さもゆ
2024-12-06 15:27:25
17771文字
Public BF
 

【BF腐】ツイログ2

1~7…A英。
8…シンと肩幅おじさん。
9…あっしゅ誕生日祝い。
10…英ちゃんとコングとボーンズ。
11…ピザのちょこっとした続き。
12…A英。

2020.12.26 たまごのお粥pixiv投稿作品


あっしゅりんくす生誕祭に遅刻した。59丁目。

8月13日午前10時




 香辛料と油と煙のにおいが鼻の奥で蘇った途端、たとえ祝ってくれる兄がいなくともここ数年はその日の付近が特別な日になっていたことを思い知って、涙が溢れた。
 けれども自分が泣いていると気づいたのは目の前で魚をほぐしていた英二がぽろりと切り身を箸から落としたあとであり、急に泣き出した同居人を心配する黒い瞳を見て、取り繕う暇もなく溢れた涙が止め時を失った。ほたほた、塩辛い涙が、塩辛い味噌汁に吸い込まれていく。
「ど、どうしたの、味噌汁、そんなに辛かった? それとも鮭?」
「もっと……辛いものが食べたいんだ」
 泣きながら、子どもみたいにひどいことを言っている。
 不味い中華と、美味い中華を、交互に食べさせられていたと思う。ひとりじゃ到底食べきれない量の品数で、余った料理は全て包んで持ち帰らせてくれた。ものも言えない兄の待つ部屋に、ぴりりと広がる山椒の香りがなんだかおかしかった。
 当日は、こちらのクソみたいな都合で祝えないから、別に祝ってもらわなくていい、とつい話の種として漏らした日付けに思わぬ食いつきを見せたハゲ頭の彼に、念を押してそう言っていたのに。
 だったら翌日にでも祝えばいいんだからとどんな高級な服や車よりも身になり、悪趣味なディナーなんぞとは比べものにならないくらいの楽しいご飯で腹を満たされた。
 満たされていたのは胃袋だけじゃなかったのに、今更それに気づくなんて。
 これからは、もう、食べられない。
 あの不味い中華はこの世で作られないし、美味い中華は自分に食べる資格がない。
「昨日、俺……誕生日だったんだ」
 英二が息を呑んだ。“なんでもっと早く言わないんだ”“何か欲しいものはないのか”
 分かりやすく目で訴えかけてきた友人に、俺は下手くそに息をして、だからと言った。
「お前の好きなもの、作ってくれないか。――思い出せる、味が欲しい」