り、との声が頭上から降って来る。長かったじゃねえかよ、どこ行っちまったんだろうと心配したってのに、と、もさもさの、メッシィなひどい頭のままの竜馬が見下ろしている。それに目線だけで応え、新聞を広げれば、なんだよ、風呂釜の炊きつけに火ィ入れてやってたのに、行けよ、それで使っちまった分薪割りしなきゃだぜ、手伝ってやるから、などと。
優しい男だと思う、自分が求めているのはそれではないにしても、撫でに来たがるその手は気持ちがいいとても気持ちいいああそこそこ、でもそうではないのだ、と思う。いぬの甘えた仕草をそのまま真似たように見上げ、にこりと返した彼に、おっ、とばかりに嬉し気な顔になった竜馬に対し
「違うよ、お前さんじゃない、見な」
もう白くならなくなった吐息とともに彼は
もっと上、もっともうちょい上、お前の窓側の壁の上
「皇帝ダリアが咲いてるのに今さっき気が付いたんだ、」
冬の、場違いに高い所で咲く派手で大きな花、せっかく咲いても見られず気付かれずな、でっかいけど寂しい花。お前さんのお陰で今年は気付いてやれたよ
お、おう?
そうとだけ言い、軽く手を挙げ、彼は彼の視界から消える

竜馬は二階の壁にもたれるように咲く丈高すぎるピンクと紫の中間みたいな花をまじまじと見てしばらく首をひねっていたが、下の階でのあらやだ隼人君真っ青じゃない、唇紫になっちゃってかわいそう!うん、ちょっと冷えた、なんていう声を聞くと、なんとも複雑な表情でその花弁に手をのばした

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朝風呂のその後
足りなくなってしまった睡眠時間を戴きます、と、くたくたのパジャマを着直して部屋にもどった隼人が静かな寝息を聞かせる他には微動だにしない部屋、明るい日差しや過去に何度もあった敵襲の際のガラスの破片を受け止め遮る厚いカーテンが閉ざされた薄闇の底、抜き足差し足でジャケットを取りに来た竜馬は戻る際ふと足を止め、その枕辺に寄り、もう凍えてないらしい気配を確かめた後、すん、と匂いを嗅ぐ。彼の整髪料の匂いが気になるのかツボなのか、それとも彼が好きなのか

犬達の、朝。