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ssまとめ

2000字未満の文はこっちに入れようと思います。
新しいの書いたら追加していきます。
カプごちゃ混ぜです。


ふかがも


 深水が気がつくと椅子に座っており、目の前の机の上に銀色の指輪が二つ並んでいた。装飾はついていないが艶があり輝きを放っている。
 深水は周りを見渡す。内装は煌びやかな雰囲気で指輪を展示している台があるのを見た。ここは指輪を販売するセレクトショップであるようだと推測する。
 隣には最愛の恋人である蒲生が座っており、書類に何やら書いて目の前の女性店員に渡した。店員は内容を確認してどこかへと消えていく。
「蒲生くん、ここに何しに来たんだっけ?」
 深水は蒲生にこっそり尋ねる。蒲生は目を見開いて深水の方を向いた。
「何って、結婚指輪を買いに来たに決まってるだろ」
「結婚!?」
 店内であるというのに驚きのあまり大声を出してしまった。結婚という言葉にまだ心当たりがない。深水と蒲生は昨日気持ちを伝え合い、まだ付き合いはじめたばかりである。
「何でそこに驚いてるんだ。プロポーズしてきたのはお前だろ」
 蒲生は怪訝な顔をしている。深水はそれに対して取り繕うこともできず、ただあんぐりと口を開けている。いつの間にそんなことをしていたのだろうか。記憶を辿ろうにも昨日であるはずの告白のことしか思い出せない。
 夢なんじゃないかと頬を抓ってみる。痛くない。本当に夢であるようだ。
 忘れていたわけではないことに安堵すると同時に少し残念にも思った。結婚したら何か変わるということはないだろうが、その言葉の響きだけで心がときめく。
 目を閉じて結婚生活を夢想する。お揃いの結婚指輪を左手の薬指につけて、お揃いの食器でごはんを食べる。思い浮かべるだけで思わず口元が緩んだ。

「深水、おい深水」
 蒲生の声が聞こえて目を開ける。セレクトショップの店内ではなく、見慣れた天井と蒲生の顔が眼前に広がっていた。
「あれ?指輪は?」
「指輪?何寝ぼけているんだ。顔でも洗ってシャッキリしてこい」
 どうやら夢から覚めたらしい。もう少し夢を見ていたかったな、なんて思いながら起き上がる。目覚まし時計を見ると起床予定時刻を三十分過ぎていた。
 急いで顔を洗って朝食の準備をする。蒲生が手伝ってくれたおかげで大幅には遅れずに済んだ。透明なグラスと湯呑みにお茶を入れて食卓につく。
「結婚指輪を買う夢を見たんだ」
 深水はしらすを食べながら夢の話をする。蒲生は味噌汁を啜りながらそれを聞き、咽せた。
「蒲生くん、大丈夫?」
「ゲホッ、ゲホ…………結婚なんて気が早すぎるだろ。まだ昨日付き合いはじめたばかりじゃねえか」
「うん、ぼくもそう思う。昨日のことが嬉しくて舞い上がったのかも」
「そんな夢を見て寝坊だなんて浮かれすぎだ。もっと気を引き締めろ」
 蒲生は呆れた様子で小言を言うが、その実照れているようだと心を感じ取った。
 蒲生は気を取り直して白米を一口食べる。深水もそれを見て白米を口に入れた。よく咀嚼して飲み込み、また喋り出す。
「浮かれすぎなのはわかってるけど、お揃いの指輪っていいなと思ったよ。結ばれたって目に見えてわかるから」
「付き合っていることを大っぴらにしない方がいいだろ。指輪なんかつけて他のクラスの連中に見られたら何言われるかわからねえ」
……うん、確かにそうだね」
 蒲生の言うことはごもっともである。深水はそれ以上は何も言わず、沢庵をぽりぽりと食べた。
 その様子が落ち込んでいるようにでも見えたのだろうか。
「指輪は無理だが、まあ、コップとかならお揃いの物を買ってもいい」
 蒲生の発言を聞き深水は顔を上げた。彼の顔は少し赤く色づいているが、隠すように湯呑みを持ってお茶を飲む。
 深水は目を輝かせて蒲生くんと名を呼ぶ。その声色は喜びに染まっていた。
「じゃあ、朝ごはん食べたら買いに行こうよ」
「早速行くのか!?……まあ、用事もないし行けなくはないが」
「じゃあ決まりだね」
 深水はグラスを口に運びながら想像した。お揃いのコップでお茶を飲む姿を。思わず口が横に開いてしまい、少し飲みづらかった。

2025.3.24