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さもゆ
2024-12-06 15:27:25
17771文字
Public
BF
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【BF腐】ツイログ2
1~7…A英。
8…シンと肩幅おじさん。
9…あっしゅ誕生日祝い。
10…英ちゃんとコングとボーンズ。
11…
ピザ
のちょこっとした続き。
12…A英。
2020.12.26 たまごのお粥pixiv投稿作品
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お肉が食べたい英ちゃんのA英。
お肉パーティー
ぐえっ。
自分の喉から蛙の潰れた声が飛び出たのは、主に肋への衝撃が大きかったからで、決して普段あまり自分からスキンシップをすることのない同居人が、真正面から抱きついてきたからではない、とアッシュは思いたかった。
ちょうど頭のてっぺんが顎につきそうな身長差だ、黒いつむじに自分の顎が触れたら何か法を犯すような気持ちになりそうだったので、それはなんか困る、と顔を仰け反らすと、見上げてくる黒い瞳と視線がかち合った。
うっ、アッシュの喉から物理的に攻撃を食らったような、ひどい声が出そうになった。
「
……
なんだよ、どうしたんだ」
取り繕って言った声音はあんまり無愛想すぎたが、英二は気にしたふうでもなくじっと見つめてくる。心なしか、黒目が潤んでいる。頬も赤い。気がする。気がするというのは、アッシュはいい加減この友人を特別な視界を持って見ていることを自覚していたので、ひょっとすると自分だけが都合よく見ている幻ではないかと思ったからだ。
「アッシュ
……
」
その幻だかそうじゃないんだか、いや密着した胸部の温かさと腰に回る腕の力からして全てが幻覚というわけではなさそうな英二が、恥ずかしそうに言った。
「に、肉が食べたい」
あ、本物だこれ。アッシュは思った。
なぜ肉が食べたいことをこんなひどいやり方で告げてきたのか、ちょっと八つ当たり気味に問うてみると彼はひどいやり方? と不思議そうに首を傾げ、だって肉だぜ、とさも簡単な答えを用意しましたという態度で言ってきたものだから、アッシュはまた仏頂面をする羽目になった。意味がわからないよ、オニイチャン。
すると彼はまたなぜかとても恥ずかしそうに、だからさ、と視線をうろつかせた。彼が口を開いて顎を動かすたび首元がくすぐったくなって身をよじる。
「時々、どうしようもなく、なんて言うかな、罪悪感が戻ってくるんだよ。あのー
……
選手だったころの
……
」
もごもごした英語を聞いて、アッシュはむっと眉間に皺を寄せてしまう。たまに、英二は自分の棒高跳び選手だったころの話をするとき、こうして言いづらそうにしている。過去の話だ、誰だって唇がもだつくことはある。けれどアッシュはその恥ずかしそうに英二が話すのを、あまり好きにはなれなかった。だって自分は彼の棒高跳びに救われたのに。「だからー
……
その、まあやっぱり飛ぶわけだし、スポーツ選手ってみんなそんなもんだろうけど、食事はすごく気をつかっててさ。特に肉については。筋肉と骨にとって重要な栄養だし
……
あんまり好き勝手食べることなくて
……
」
英二はちらとアッシュに目をやる。
「だから、あの、食べていい? 肉」
アッシュは小首を傾げた。
「なんでそこで俺に許可を求める?」
「いやだって、ほとんどきみのお金だし」
「好きに使っていいっつったろ。飯作って貰ってんだから、そのくらい」
「そ、そーなんだけれど」英二はまた目を伏せてしまった。えっと、とかだから、とか、自分の中の言葉を必死に組み合わせて口にしようとしている。
その様を見て手助けせねばと思い、これまで聞いた言葉を頭の中で引っくり返したりしながら、納得のいくよう繋ぎ合わせてみた。好きに食べられない。罪悪感。ついでに、窺うようにしているくせして逃がしたくないとばかりに腰に回っている腕。
まあつまり、食べていいですよという正式なお許しが欲しいんだろう。誰かに認められたという安心を得たいわけである。
そこに考え至ったアッシュはなんとなく抱きつかせたままにしていた肋が熱を上げたような気がしたし、その熱が肺腑を焼いて呼吸をおかしくさせたような気がした。咄嗟に吐いた息は溜め息にしては熱かったように思う。アッシュはやはり無愛想に言った。
