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さもゆ
2024-12-06 15:27:25
17771文字
Public
BF
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【BF腐】ツイログ2
1~7…A英。
8…シンと肩幅おじさん。
9…あっしゅ誕生日祝い。
10…英ちゃんとコングとボーンズ。
11…
ピザ
のちょこっとした続き。
12…A英。
2020.12.26 たまごのお粥pixiv投稿作品
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59丁目、英ちゃんとコングとボーンズと夜。
泣けて偉いねー!
まずいまずいまずい、どれくらいまずいかというと小学校のとき給食で出たミートボールくらいまずいし中学生のころ女子の胸を間違ってわりとガッツリ触ってしまったくらいまずい。あれは完全に事故だったのだけど向こう四日間くらいクラス男子たちからからかわれたしまるで青汁でも飲んでいる気分だった(もちろんちょこっとだけラッキーと思わないでもなかった)のだが、今回はそれの比じゃない。青春を捧げた棒高跳びで怪我をした、その次くらいにまずいと思っている。
「落ち着けオチツケおちつけ」
念仏のように日本語で言い聞かせる。いいから落ち着けよ。しかし落ち着く落ち着かない以前に自分は何がどうまずい事態になっているのだろうか、それすらサッパリだった。
今日はいつも通りの朝だった。いつも通り寝ぼすけ野郎のアッシュを叩き起してどこへかは明確には知らないがいつも通り見送りたくないところへ見送った。それから入れ替わりにやって来たコングとボーンズとお喋りしながら家事をして、ともにご飯を食べて、ちょっとそのへんをぶらついて、下のスーパーで買い物して、またともにご飯を食べて、あいつったら今日は何時に帰ってくるかしら見送ったんだから出迎えたいんだけどまあいいか先に寝る準備だけしとこうとシャワーを浴びて、そして夜中。ついさっき。
いつも通り歯を磨いていた。
面白くて買った、色がどぎつくてくそまずい歯磨き粉を使っていた。
しゃこしゃこしゃこしゃこ歯を磨いて。
あっ、と思ったとき。
へぶっしょい!! くしゃみが出た。
あっ、と思った瞬間の、なんの準備時間も持たせてくれないタイプの突発的なくしゃみだった。
口から虹色の飛沫が鏡面と洗面台に襲いかかり、垂れた唾液と歯磨き粉で歯ブラシが滑ってカランと落ちる。ぶばっ、噎せた。くしゃみひとつの一瞬で大惨事を起こしたと間髪容れず悟っていたがあまりにも阿呆すぎて笑いがついと出た。げほげほ笑う。
そしてぐいと拭った。手の甲で頬を。
口ではなく。
えっ? と思う。拭うべきなのは虹色の歯磨き粉を垂れ流している口端か飛沫のかかった鏡面だろうに、何をとんちんかんなことをする。
汚れていない左手の親指の腹で、右頬をこすった。あっ、とまた思った。
泣いていた。
涙が出ている。
くしゃみで? と思った。くしゃみの反動で出たにしては水滴が続いて出てくる。ひとつぶ零れ、ひとつぶ零れたと思ったらふたつぶ零れ、ふたつぶと思ったらみつぶ、よつぶ。ごつぶ。ぽろぽろぽろぽろ両目から涙が落ちていき、口端や顎に付着していた虹色と混ざってつぶつぶと零れていく。ああこれはどういうことだろう、まずいな、とようやく自分の異常性に気づいたのだ。どうしよう──涙がとまらない!
「大変だ!」
英二は既にソファで就寝しようとしていたコングとボーンズのいる部屋に飛び込んだ。ソファにまで乗っている空き缶をのかし毛布を広げていた手を止め、二人がぎょっとする。「ど、どうしたっ?」それから英二の顔を認めて更にどよめく。「おい!」ボーンズがコングの背を叩いた。「英二が泣いてる!」叫んだあとあんまり言い慣れない言葉だったのか不審そうに口をもぞつかせた。とにかく二人ともが駆け寄ってくる。
「一体どうした、風呂場になんか出たか?」
「いや。いやボーンズ、そうだったら良かったんだけど」ほろほろ、ほろほろ。
「じゃあ何も出なかったことに泣いてンのかよ?」
「それも違うよコング。困惑してるとこ悪いんだけど、僕もちょっと、原因不明で」
「原因不明ぃ?」二人が顔を盛大にしかめる。「つかお前、なんだその汚れは」
「歯磨き粉。ああしまった、拭いてくるの忘れた」
そのまま慌ただしく引き返して行きそうだった英二を捕まえ、コングとボーンズは見合わせた顔をまた同じにさせた。アイコンタクト。英二には分からない非言語コミュニケーション。二人は二人にしか分からないものを持っている。
けれどもその二人にしか分からないもので英二を排そうとしたことは一度だってなかった。
「とにかく座れよ、な?」
「濡れタオル持ってきてやる」
コングは太い手で英二を座らせ、ボーンズは細い足で素早く部屋を出て行く。
そうしてあれよあれよという間に毛布で包まれ、濡れタオルを渡され、空き缶をどけたテーブルに湯気の立つマグカップまで置かれた。
「ホットミルク。たぶん熱しすぎたから今飲んだらえらい目に遭うぜ」
「更に涙が出ちまうな」言ったコングをボーンズが小突いた。
「あ、ありがとう
……
」
変わらず涙は出続けていたし、喉はひぐりと鳴っているものの、お礼を言うと二人は僅かばかり安心したように両隣へ腰かけた。
「原因不明だって?」
「まァそーいうこともあらぁね」
「出なくなるまで泣き散らかしとくのが吉よ」
「そうそう」
「そうかなあ
……
」
「そーだよ。だって、」
……
まだしばらくボス帰ってこねーだろうし、泣ける時に泣いといた方が、とぼそりと言ったのは、どちらか。とにかく二人ともの言い分らしく、どうやら英二ですら不明だった涙の原因に当たりがついているような様子に、英二はずびと鼻を鳴らした。
涙の出過ぎで頭がぼんやりし、それ故によく分からないながらもそうかもしれないと思う。
泣ける時に、泣いておかないと。
じゃないとあいつに迷惑がかかる。
「
……
今夜は僕を寝かさないでくれ
……
存分に泣くから
……
」
自得して呟く英二に、いや泣き疲れて寝てくれよ、二人がベビーシッターのように言った。
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