huhaineet
Public
 

ssまとめ

2000字未満の文はこっちに入れようと思います。
新しいの書いたら追加していきます。
カプごちゃ混ぜです。


ふかがも


「ただいま」
「おかえり」
 ある日曜日の昼下がり。蒲生が自宅で読書をしていると深水が帰ってきた。
 「ただいま」と「おかえり」の挨拶なんて何でもないやり取りのはずなのに、たったこれだけのことが、愛おしく思えてくる。
 これは今に始まったことではない。一週間ほど前から、蒲生は何気ない一日が愛おしくてたまらなくなっていた。原因はわかっている。深水と付き合いはじめたことだ。深水に告白され、蒲生も自身の気持ちに気づいたことで晴れて恋人となったが、そこからずっと気持ちが浮ついているのだ。これが、恋というものなのか。
 そんな蒲生のことなど露知らず、深水は手洗いを済ませて蒲生のいる和室に来た。妙に嬉々としており、それがまた蒲生をドギマギさせる。
 深水は珍しく大きな手提げかばんを持っており、机を挟んで蒲生の向かいに座ると、そこから何かを取り出して蒲生の目の前に来るように、机の上に置いた。
「蒲生くん、こんなものを買ってみたんだ」
 全体的に白っぽく、大きくて分厚い本のようなもの。この家には存在しないが、それでもこれが何なのかくらい知っている。
……アルバムか?」
「うん。これから、ここにたくさん写真を貼っていこうよ」
「確かに今までジャスティスライドで撮った写真はあるが……わざわざ新しいアルバムを作る必要あるか?」
「ここに貼りたいのはこれから撮る写真だよ。それも、ぼくたち二人の」
 蒲生は目を丸くしてアルバムから深水へと視線を移す。彼は少しだけ照れくさそうに、そして慈しむような目で蒲生を見つめていた。
「蒲生くんと付き合って、毎日が今まで以上に輝いている気がする。それで、こんな日々をいつまでも残したいと思ったんだ」
「そうは言ってもな。俺は写真はあまり……
「ぼくたちだけのアルバムだから畏まらなくていいんだよ。それに、せっかく恋人同士なのだから一緒に撮りたかったけど、だめ……かな?」
 深水の瞳はまるで子犬のようだった。そんな目で見つめられ、蒲生は何も言い返せなくなる。代わりに、小さくため息をついた。
……少しだけだぞ」
「ありがとう!そうと決まれば、色々おでかけもしたいな。そうだ、今度ピクニックに行こうよ。レジャーシートとお弁当と……あとは何がいるかな」
「おい、言ったそばから……
 蒲生が文句を言おうにも、深水はお構いなしにピクニックの計画を立てている。あまりにも楽しそうであるため毒気を抜かれ、まあいいかなんて気にさせられた。
「あっ、そうだ。早速一枚撮ろうよ」
「今ここでか?」
「うん。何でもない今だって大切だからね。蒲生くんもそう思っているでしょ?」
「それは……まあ、思ってなくはない」
「それじゃあ、撮るよ」
 深水が腕を伸ばしてライダーフォンを持ち上げた。二人がきちんと写るよう、それぞれ机に寄りかかるような姿勢をとる。二人が画面の枠内に収まったところでシャッターボタンが押され、今しかないこの瞬間を切り取られた。

2025.8.22