botanin5
2024-11-14 02:55:10
41522文字
Public 薬さに♀(小説)
 

そして好きを知る

ハッピーエンド
・獅子王→女審神者の表現があります。
・軽めですが、戦闘の描写があります。






「えっ!?薬研、ほっぺどうしたの!?」
「獅子王に一発殴られてきた」

晴れてめでたく、薬研と私は恋人同士となった。花火が終わってから、獅子王に自分の気持ちを告げた。
そっか。ありがとな、主。そう言った獅子王は、少し泣きそうだったと思う。

「主を泣かせたことは、これでチャラな。なんて言われたら、受けるしかねぇだろ」
「うひ~、痛そう。獅子王、怒ってた?」
「いや、」
「あーるじ!」
「わぁ!?」

薬研の頬にそっとふれようとしたら、後ろからぎゅっと抱きすくめられた。

「しっ獅子王!」
「薬研に泣かされたら、いつでも俺んとこ来いよな!」
「誰が行かせるか。おいこら離せ。大将に触んな!」
「おい薬研、そこは泣かせないとか言えよ」
「それは約束できねぇな。大将の泣き顔、好きなんだよ。」
「うわ
「え、ちょ、はぁ!?!?」

私から獅子王を引きはがした薬研の爆弾発言に固まる。あ、悪趣味だ!
しっしっと追い払われた獅子王は、はいはい分かったよと腰を上げる。じゃあ、また飯の時にな!と手を振りながら笑顔で去っていった。

「泣き顔が好きとか絶対変
「そうか?なかなか、そそるもんがあるぜ」

にやりと笑う薬研に恥ずかしくなって、わき腹をぼすっと殴る。なんでそういうこと言うんだ!もう一度殴ってやろうと腕を引けば、あ、そうだ。と薬研が自分の荷物を漁る。

「大将、これ」
「なに?これわ!簪!」
「本当は、これ渡して好きだって言う予定だったんだがな」

大将にばったり会わねぇようにわざわざ休んで買いに行ったんだが、計画が狂っちまった。そう言って笑う薬研は嬉しそうだ。とても綺麗な藤色の簪。大事にするね!と言えば、つけてみてくれと頼まれる。下ろしていた髪をまとめて、そっと簪を挿した。

「やっぱ似合ってる」
「えへへ嬉しい。ありがとう」
「大将、前に菓子を渡したとき俺に選んでて欲しかったって言ってたろ?だから、これはちゃぁんと自分で選んだぜ」
「お、覚えてたんだ

当たり前だろ、と優しい笑みを深める。じんわりと自分の顔が熱くなった。うれしい。

「と、そうだ。これ、今日の土産」

そういえば、彼は先ほどまで遠征に出ていたんだった。掌に乗せられたお菓子を見て、あっと思い出す。あの、泣いていた女の子はなんだったんだ!!?頭に浮かんだらどうにも気になってきた。薬研の気持ちはこれっぽっちも疑っていないけれど、すっきりさせたい。

「薬研、ねぇ、ちょっと聞いていい?」
「ん?」
「あの、花火大会の時に泣いてた、あの子、とは、そのどういったご関係で?」
「ふっ」
「あ!笑った!ひどい、気になってるだけなのに!」

わりぃと笑いながら薬研が話してくれた。どうやらあの子は他の本丸の薬研藤四郎に恋をしていたらしい。私へのお土産選びに付き合うかわりに、相談に乗っていたそうだ。花火大会に一緒に行けるように作戦を立てて、どうにか約束をこぎつけたのだが、何があったのか、あの日喧嘩してしまったらしい。ちらっと頭をよぎったのは、屋台を巡っている時にぶつかった薬研藤四郎の姿だった。まさかな、そんなわけないか。

「まぁ、まだまだ諦めねぇって泣きわめきながら言ってたから、大丈夫だろ」
「そっか

なんだか応援してあげたい気持ちになった。同じ、薬研藤四郎好きの仲間として。今度行ったら話しかけてみようかな秋田を誘ってもう一度あのお店に行こうと決めて、あっと思い出した。

