Hizuki
2018-04-22 23:04:57
30628文字
Public FF14
 

黒き竜の果て

【FF14】エス光。3.3~4.0のニーズニャンIF話。いつも以上に捏造設定山盛り仕様。本当に何でも許せる方向け。注意書きをご覧のうえでどうぞ。



帝国の小型飛空艇に乗り込み、彼のいるドラゴンズエアリーに向かう。
誰にもどんな方法を使うのかということは話していない。
互いの目的のため、無用な戦いを避けるために民間の飛空艇に偽装してはいるものの、内装は完全に帝国軍用そのものだった。
自分のいる区画に窓はなく、外の様子を知ることはできない。
艇内は暗く計器のランプだけが灯っている。
私が乗ったことのあるエオルゼアの飛空艇とは異なっていた。
ただ体内を巡る竜騎士の血が彼に近づいているのだと知らせている。

ここか」

エンジンの駆動音が止まった。
表に出るとイシュガルドの飛空艇が目に入り、あちらの方が先に到着していることを知る。
先に事情を話しておこうと広間に向かえばエスティニアンと神殿騎士団のアンドゥルーさん、他に数名の後ろ姿が見えた。

「エスティニアン」

その場の全員が私の方を振り返った。

「お前、本当に
「だから言ったでしょ」

私の姿を見たエスティニアンが心配そうな声を発した。
首を縦に振らないなら、振らせるまで、と。

「アンドゥルーさん、ありがとうございます。騎士団の方も」
「こちらこそ。こんなに早いとは思っていなかったよ」

アンドゥルーさんや騎士団の方に頭を下げる。
エスティニアンの身体を管理していてくれたこと、そしてここまで運んでくれたこと、それらは私一人ではできなかった。
全てを理解し、受け入れ、その時が来るまで厳重に管理すると申し出てくれたアイメリク卿や協力してくれる騎士団の方々の力添えがあってこそ。

ちょっと生命エーテルの研究をしてる人と縁がありまして」
「そうだったのか」

エスティニアンが注意深く私の後ろにいる人物を観察している。
もしかしたら、好ましい人物ではないと気付かれているのかもしれない。

「まさかドラゴンとは

予想していなかった、というように背後でアウルスが呟いた。
確かに私は『人間の体』とは言わなかった。
人間の魂を分離するということにおいて、何一つ偽ってはいない。
竜に宿っているのは人間の魂なのだから。

「この竜には人間の魂が宿っているの。だから分離して欲しい」
いいだろう。ただしこれはまだ実験中の技術、成功する保証はない」
「成功する見込みがあるから実現させたんでしょう?」

準備が整って手順の説明が終わり、エスティニアンの竜の身体にコードで繋がれた機械が取り付けられていく。
本当にこれでよかったのかと自問自答する。
敵の研究者、不確かな技術、望んだ結果が返ってくるとは限らない。
もっと他に確実な方法があったのではないか、と。
一つ、また一つと増えていく不穏な光景に釘付けになっていると、横に立つアンドゥルーさんから鍵を手渡された。
何の鍵かなど問う必要もない。
側に置かれている厳重に鍵をかけられた石造りの棺。
その中にはエスティニアンが戻るべき『人間の身体』が納められている。
鍵穴に差し込み、右に回せば、錠前は音を立てて外れた。
縛っていた鎖は地に落ち、棺の蓋をずらせば、エスティニアンの身体が姿を現す。
右腕と左肩が抉れた紅い竜騎士の甲冑を身に纏い、横たわっている姿に生気はない。
アウルスの理論通りに衝撃を与え、強制的にエーテルを肉体から切り離せば、きっと元の人間の身体に戻れるはず。
いや、私が信じなければ、誰が信じるのだろう。
とうとう、この時が来た。

