Hizuki
2018-04-22 23:04:57
30628文字
Public FF14
 

黒き竜の果て

【FF14】エス光。3.3~4.0のニーズニャンIF話。いつも以上に捏造設定山盛り仕様。本当に何でも許せる方向け。注意書きをご覧のうえでどうぞ。



「やれやれ、手間をかけさせやがって

アラミゴ王宮の屋上庭園。
その花畑の中に転がる2つの目玉はニーズヘッグのもの。

「蛮神の核に使われたことで、エーテルの残滓すら失われたか。どうりでまったく感じ取れないわけだ

イシュガルドの雲海に投げ入れられたはずの目玉が目の前にあるというのは、何とも奇妙なものだ。
拾われた経緯は耳にしている。
そして、目玉を核に召喚された神龍も相棒の手によって討たれた。

「とはいえ、このままにもしておけん」

邪竜の魔力で変質した槍を抜き、目玉の真上に構える。
意識したわけではないが、一瞬ぴたりと自分の手が止まった。
躊躇った、とでもいうのか。
竜騎士の力の源として、俺の身の一部にも感じられていた竜の眼。
その竜の眼を潰すということは、自分の身を切ることにも似ているような気がして。

意を決して槍を突き立てれば、阻むものは何もなく、すんなりと宙に霧散する。
肉体は俺が人間に戻った時に消滅し、最後に残った目玉も潰えた。

「本当にさよならだ、ニーズヘッグ」

日暮れと夜が混じり始めた空を見上げて、ニーズヘッグに別れを告げる。
これで本当に復讐から始まった俺自身の戦いは終わった。

終わったんだね、全部」
「ああ」

身を翻して来た道を戻ろうとすると、宮殿の影から声をかけられる。
他の誰でもない、相棒の声。
ひょっこりと見せた姿は大仕事をやってのけた後とは思えない。
俺と同じ新たな竜騎士の鎧を纏い、所々に見える傷だけが戦いの後だということを示している。
思えば本当に色んなことがあった。
冒険者のこいつと出会い、クルザスで共に旅をして、邪竜と戦って。
そして、邪竜に飲まれ、竜として生き長らえて、人間の身に戻った。

「いいのか、こっちにいて」

宮殿の外では帝国からの祖国解放に沸く人々の声が聞こえる。
その立役者は間違いなく相棒だ。
イシュガルドに続いてアラミゴまでも救って。

「私は解放軍のお手伝いをしただけ。主役じゃないの」
「またお前がいないと騒ぎになるかも知れんぞ」
「アルフィノに話してあるから大丈夫」

前例を示してみるも抜かりはないようで、そう言いながら俺の横を通り過ぎていった。
花畑に向かっていく相棒の背をゆっくりと追いかける。
自然と俺も赤い花に囲まれる場所に足を踏み入れていく。

「     」

名前を呼びかければ、向かい側の花畑の真ん中に立ち止まってくるりと俺の方を振り返った。

「ありがとう」

ずっと伝えたかった言葉。
深く頷いて、相棒が笑った。

「そういえば、まだ言ってなかったね」

息を吸い込んだ。

おかえり、エスティニアン!」

故郷はもうなくなってしまったが、新しい帰る場所がある。

ああ、ただいま」

相棒がこちらに向かって真っ直ぐ走ってくる。
少し手前で踏み切ると、俺に向かって飛び込んできた。
受け入れる態勢も取れないまま、後ろの花畑に倒れこむ。
カランと手にしていた槍が石畳の上に転がった。
咄嗟に受身を取り、衝撃を和らげてから互いの位置を入れ替えれば、相棒の上に覆い被さるような形になる。

「おい、危ないだろうが

注意をしているのに気に留める様子はなく、それどころか何故かその顔は嬉しそうで。
何をするでもなく俺の目を真っ直ぐ見つめていた。
そして静かに目を閉じる。
ラールガーズリーチの病院で同じ光景を見た時の記憶が甦る。

全部終わったら、な。
そう約束していたことを思い出す。

ガントレットを外し、相棒に顔を寄せる。
柔らかい感触が自分の唇に触れた。
もうどれほど触れていなかったのだろう。
唇に、頬に、額に、瞼に。

「随分待たせたな」
「全然平気」

ひとしきり触れて顔を離せば、満足そうに笑う相棒の顔。
身体を起こしてそのまま花畑の中に腰を下ろした。
相棒も起き上がって手甲を外すと、俺の前に膝をついて立つ。
俺の顔を両手で包み込み、ゆっくりと向こうから顔を近づけられる。
同じように俺の顔に触れていく。

うん、ちゃんとエスティニアンだ」

最後に触れられた唇からはほんのりと血の味がする。
倒れた時に付いたのか、相棒の髪には赤色の花弁が付いていた。
それを取り払って立ち上がる。

「行くか」

今やるべきことは互いに終わった。
この場所に留まる理由はもうない。

「どこに?」

相棒が俺を見上げて聞き返す。

「そうだな

何も考えてはいなかった。
転がった槍を拾い、外した装備を装着しながら行き先を探す。

少しばかり、お前と世界でも見に行くか」

半分冗談、半分本気で口にすれば、相棒の目が輝いた。

「どこがいい?」
「お前と行けるならどこにでも」
「それじゃ、行こう!」

指笛を吹き鳴らしたかと思えば、一回り小さいガントレットを拾い、俺の手を引いて宮殿とは逆方向に走り出す。
先にある開けた場所は飛空艇の発着場だろうか。

「どこに?」
「私が見てきたところ、全部案内する!」

先導された場所に姿を見せたのはミドガルズオルム。

「乗って!」

一人用のサドルに2人で乗ろうとするならば、こうするしかない。
俺が先に座り、そして相棒は俺の膝の上に。

「やれやれヒトの子は随分と無茶をさせよるわ
「そう言う割には嬉しそうに見えるが?」
「ミドさんなら大丈夫でしょ!」

全部回るには一体どれだけかかるというのか。
いや、それだけ同じ時を共にできるということ。
今はこうして相棒と共にいられることに感謝を。
羽ばたきの音と共に地面が遠くなっていく。
行き先は相棒に預けて、ギラバニアの空へと飛び立った。