「あの公園!」
「公園?」
「あのお店の近くの公園で、あの子が薬研のほっぺにキスしてた」
「はぁ?そんなことあったか……あぁー、もしかしてあれか」
「や、やっぱりキス」
「まて、あれはな」

それも、どうやら私の勘違いだったようだ。内緒話で耳打ちされたが、頬にキスなんてされてねぇぞ。けろりとそう述べた薬研にほっと息をつく。でも、手は絶対握ってたし、花火の日は頭撫でてた。この際言ってしまえと正直に不満を漏らしてみる。

「あんな風に、他の子に触られると、ちょっといやかなり嫌だな
「ほぉ」
「くっ!にやにやすんな!!」

もう知らない!部屋を出るために立ち上がろうとすれば、ぐいっと手を引かれて薬研の上に倒れ込む。

「大胆だな大将」
「いま薬研が引っ張ったんじゃん!!!」

するっと絡められる足に気づいて体が固まる。ぐいっと薬研の顔が近づいてきて、あ、うわ、もしかしてキス!と目を閉じる。しかし、こちらに触れる気配はない。あれ?

「獅子王に聞いたんだが」
何を?」

話し始めた薬研に、なんだ違った、と少しがっかりしながら目を開ける。
えーと、獅子王に何を聞いたって?

「本丸が襲われたとき、大将を助けたお礼に言うこと一つ聞くって約束したらしいな」
「あ~、したした。言うこと聞くっていうか、お願いごとを聞くよって話をね」
「俺にはないのか」
「へ?」

あ、そうか!薬研にこそ助けてもらったのに、なんだか色々ありすぎてすっかり忘れていた。

「そうだよね!すっかり、頭から抜けてた!あの時はありがとう薬研!って、これは言ったか。じゃなくて、何かお願いとかある?なんでも聞くよ?」
言ったな?」

慌てて薬研にそう言えば、にやりと笑った。あ、これ良くないお願いされる。身を引こうとすれば、私を巻き込んでくるりと回転する。視界に映るのは、薬研と、天井。ぐっと薬研の顔が近づいてきて、とっさに目を閉じると、首元に強く吸い付かれる。う、わ。どうしよう。これはもしや。そんなまさか。まだ、早いよ!!
ふるふると震えていると、ふっと薬研が笑った。そのまま耳元でそっと息を吐く。

大将からキスしてくれ」
え」

固まっていると薬研が顔を上げて、再び目が合う。キス?私から?誰に?薬研に?無理だよ!!!!カッと顔に熱が集まる。私からこの美少年に近づいて、口づけろと!?無茶言うな!ぱくぱくと口を動かして何も言えずにいると、金魚見てぇになってるぞ。と薬研は笑いながら身体を起こした。もう、なんなの。薬研に合わせて自分も起き上がる。

「別に、いつでもいいぜ。大将の心が決まったらで、いい」

先ほどとは打って変わった優しい瞳で言われて、落ち着いた。
あぁ、好きだなぁ。
俺はいつまででも待てるからな、ともう一度笑って、そろそろ晩飯かと薬研はゆっくり立ち上がる。

「行こうぜ、大将」

いつものように差し伸べられる優しい手をとって立ち上がる。
そのまま、流れるように、そっと薬研に口づけた。


薬研、大好き」

ぽかんと固まる薬研がなんだか可笑しくて、愛おしくて。ふふっと微笑むと、はっと我に返った薬研の顔が真っ赤に染まった。
え?
初めて見る光景に、思わず目を見開く。

「薬研、顔真っ赤」
うるせぇ」

え、嘘、薬研が照れてる!!!可愛い!!!

「薬研!照れてるの可愛い!ちゃんと顔見せて!」
「あぁ!?っ、今こっち見んな!」

見せて見せてと近寄れば、手で顔を隠されてしまう。そうはさせるかと腕を掴むと、子どもの遊びみたいな攻防に発展する。廊下から「ちょっと!うるさいんだけど!」と聞こえる光忠の声すら楽しかった。温かい気持ちがこみ上げてくる。もう、迷うことなんてない。

『好き』って、こんなに素敵なものなんだ!!


「ねぇ、薬研!大好き!」
「あぁもう、俺も大将が大好きだ!」