起動する」

辺りが眩い光に包まれた。
ビクリと痙攣するように竜の身体が跳ねたかと思えば、すぐに力なく地に伏せた。
ほどなくして蒼色のエーテルが宙に浮かび上がってくる。

「エスティニアン!」

エスティニアンの人の姿を形作ったエーテルの中にニーズヘッグの黒い影は見えなかった。
そして、蒼のエーテルは徐々に球体となり、一部が線のように伸び、真っ直ぐにエスティニアンの身体に向かっていく。
身体に引き寄せられるように、その線を追いかけるように、身体とエーテルの距離が詰まっていく。
魂が、肉体に沈む。
青白かった肌にうっすらと色が戻った。
すぐさま回復魔法が唱えられ、治療師達が手際よく彼の状態を確認していく。

「ニーズヘッグの身体が消えていく

雲廊での戦いの後、消えかけていたニーズヘッグの身体をエスティニアンのエーテルで維持していたようなもの。
それが離れた今、邪竜の身体を保つものは存在しない。
黒いエーテルが漏れ出しては霧散していく。
しばらくして、最後のひとひらが空に溶けた。

成功かどうかは目覚めてみないことには分からない。意識を取り戻すまではしばらくかかるだろう」
そう」

機械の動きが止まり、アウルスがそう言った。
私が持ちかけたのは技術の提供。
成否まで含めていない以上、彼はこちらの条件を満たしたことになる。

「クックックさて、今度はこちらの番というわけだな」

アウルスの目がギラギラと輝く。
交換条件で成り立っている以上、彼が目覚めるのを待つことはできない。

「ごめんね、エスティニアン。もう少しだけ待ってて」

エスティニアンに近づいて、耳元に囁いた。

彼のこと、お願いします」
「ああ、もちろんだ」

状況を察したらしいアンドゥルーさんの表情が険しくなった。
撤収の準備が整い、一足先に乗ってきた飛空艇でドラゴンズエアリーを離れる。
次に会えるのは一体いつになるのだろう。
扉が閉まる瞬間までその棺を目に焼きつけ、飛空艇が動き出すとおとなしく座席に腰を下ろして目を閉じた。
できる限り早く彼に会いたい、そう願いながら。

行きよりも帰りの方の時間がかからないように感じるのはいつだって同じだった。
ギラバニアに戻って早々に研究所に連れて行かれた。
ずらりと並ぶ機材、そのうちの一つをアウルスが開ける。
人がそのまま立って入れるほどの大きさのそれを目にして、これから自分の身に何が起こるのかを考えながら深く息を吸い込んだ。
機材の前に立ち、確認するようにアウルスに問いかける。

この装置に入ればいいのね」
「そうだ」

まるで棺のようだ。
彼を棺から出して、今度は自分が入る。
この身を技術の交換条件にしたのは自分自身。
具体的な話は何も聞いていないし、聞いたところで相手も話はしないだろう。
一体何に使おうというのか見当もつかない。
この場から逃げ出すことは難しくないけれど、相手が帝国である以上、対価は自分の身よりも高くつく。
そんなことよりもエスティニアンは無事なのか、そのことばかりが気にかかる。

「魔導技術の発展に大きく貢献することだろう!」
エオルゼアに敵対するようなことはしない、覚えているでしょうね」
「まさかこんな上等な研究素体が手に入るとは!」

念を押しても、それを意に介している様子はない。
新しいおもちゃを買ってもらった子供と同じように見えた。
軽率な行動だとは分かっていた。
それでも彼を助けられるのならば、その後始末は自分で付ける。

さあ、早く入りたまえ!」

機材に押し込まれた瞬間、光が弾けて視界が奪われる。
何が起きたのか分からない。
ただその光は温かく、触れた覚えがあるもののような気がする。
目が眩んでいる間に手首と足にひんやりとしたものが取り付けられる。
私の身体と機材を繋ぐ何か。
閃光が消えてゆっくりと機材の蓋が閉じていく中、研究者の高揚した笑い声だけが聞こえた