ろきのや
2025-04-02 19:37:20
29863文字
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アズキャ生存if 二人目のニンゲン(未完)

未完長編アズキャ生存ifな話 何でも許せる人向け。 様々な捏造
2人目に落ちてきたニンゲン君(オリキャラ)がすっげぇでしゃばる。
チャットAIに欲望ぶつけて推敲手伝ってもらってたら盛り上がってしまったのでここに供養。
https://poipiku.com/9119/11644918.html

最初のニンゲンが落ちて来てから、およそ8年の月日が流れていた。

新たにニンゲンが落ちてきた。その噂は瞬く間に地底に広まり、最初のニンゲン、キャラの耳にも届いていた。

キャラはいくらか背が伸び、顔立ちも大人びてきていた。
件の2人目のニンゲンは、落ちて来たばかりにも関わらずモンスター達にも友好的に振る舞っているらしい。

噂話ばかり耳にするのは、キャラがそのニンゲンに会いに行くつもりが全くなかったからだった。嫌な記憶が蘇って心がざわつく。

しかし、そんなキャラの心中を知るのはアズリエルくらいだ。トリエルとアズゴアは2人目のニンゲンを、キャラと同じようにこの家に迎え入れた。

自分だってニンゲンであり、モンスター達に救われた身だ。勝手な事は言えない。とはいえすぐに受け入れる気持ちにもなれない。
キャラは我ながら幼稚だと思ったが、家にやって来たニンゲンと言葉を交わす事もなく、自室に引き篭もっていた。

────

トリエルもアズゴアも新たなニンゲンについて国民に説明すべく公務に奔走し、アズリエルもこの国の王子として国民の質問責めに遭っているだろう。

今、家にはキャラと、ニンゲンだけ。そう思うと気が重くなった。
安心できる場所だった我が家に異物が混ざり込んで、落ち着かない。

家の中をうろつけば、いつニンゲンと遭遇するかも分からない。今や唯一自分の場所だと思える自室に引き篭もっていると、コンコンと扉をノックされた。

緊張が走る。

ニンゲンだ。

今、一対一で会いたいとは思えない。

無視してしまおうか。

身を固くして扉の向こうの様子を伺っていたが、ノックはされたものの、そこからなんの動きもなく、静かだった。
不在だと思ったのだろう。キャラは少しだけ安堵した。

しかしこのままでは気が滅入りそうだった。いっそ家を抜け出して、家族が戻るまでどこかでやり過ごそうか。誰かと会えば気が紛れるかもしれない。
キャラはそう思い立って、鍵を開け、そっと扉を開いた。

ニンゲンと遭遇したくない気持ちで。


──視界に映ったのは、扉の前に立つニンゲンの胴体だった。


キャラの心臓は跳ね上がり、扉を閉め、鍵をかけ、固まった。

何だ。今の。

キャラは今、目が捉えた物をうまく理解出来なかった。反射的な行動の後から、じわじわ思考が追いついてくる。

ノックの音から随分経ったはずなのに、何故まだ扉の前にいるんだ。まさか今までずっとあそこに立っていたのだろうか。

声も掛けず、ただじっと扉の中の気配を探り、そして今だって、再び閉じられた扉の前で静寂を保っている……そんなニンゲンの姿を想像して、ぞわりと背筋が冷えた。

静かな室内で、自分の心臓の音ばかりがうるさい。

見間違いかもしれない。そんな願望が浮かぶが、扉一枚隔ててそこに存在しているかもしれない何かを再び確認する勇気は無い。

キャラはそっと扉から離れ、早く消えろと祈りながら家族の帰りを待つ事しか出来なかった。

────

あれからどれだけ経っただろう。あのニンゲンは今もまだ扉の前にいるのだろうか。

扉の向こうを想像していると、聞き慣れた足音が遠くから聞こえて来る。
ノックの音に、今度は怯えなかった。

「キャラ、いる?ひとりにしてごめん。みんなに捕まってなかなか抜け出せなくてさ……

アズリエルの声だった。キャラはようやく安心して扉を開けた。
アズリエルは今やトリエルより背の高い青年に成長し、立派なツノを生やしていた。

……顔色悪いよ。大丈夫?」

少し屈んでキャラの顔を覗き込むアズリエルの言葉は、キャラがニンゲンを良く思ってないと知った上での心からの気遣いだった。

キャラはアズリエルになんと答えたらいいか分からず、曖昧に笑う事しか出来なかった。

────

夕食の席で、ニンゲンと顔合わせをする事になった。これからキャラと同じようにここで暮らす事が正式に決まったらしい。

ダミアンと名乗るニンゲンは、キャラと近い年頃に見える黒髪の青年だった。

「こんな素敵な家に迎え入れてくれてありがとう。とても嬉しいよ」と感謝を伝え、アズゴアもトリエルも穏やかに頷いている。
アズリエルともいくつか言葉を交わす様子は友好的で、いい奴そうだった。


じゃあ「アレ」は一体なんだったのだろう。


キャラは思い返す。

自分が見たと思ったニンゲンは、恐怖心が見せた幻だったのだろうか。

それともニンゲンではない別の何か。

目の前のダミアンの様子と、あの扉を挟んだ不気味な出来事が結び付かず、いつもより豪華な食事を前にしても、キャラにはその味が分からなかった。

「ねぇ、君がキャラだね。話は聞いたよ。ニンゲン同士仲良く出来ると嬉しいな。これからよろしくね」

ダミアンはこの世界で唯一同じニンゲンであるキャラに親しみでもあったのか、遠慮なく近付いて来る様子に、妙な馴れ馴れしさを感じた。

キャラは伏せていた顔を上げて、ようやくダミアンの顔を見た。

ダミアンの青い瞳が嬉しそうにキャラを見つめている。

その瞬間、なぜかキャラは背筋がぞわりと冷えるのを感じた。

……悪いけど、私の事は放っておいてくれないか」

そう返されたダミアンは、軽く首を傾け、キャラの顔を覗き込んできた。

「やっと目を合わせてくれたね」

突然接近され、キャラは思わず席を立とうとしたが、隣で様子を伺っていたアズリエルがキャラとダミアンの間に割り込んでくる事で均衡を保った。

「ごめんね。キャラは少し人見知りなんだ。慣れるまで時間が必要だから、暫くそっとしておいて貰えると助かるよ。悪気はないんだ」

申し訳なさそうにお願いするアズリエルを見上げ、ダミアンは薄く微笑んだ。

「大丈夫だよ。キャラもいつか家族として僕の事を受け入れてくれると嬉しいな」

「そうね。ゆっくり慣れていきましょう。困った事があったらいつでも頼ってちょうだいね」

「時間ならたっぷりあるからね。焦る事はないさ」

気にしないでと微笑むダミアンにトリエルとアズゴアの言葉が続き、食事の席は終始穏やかだった。

ダミアンはまるで昔からここで暮らしているかのようにこの場に馴染んでいた。

別に何も問題なんて無いはずだ。

それなのに、キャラの頭にはあの扉を挟んだ静寂が。

立ち尽くすニンゲンの記憶が張り付いたままだった。