「食っていーよ。いっぱい買って、いっぱい食わせてやる」
だから離れてくれ、言う前にやったーありがとう! 歓声を上げた英二に強い力で抱き締め直された。ぐえっと蛙の潰れた声が出た。
「うわわわ、すげー
……
すげえ」
この世の中、二人して買い物に行くのは少しばかり危険であったため(一人で行くよと言われたが、そうさせるくらいなら肉は買わない、とは言わずに二人で行った方がたくさん買えるし、それが無理なら宅配の方がたくさん届く、と答えてやると彼は嬉しげに何度も頷いてくれた)今日中に届く宅配サービスで大量に購入した多種多様の肉を前に、英二は少年みたいな声を上げた。「こ、こんなに買って良かったの? 今日中には食いきれないよな、なあ見て、マジで
……
」きらきら輝く黒目を向けてくる。「エッほんとにこれ食っていいの?」
「い、」裏返った声は咳払いで誤魔化した。「ん、
……
いいよ。好きにしろよ」英二は童顔で感情に素直、年下かと思う見た目だが、それでも二歳上の感覚か長男の性格か、どうにもアッシュを甘やかすのがうまい。こちらはいつも迷惑や心労をかけている自覚があるし、そのせいで彼を無理に大人らしくさせてしまっているんじゃないかと時々考える。そして彼自身、自分が最もアッシュに迷惑をかけていると思っている。お互いさまの、堂々巡り。
だからこうやって憂いを全て取っぱらって頼られると、なんでもしたくなってくる。今回は、それが、このダイニングテーブルに広げられた鶏やら豚やら牛やらの肉だった。
生ものもあれば、燻製や惣菜なんかもある。とりあえず今夜使うものを決めて、あとは冷凍しとこうか、そわそわと腕捲りして言う英二に、アッシュは少しつまらない気持ちになった。すっかり料理が趣味になっている彼は、肉をどう調理するかも楽しみなのだろう。
自分がものすごく肉を食いたいわけではなかったが、お預けを食った気分になる。そもそもアッシュは動物の肉よりは海鮮類が好きだ。こんなことを言ったら張っ倒されるだろうが、赤身や脂身がてらてら光って血を彷彿とさせる動物の肉は、なんだか胸をむかむかさせる。筋があり、骨があり、血が滴る。その構造は自分の血肉も思わせる。積極的に肉を摂りたいとは思わない。
しかしまあ、隣りに並ぶ同居人の、嬉しそうな様子と言ったら!
彼が今すぐに食べるのを我慢して調理法をあれやこれや模索していると、こちらまで我慢している焦れったさを感じるのだ。これはすごいことだと思う。
思うものの、自分は遥かにひとより我慢強いという自負があるのに、こういうときのそれはうまく働きかけてくれない。
アッシュはそのへんのスーパーではまず見かけない高級生ハムのパックをひとつ取ると、包装フィルムを剥がして一枚つまんだ。
薄っぺらく、指の腹に吸いついてくる生ハムを、目を丸くしている英二の前に持っていく。
「な、何?」
「味見」
「そ、」迷う時間は極わずかだった。「それは、重要なことだね」太めの黒眉を凛々しく上げて、反対にアッシュの持ち上げた指先まで顔を下げた。
いや。
そんな餌付けみたいな。
思ったところで、もう英二の唇は生ハムにくっついていたし、指に吸いついていた薄っぺらな感触は彼の口の中だった。あっけなく食べられた。
もぐりもぐり。もぐり。
「何これ
……
」英二の噛み締めていた唇がニヤけて綻ぶ。「すげえ美味い。あー
……
美味しいな。美味しい」なんの工夫もない感想だった。
「そ、」よく回る口だったので、内心とは裏腹に極わずかな時間で模範解答を言ってくれる。「そりゃ、良かったな。ウン、美味そうで、良かった」
「けど、味見だからな」
「え? ああ」
「味見だから」
「
……
もしかしたら、二枚目は味、変わってんじゃねえの」
そうかもしれない、真面目に言った英二は、アッシュがなんでも叶えてやりたくなるわんぱくな顔つきで、指を鳴らした。
「でも、僕だけじゃ精査に欠くから、もうひとり共犯
……
調査員が必要だと思う」
それを提案されたアッシュは。
また咳払いで何事かを誤魔化して、ぶきっちょになりきれない声音でじゃあ俺が立候補します、と返したのだった。
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