akinoshiroihana
2025-04-14 22:09:30
26278文字
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ノーマルぷらいべったーゲッターネタ倉庫2




みどりのてぶくろ

書き手の脳梗塞祈念イエーイ(やけくそ)、推しにも不幸のお裾分けをしつつ冷静さを取り戻してました
基本は東映、でも異時空なので新ミチがいたり。

隼人はほどなく全快してくれると思います、筆者はリハビリ頑張ります😖
xxx

どうして彼が個室を頼まないのかといえば、「こういうトコの専用部屋なんて、かあさーーうちのお袋の時みたいで居心地悪くってよ、
言わせなさんない、との弁で終わったものの、まあ理解できた。だが、目下こちらはよくわからない。
神経科の類いではないから、ちょっとした刃や先端の尖ったものも持ち込めた隼人が現在大部屋の住人になっていて、白いベッドの上身を起こし、木製の棒針を手にしている。白く長いが男らしいつくりの指の間に若草色の毛糸が踊っていて
「ああ、手袋作ってみてんだよ」「へえ、そ、そうかそうなのか」
「お気に召すといいんだがね、やっこさんたちの」
「へえ、ええ、えええええ!」
通りの良さで定評のある竜馬の声が、院内廊下に響き渡った。

ここは数多ある彼等の世界のひとつ、ただしたまたま戦火の上がらなかったそれ。

x

「問題はね、あの科に入った男って」唾でも吐き捨てるような顔をして白衣の「ミチル」は言う。「女の人より不快感のある錯乱を見せがちだわ」
手術直後には家に帰してくれとの混乱から一晩中の臭素嘆願だった男が、その翌日からは暴君亭主になって、見えない妻子を呼び怒鳴り続けたり、深夜から未明までお茶だのリモコンだの枕だのを大声で要求し続けて、そうする自分えらい、愛されキャラだと増長したりね
その癖看護士達への罵倒は「ババア」「使えねー」って別枠でしっかりしてるし、男性医師相手には正気にもどるんだから、すごく都合良くタガが外れるものだわ。「あなた、サッカー部ですって?そういう体育系なら、足もだけれど、頭の血管が切れた時は怖いわよ」注意することね。

「お話からすると、うちの隼人も何かしでかしたってことでしょうか」
バラに似ていないこともない八重咲き山茶花を新聞紙に包んで携えた男子高校生が不安げに問う。りりしい眉と、純粋にも頑固そうな目が印象的だった。
「え?神くん?彼って帰宅部だったんでしょう?その分今回の事は災難だったと思うけど」
だからそんなマチズモ親爺みたいなことは言わないし、いい子よ、でも心配になったかしら。
オムツをはかされて大ショックを受けたりベッドに縛り付けられたりもしてないわよ、まだ。でも、聞きたい?

なんだかそれは、地獄の獄卒が新たに降ってきた毛色の違う亡者を肴にこっそりはしゃぐような気配が感じられないでもなく。なので竜馬はふっと笑った
「あいつの目を離せないところ、もうバレたみたいですね、お姉さんにも」
(いわずもがな、これは竜馬の平時にはない語彙だった。)

脳内出血後の混乱で、細君や実母に献身や助けを求めて「母さん」と大声で喚く患者は少なくないその中で
『母さん、まだ寝ないの?』
端正ではあるが、いっそ鋭利なような顔立ちの彼が深夜巡回の際に発したそんなことば。つまるところ神隼人の名が付いている人物は、人の心臓を他意無く撃ち抜くところがあるのかもしれない。
『頭はしっかりしてるつもりだったんだけどよ、あとあとトチ狂っちまうおっさん達がいたし、検査での移動は天井だけ見ながらだったし。病室じゃないとこで寝たり、会うはずの無い人にあった覚えがあったり、まだまだ結構頭がイカれてるよ』
病室のカーテンの幾何学模様が漢和辞典か経典みたいに見えると、見舞いの花が、花とわかっていても人の顔にも見えてこわいと言っていた彼は。

「あいつに何か面白いことされたってお顔ですよ」
いや、かわいいこと、かな、そうひとりごちる竜馬をよそに、惜しむでもないはずのそれを惜しみ彼女は仄赤らむ。

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.「話には聞いた事があるよな、夏と冬は頭の血管切れちまって来る患者が多いって」
季節には関係なくもっぱら物理で、より詳細を述べるなら竜馬一生に何度レベルのコントロールミスをしたボールの直撃を一生に何度か級の不注意で後頭部に食らった隼人は言う。(なお命中したサッカーボールは倒れ臥す隼人の向こうに異界より突如現れた赤い巨人か戦斧で叩き割ってまた別の騒ぎになった。愛娘を落っことした子馬を射殺した、レット・バトラーのごとき処断である)それはさておき。

「日参してる猫ブログの管理人が」
「ねこ。」
「その人が階段から落っこちてやっぱり頭の中やっちまってさ、『病院でのぼく、家内に聞いたらこれこれこんなことになってたそうです、全然覚えていないんですが』って書いてたな」今の俺もそういうよくある壊れフェーズだったりしたらイヤだねえ、と右半身もっぱら下半身に異常を来した彼は言う、萌え出る新春の若草色に指を絡めながら。
年のせいもあるんだろうけどさ、言行がおかしくなっちまったおっさん達に鼻の管だの点滴だの引っこ抜かせねえために填めさせる「ミトン」ってやつ、そのブログで読んだきりだったんだけど、今シーズンは足りなくなってんだとさ、
作ったところで使ってもらえるかもわかんねえけどよ
言われてみれば、年齢層の割ににぎやかな大部屋だった、どこかしら麻痺状態の患者達であるため、その程度の緩い拘束で済んでいるのかもしれなかった
『要りません、て言われたらそうだな、お前にでもやるよ――
そんな台詞にぐるりんと振り向く、断るとしたら、それはあの女医の仕事だったりするだろうか、果たして彼女はあの冷たそうな顔のまま断われるのだろうか(頑張れ、頑張ってくれ)
「あそこのおしゃべり爺さんに一作目くれてやりてえんだな。2、3日前にエロ話覚えたと思ったらお孫さんの名前と混ぜちまうわ、今日になったら俺の名前まで使いやがるわ――使ってねえか?今の俺の方がイカれてるんだったらたいへん申し訳--
「いや使ってるぞ、『おちん○んが痛いよハヤトくん、ナデナデしに来て』ってニコニコしてるカテーテルのおじさんが酷いとさっきから」
そうかい、と隼人は苦く笑ってため息をつく。変なおっさんとおっさん顔のやつには絡まれやすいんだよ昔から、と。それはここだけではない、いつかどこかの神隼人のため息にきこえたのが不思議であったし、「変なおっさん」で何故か誇りかに胸を反らし笑いそうになるのはもっとわからない流竜馬だった。