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DUNGEON DE RONPA 2nd



✣6章後半

血が広がっていく。
腕に槍が刺さっているというのに、その人物は悲鳴すら上げなかった。

いつの間にか槍は降り止んでいた。それどころか、床に散乱していた槍も、誘夢の死体も。
それ自体が夢だったかのように消えてなくなってしまっていた。
ただ、そんなことを気にする余裕もなくて、俺はその人物の安否をただ確かめようと顔を上げた。

『なんで……

信じがたい光景だった。
それはあまりに惨たらしい状況が受け入れられなかったからではなくて。

『お前……なんで笑ってるんだよ』



怪我をしたことに対する心配よりも何よりも先に、そんな疑問が湧いてきてしまうほど彼女の表情は恍惚としていて。
周囲の人間がギョっとしているのも構わず、ファルマーは血だらけになった自身の手を見つめ、笑みを深めた。

ファルマー「ああ……ふふ。あはは、駄目だよぉ」

どうにも様子がおかしかった。
しかし、俺たちは一歩も動けず、ただ彼女を見つめるしか出来なかった。

ファルマーは尚も笑い続けている。
そうして一頻り笑った後、彼女は満足したのか笑うことを止めた。

ファルマー「あぁあふれちゃうなぁ、あたしの、業も、罪も、痛いのも、アタシも、全部溢れ出て、………………絶望しちゃう♡」

そういうと、手を貫いている槍を力任せに引き抜いた。
どばどばと血液が流れ出すことも厭わず、それどころか痛みすら感じていないような表情で。

来栖「ファルマーちゃん、どうしちゃったの……
そう言う希依音の顔は青ざめていた。

ファルマー「どうした、って……もう、アタシ、隠しきれないからさ。言っちゃってもいいよね?」
モノリィ「……いいんじゃないでしょうか。このまま終わらせても、ファルマーさんへの不信感は消えないと思いますし」

モノリィはため息を吐きつつ、呆れたような口調で話す。
返答を聞き終えると、ファルマーは握っていた槍を投げ捨て、諭すように語り始めた。

ファルマー「どうしようもないほど愚かなキミたちに、アタシが良いこと教えてあげる」

投げ捨てられた槍は、粘土細工のように折れ曲がっていた。



――――――――――――――

ずっと一緒にいたのに、キミたちは疑わなかった。
希依音ちゃんの話を聞くまで、仲間の中に悪い奴がいるだなんて、そんな可能性すら考えたことなかったんじゃない?

つくづく幸せな人たちなのね。ほんと、羨ましい。

ねえ、どうしてそんな顔してるの?
もっと敵意に満ち溢れた顔で睨みつけてくるかと思ったのに、どうしてアタシのことを憐れむような、そんな目で見てくるの。

アタシ、可哀想に見える?何も分かってないくせに、分かったような目で見ないでよね。
同情なんて形のないもの、何の役にも立たないし要らないのに。

心だけじゃなくて、体まで怪物になってしまったのに。
人間離れした力を持つアタシのことでも、見捨てず救ってくれるっていうの?

……そもそも、どうしてこのコロシアイが行われたのか知らないから、可哀想だなんて思えるんじゃない?
これ、人類の選別の下準備のために行われたんだって。大層な理由だよねえ。

アタシ、それを聞いた時に凄くホッとしたの。こんな世界を壊すお手伝いなら、いくらでも引き受けようと思ったの。

あらら、もう次に進まないとだめなの?ちょっとみんなとお喋りしたかっただけだって。
そんなに催促されなくても大丈夫、ちゃんと覚えてるよ~。



どちらを選んでも、アタシは文句を言わないわ。

―――――――――――――

「我輩は、何も出来なかった。みんなを救えなかった。それどころか我輩、ずっと泣いてただけだったのだ。
けど、仲良く怪物になる、だなんて。きっと、みんなは望んでいないと思うんだ」



――――――――――――

「あのさ、人類の選別ってなに、とか。怪物になるってなんなの、とか……他にも聞きたいこと色々あるけど。
要するにここに残るか外に出ていくか選べってことだろ?……それなら」



―――――――――――

「みんなで、かあ。みんなのことを置いていって外に出たら、もしかして怒られたりしちゃうのかな……?」



――――――――――

……もし、あの時ああしていたら。そんなことを考えていたんだ。
正直、後悔ばっかりだよ……あいつらのことも、忘れてしまって思い出せなくなるかもしれないと思うと、ここに残るのも悪くない気もする」



―――――――――

ファルマー「そっか、うん……よく分かったよぉ」
俺たちの返事を聞いて、ファルマーは頷いていた。

ファルマー「アタシたち、きっとどこまでも分かり合えないんだね。アタシもキミたちのこと分かってあげられないし、キミたちもアタシのこと、分からないでしょ」

もっともっと、早くに出会えてれば良かった。そうしたら違ったかもしれないのに。
ファルマーはそう独り言ちていた。その横顔はなんだか寂しそうだった。

モノリィ「それでは、オシオキにうつりましょうか」

アームが伸びてきて、ファルマーの首をしっかりと掴んだ。

ファルマー「ねえ」

「希望だっていうなら、アタシのことも、救ってみなよ」

泣きだしそうにも見える彼女に、俺は……
・迷わず手を伸ばした10≫
・躊躇って手を伸ばさなかった11≫