ろきのや
2025-04-02 19:37:20
29863文字
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アズキャ生存if 二人目のニンゲン(未完)

未完長編アズキャ生存ifな話 何でも許せる人向け。 様々な捏造
2人目に落ちてきたニンゲン君(オリキャラ)がすっげぇでしゃばる。
チャットAIに欲望ぶつけて推敲手伝ってもらってたら盛り上がってしまったのでここに供養。
https://poipiku.com/9119/11644918.html



夕飯の席は静かだった。チョコレートをたっぷり使ったパイが添えられ、食卓にはキャラの好物が並ぶが、本人は眠ったままだ。

トリエルはキャラの枕元に用意しようと、パイを切り分け、スープを小さな容器に移し、いくつかの料理をカゴに詰めている。
アズリエルはスプーンでスープをすくいながら、いつもと変わらない様子で食事を続けるダミアンをそっと見やると、目が合って微笑まれた。

ダミアンが口を開く。

「ねぇ、あなたたちはどうしてニンゲンと家族ごっこをしているの?」

ダミアンの言葉は、その場にいる全員の動きを止めた。

その言葉の不穏なニュアンスを、この場にいる全員が感じていた。

「ええと……ダミアン?私たちはあなた達と本当の家族になりたいと思っているの。ごっこなんかじゃないわ」

トリエルは困惑しながら、誤解を解こうとしていた。しかし、ダミアンは構わず続ける。

「でも、ニンゲンとモンスターは戦争して、あなたたちは今、この穴ぐらに閉じ込められてる。どうしてここにやって来たニンゲンを殺そうとしなかったの?」

──キャラはなぜ生かされているのか。

ダミアンのシンプルな疑問だった。

キャラはニンゲンが嫌いだ。地上に帰りたくない。だからモンスターたちと仲良くする。理屈も利点も分かる。しかし彼らはどうだろうか?
ニンゲンの魂を奪って、地上に出る。そうしたいと願うモンスターがいたっておかしくないはずだ。

……ニンゲンの君には、確かに我々の関係は不思議に見えるかもしれないね」

アズゴアが食器から手を離し、ゆっくりと口を開いた。
アズゴアは存命のモンスターの中でも数少ない、ニンゲンとの戦争を直接体験したモンスターだ。彼の言葉にはその重みが宿っていた。

「あの子がここで生きていく事を決めてくれたからこそ、こうして家族でいられる事に、私はとても感謝しているよ」

アズゴアはダミアンを見つめ、静かに続けた。

「これは真実どうだったかに関わらず、ある種の俗説なのだけど……モンスターは、ニンゲンのために生まれたとされる昔話があるんだ。モンスターはニンゲンに寄り添う隣人として生まれた。だからなのか、モンスターたちはニンゲンの友になる事を望み、無意識にニンゲンを求めてしまう」

「つまり、君の質問に答えるとするなら……我々はあの子の事が大好きだから、という事だね」

アズゴアはダミアンに優しい眼差しを向け、姿勢を正した。父親から、モンスターの王の表情に変わる。

……ダミアン、君は地上に帰りたいと思うかい?」

アズゴアのその質問は重い意味を持っていた。

「どうしてそんな事を?」

「もし君が帰りたいと望むなら、やらなくてはいけない事が出来てしまうからだよ」

「アズゴア!!」

トリエルの悲鳴のような声が飛ぶ。どこかアズゴアに対する非難めいたものがあった。
トリエルは誰かを傷付ける結果を望まず、ダミアンの事をまだ子供だと思っていた。そんな子に一体何を言うつもりなのか。トリエルの考えは優しく、母としての思いやりに満ちていた。
しかし現実はどうだろう。

ニンゲンが地上に出るためにはボスモンスターの魂が必要であり、自由になるには、ボスモンスターの魂を奪わなくてはいけない。

アズゴアは誠実にその事実を伝えた。
ダミアンの返答次第で敵対する事になるのだろう。
もしダミアンがどうしても地上に戻りたいと願えば、誰かの犠牲は避けられない。

アズリエルは、その様子を緊張しながら見守った。

「へぇ……そんな事教えて、もし僕が帰りたいと言ったらどうするつもりなの?」

ダミアンは愚直なアズゴアに思わず笑いそうになっていた。
アズゴアの発言を、犠牲を盾に、こちらを罪悪感でコントロールしようと考えているのかと疑った。
相手の良心に訴えかけようとする、姑息な手だと。

アズゴアの心は一瞬、重く沈んだ。
そうなれば他に道は限られている。

「その時は、私の魂をかける事になるのだろうね」

家族を守るためにも、アズゴアは天秤に掛けるのは自分の命だけにするつもりだった。
余計な犠牲を増やさないために、アズゴアが提示出来る最大限のカードだった。
勿論素直に渡すわけではなく、戦う事になるのだろう。もしも自分が死ぬ事になっても、息子のアズリエルがいる。
トリエルはその言葉にショックを受けたように固まっていた。

アズリエルが立ち上がって声を上げる。

「待って父さん、話が急過ぎるよ。ダミアンも、ボクらを試すような事をしないで。ボクらは君を傷付けようなんて思ってないんだ。何か不安な事があるなら話を聞くから、まず落ち着こうよ」

ダミアンがちらりとアズリエルを見る。

アズリエルは本気だった。キャラとダミアンの間に何かがあるとしても、誰かを傷付ける事はアズリエルも望んでいない。

その眼差しが届いたのか否か、ダミアンは姿勢を崩して肩をすくめ、おどけてみせた。

……ごめん、ちょっとした疑問のつもりだったんだ。地上に戻る気はないよ。行くあてもないから、心配しないで」

室内の空気がやっと弛緩し、深いため息がつかれた。

ダミアンには地上に出て行く理由がないというのは本当だった。

それに、魔王に挑むにしては、今のダミアンには何もかもが足りない。

「ごめんなさい。なんだかおかしな話になってしまったわよね。私たち、きっとここでも楽しく暮らしていけると思うの。今はまだ違和感があったとしても……ここでの生活を気に入ってくれたら嬉しいわ」

トリエルが慌ててフォローしようとする。

……アズゴア、後で話をしましょう」

トリエルの厳しい視線が飛び、アズゴアは目を伏せて重々しく頷いた。
トリエルからすれば、アズゴアの態度は子供の試し行動を真に受けた大人気ない態度に見えたのかもしれない。

ニンゲンとの戦いを知るアズゴアと、そうではないトリエルの間の溝が、明確に現れていた。

重苦しい夕食が終わり、トリエルとアズゴアは片付けもそこそこに別室に向かい、アズリエルはキャラのために用意されたカゴを、キャラの元に持っていくために席を立とうとした。
そんなアズリエルをダミアンは呼び止めた。

「ちょっと話をしようよ。さっきの話の続きって訳じゃないけど、アズリエルの意見も聞きたいんだ」

──この国の未来を担う王子として。

アズリエルは、かつてキャラに持ちかけられたあの計画を思い出していた。