✣3章
ホテル内は昼でも夜でも、あまり気温が変わらない。
ダンジョンが洞窟のような構造をしていることもあってのことだろうと思う。
きっと、夏は涼しいし冬は暖かいのだろう。
だから、体調不良になることなんてなかった。
……少なくとも、健康的な生活を心がけているうちは。
しかし、どうにも風邪のようなものが流行っているようだった。
熱を出し、咳き込むものがちらほらと見受けられるようになったのだ。
最初は、精神的疲労から来るものだろうと皆考えていた。
2回も殺人が起こり、いつ次の事件が起きてもおかしくない状況にいること。
それ以上に、大切に思っていた人物がいなくなったことによる心労は計り知れないものだろうと思っていたからだ。
来栖「みんな、早く元気になればいいんだけど
……」
ローゼ「そうだな。滋養に良いものでも作ろうか」
四月一日「お肉は今度にしよっ!」
冷蔵庫から肉を取り出そうとしたローゼを誘夢が止めていた。
詠「なあ、お前も具合悪いなら休んだ方がいいんじゃない」
『
……お、俺のこと言ってるのか?』
詠「そうだよ。顔色悪いからさ」
確かにいつもより熱っぽいかもしれない。
風雅に礼を言い、今日は早々に休むことにした。
🦄
いつにも増して様子がおかしかった。
何事かをぶつぶつと呟いていて、気味が悪かった。だから、お前も休め。こちらにうつされたら困るだろうと投げかけたらこの始末だ。
こんなことになるんだったら、無視しておけば良かったかもしれない。そう後悔してももう遅いことは十分に理解していた。
額から血が流れ出している。視界が霞む。
凡庸な言葉を羅列して、状況を説明することは簡単だった。
目的も何も完遂されぬままなのが少々悔しいが。
🦄ㅤ
誰かが倒れてたから、近づいたの。
もし具合が悪かったのなら大変だなって思って!
そしたら、頭から血が出てて。それで
……。
気が付いたら、私も殴られちゃってたみたい。
衝撃で目の前の景色が歪んで、半分くらい反射的に殴られたところを触った。
手のひらについた赤い血をただ茫然と見つめるしか出来なかった。
中々死なない私に痺れを切らしたのか、その後
……。
誰か、私を助けてよ。
心の中でどれだけ叫んでも、王子様は現れなかった。
🦄ㅤㅤ
生きなきゃいけない。
あの人たちの思いを無駄にするわけにはいかない。
ずっとずっとそう思っていたの。
けど、またコロシアイが起こって、皆がいなくなって。
次は自分かもしれない。そう思うと、益々焦ってしまって。
……ここから出なくちゃいけなかったのに。
葉々「どうして二人も殺したの
……」
どうしてですって?
そうね、特に理由はないわ
……アタシが勝ったらどうせ全員死ぬんだから何人殺しても変わんないでしょ?
矢張「生きたいから殺した、だなんて
……そんなの、おかしいのだ」
宙八覡「あら、貴方はコロシアイを経験したことがないからそんな綺麗事が言えるのよ!」
来栖「そんなこと言うなんて、天夢ちゃんじゃないみたい
……」
来栖さんは泣き出しそうな顔をしていた。
……じゃあ、どんなことを言えばアタシみたいになるのかしら。
何もしないまま死ぬわけにはいかなかったのよ。
そうしたら、生きることを望んだ過去のアタシを否定することになっちゃうじゃない。
同じ経験をした貴方なら分かってくれるんじゃないかと思っていたけれど、そうじゃないのね。
新庄「助けを待つことは出来なかったのか。もしかしたら、もうすぐここから出れるかもしれないだろ」
宙八覡「そうね、確かに。ずっと待っていたらここから出られたかもしれないわ。でも
……」
宙八覡「閉じ込められたままだなんて、生きてるって言えないもの」
でも。やっぱり死ぬことは救いだなんて思えないわ。
――――――
『
……絶望病?』
モノリィ「ええ、ですからもう体調が悪くなることはないと思いますよ」
俺たちが風邪だと思っていたものは、絶望病という病気だったらしい。
ローゼ「
……胸糞悪いな」
もし、絶望病に感染していなかったら。
そう仮定したところで、時間は戻らなかった。
✣3章シロ→服部煌来様、小鳥遊緒鳥様
3章クロ→宙八覡天夢様