Hizuki
2018-04-22 23:04:57
30628文字
Public FF14
 

黒き竜の果て

【FF14】エス光。3.3~4.0のニーズニャンIF話。いつも以上に捏造設定山盛り仕様。本当に何でも許せる方向け。注意書きをご覧のうえでどうぞ。



「我に出来るのはここまでだ」

そう言うと集落の外壁の側へゆっくりと下りていく。
時間にして2時間ほどだろうか。
確かにこれは普通に向かっていたらどれだけかかったことか。
飛び移れるほどの高度まで下がったところで、ミドガルズオルムの背から降りた。
同時に竜の姿も小さくなる。

「あやつはあの正面の研究所におる」

ミドガルズオルムの視線の先、顔で示されたところに、大きな扉が見える。
どうやらこの集落は完全に敵の支配下にあるようで、警備の兵がそこら中をうろついている。

助かった」

礼を言うと、竜はまた光となって消えた。
血が騒ぐ。
すぐ近くに相棒がいるのだと分かる。
ミドガルズオルムがいなければこんなに早く来ることはできなかった。
建物の屋根を渡り、血が導くままに研究所を目指す。
警備の目をくぐり抜けていき、件の場所を視界に捉える。
入口の前には見張りらしい兵が2人。
高所からの急襲で不意を突いて手早く床に転がし、物陰に引きずり込むと、懐を漁り持っていた鍵を拝借する。
一つしかない扉を開けて中に入ると、同じ形をした用途の分からない黒いものが複数並んでいた。
人間が入れそうなほどの大きさで、それはまるで棺のようにさえ思えた。
そして床に無数に転がる黒い覆い。
盛り上がり方を見るにその下にあるのは人間の遺体だろう。
一体ここで何を、そんなことを考えていたのも束の間、敵意を感じ取って後ろに飛び退く。
前方を見ればついさっきまで俺が立っていた場所に槍が刺さっていた。

「最近どうにも研究所に来客が多いな研究に集中できないじゃないか

鬱陶しげな男の声が響いた。
その声は先日ドラゴンズエアリーで聞いたものと同じ。
続けて足音が二つ。
研究所内の照明が点き、足音の主を浮かび上がらせた。
見覚えのある男の顔と、よく見知った女の顔。
男の名は知らないが、耳につく笑い声だけは記憶に残っている。

「俺はここにいる奴を迎えに来ただけだ。それが済んだらすぐに帰るさ」

別にこいつらと事を構えるために来たわけではない。
目的はただ一つ、相棒を助けに来ただけ。

「いるんだろ、相棒!」

返事はない。
エーテルを竜騎士の力の源たる竜の眼の形に留めて放出すれば、装置の一つに向かって真っ直ぐ伸びていく。
その中に相棒がいる。

「おっと、その素体を渡すわけにはいかない殺せ」
「悪趣味な奴だ

ただの研究対象としてしか見ていないのが分かる。
指示を受けた偽者が床に刺さった槍を抜いて構えた。
同じように武器を構えれば、それが合図となってこちらに向かってくる。

「あぁ、貴様はあの時のドラゴンかクックック、自らサンプルが飛び込んでくるとは好都合

槍のぶつかり合う音が響く中、思い出したように男が呟く。
どうやら向こうも俺のことに気付いたらしい。

「命令変更だ、生け捕りにしろ」
「できるものならやってみろ」

こいつが相棒を元にしているというのは戦ってみてよく分かった。
攻撃の仕方、距離の取り方、身のこなし、そのどれもがそっくりだった。

「確かにあいつによく似てはいるが、所詮は偽者だ」

自分の身に宿る蒼の竜騎士の力を解き放つ。
竜を模したエーテルを纏い、流れるように連続で攻撃を叩き込めば花弁が舞い散った。
可視化した竜のエーテルに怯んだのか、偽者の攻撃の手が止まる。
装置の側に追い詰めていき、空中に打ち上げると、自分も床を蹴って飛び上がった。
そして、あいつが入っている装置に向かって偽者を叩きつける。

「あいつの力はこんなものじゃない」

程なくして偽者の身体がずるりと横に滑り落ちた。
叩きつけた衝撃で装置の扉がゆっくりと開いていく。
その中には思っていた通り相棒の姿がそこにあった。

「馬鹿な!」
「蒼の竜騎士を舐めるなよ」

現状を見た男が膝から崩れ落ちる。
偽者はピクリとも動かない。
装置が破損したことで制御が利かなくなったのだろうか。
もしそうであるなら、他の個体の動きも止まっていればいいのだが。

「こいつは返してもらうぞ。俺の大事な相棒なんでな」

相棒の身体に取り付けられていた管を外してから慎重に装置から出し、膝裏に腕を回して抱き上げる。
もうこの場所に用はない。
動かなくなった偽者と男を残し、研究所を後にした。
内部の音が漏れないようになっているのか、表に出ても変わった様子はなかった。
入口にいた兵は相変わらず物陰で倒れたまま、代わりが来るような気配もない。
とはいえ今の状態での戦闘は絶対に避けなければならない。
表通りを外し、一本手前の道へ抜ける。
この場所の地理には明るくないものの、どうにかして離脱しなくては。
どこかにきっと道があるはずと、来る時に上から見た景色を思い出す。

こっちだ」

気配のない声が聞こえた。
もう誰とは問わない。

「ミドガルズオルム」
「無事のようだな」

相棒の姿を見るとミドガルズオルムの声が和らいだ。

「奴らはまだ気付いておらぬ。今のうちにこの場を離れようぞ」

ミドガルズオルムの先導で、建物を登り屋上に出る。
日が傾きつつあるせいもあるのか警備の目は甘く、あっさりと抜けることができた。
周囲を見回し敵がいないことを確認すると、来た時と同じように竜の背に乗ってこの場所を離れた。