Hizuki
2018-04-22 23:04:57
30628文字
Public FF14
 

黒き竜の果て

【FF14】エス光。3.3~4.0のニーズニャンIF話。いつも以上に捏造設定山盛り仕様。本当に何でも許せる方向け。注意書きをご覧のうえでどうぞ。



新たな土地に着くと辺りを探索しに行きたくなるのは、やはり冒険者の血なのだろう。
四国同盟の拠点となったのは、ギラバニア湖畔地帯のポルタ・プレトリア。
南西にあるもう一つの集落は帝国によって占拠されているようで、どうやらそこに研究所もあるらしい。
ドラヴァニアから戻って軽く下見に行ってみれば、予想通り警備の兵達の姿が見受けられた。
遠目に夜中にもかかわらず明々と光が灯る建物が見える。
あれがきっとその研究所。
場所さえ分かってしまえば、そこに向かうのは簡単なこと。
数日かけて警備のローテーションを洗い出し、見てきた情報から潜入するためのルートを決めた。
そして夜の闇に紛れて抜け出し、もう一度あの研究所へ向かう。
ヤンサで噂を聞いた人間の魂を分離する技術がきっとそこにある。
人目に付きにくい門から中に入り、ルート通りに真っ直ぐ目的地を目指す。
入口の警備に当たっていた帝国兵を気絶させ、懐に持っていた鍵を拝借すると扉を開けて研究所の中に足を踏み入れる。
同じ形をした機材が幾つも並んでいる様は異様としか言いようがない。
そんなことよりもやらなければならないことがある。
本人を見つけて何が何でも技術を提供させる。
それが叶わなくとも、せめて情報くらいは持ち帰りたい。
極力音と気配を消して、辺りの様子を探る。

蛮族の英雄が敵地に単身で乗り込んでくるとは、一体どういう風の吹き回しかな?」

突然研究所の中に男の声が響く。
カストルム・アバニアで聞いた男の声。
恐らくこの男が目的の人物。
自分の存在を気付かれているとなれば、もう身を隠す必要もない。

「そっちから出てきてくれるなんて思わなかった。おかげで探す手間が省けたわ」

立ち上がって堂々と歩けば靴音が跳ね返る。
声が聞こえる方へ足を進めた。

「私を探していたと?」

靴音がもう一つ、自分の音からずれて聞こえてくる。
そして同じタイミングで音が止んだ。

「あなたに用事があって来たのよ、アウルス・マル・アシナさん」

今私の目の前にいる男こそが、探していた人物。
ガレマール帝国の研究者。

「正確にはあなたというよりあなたが研究している技術に用がある、かな」
「ほう」
人間の魂と体を分離する方法があるんだって?」

ピクリとアウルスの眉が動いたのを見逃さなかった。
どうやら噂は本当らしい。

「クックック、これは面白い。我ら帝国に攻め入っておきながらその技術を求めるとは」

高笑いが室内に響く。

「だが、何もなしに使えると思ってはいまいな?」
もちろん。何がお望み?」

やはり素直に協力とはいかないか。

ならば、君の身柄をもらい受けようか。実に研究のし甲斐がありそうだ」

つまり、何かの研究の実験台になれ、ということか。
研究者からしてみれば、絶好の素材だろう。
何となく予想は付いていたし、自分の身で彼を助けられるなら安いもの。
ポケットの中に忍ばせていたリンクパールを鳴らす。
これでこちらの準備は整った。
あとはもう一つの準備をしてもらわなくてはならない。

どうぞ。ただしエオルゼアに敵対するようなことには協力しない。それだけは覚えておいて」

正式に証拠が残るわけではない以上、実際にどんな研究に使われるかなんて分かりはしない。
敵が相手なのだから仮初めの約束だというのは目に見えている。

取引成立だ。さぁ、その人間はどこにいる?」
「ドラヴァニア雲海のドラゴンズエアリーに」

地名を告げられたアウルスの目には困惑の色が見て取れた。

「ドラゴンズエアリーだと?」

皇都イシュガルド。
その街を歩いていた女性のリンクパールが着信を知らせた。
彼女のリンクパールはとある目的のために主から持たされていたもの。
向こうで話し声が聞こえるが、音は遠く内容までは聞き取れない。
程なくして通信は切れたが、彼女にとってはそれだけで十分だった。
主から預かっている荷物の中から封筒を取り出し、身支度を整えると神殿騎士団本部の扉を叩いた。

「失礼、アイメリク卿はいらっしゃるだろうか」
「総長ならば公務でアラミゴに向かわれているが不在の間の対応は私が預かっている。用件を聞こう」

騎士団のコマンドの一人、アンドゥルーがその声に答えた。

「そうでしたか。では、この書類を」

彼女がアンドゥルーに封筒を手渡した。
蝋で封がされた封筒の裏側に差出人の名前はない。
訝しげに封を開けると、中に入っていたのは便箋が一枚と、教皇庁で使用されている青の封筒が入っていた。
便箋を開くとそこにはイシュガルドを救った冒険者の名。
名を見た瞬間、アンドゥルーは同封されていた封筒の内容を察した。

これをどこで?」

自分の目の前にいる人物が只者ではないということを悟る。
問う声は自然と鋭くなる。
アンドゥルーの頭の中をあらゆる推測が巡った。
この書類を持ち得る存在はたった一人。
けれど、持ってきたのは本人ではない。
ならば一体何者か。

「我が主から預かっていたものです。連絡がありましたので、こちらをお持ちしました」
「内容を拝見しても?」

丁寧に三つ折りにされた便箋を示してアンドゥルーが問うと、彼女は静かに首を縦に振る。
その中に認められていたのは冒険者からアイメリク卿に宛てられた手紙だった。
書類を直接持っていけないことへのお詫び、そして『彼』の身を管理してくれたことへの感謝が綴られていた。
アンドゥルーが手紙を読み終えて顔を上げると、女性が羽織っている外套に見覚えのある飾りが付いているのが目に入った。
それは冒険者ギルド公認のリテイナーの証。

「申し遅れました、私は彼女の荷を預かる者」

冒険者のリテイナーが恭しくお辞儀をしたのを見て、アンドゥルーは警戒を解いた。
持ち込まれた書類の正体を知る者は数少ない。
そして彼女はその内容を知っている。

「そうか、『その時』が来たというのか。疑ってしまって申し訳ない」
「いえ、お気になさらず」
「彼女自身が来るかと思っていたが、何か事情があるのだな」
「主は別の準備を整えて現地に向かっているはずです」

彼女の言葉にアンドゥルーが頷く。

「分かった、すぐに手配しよう」
「よろしくお願いします」

訪問者が去ってすぐ、アンドゥルーは同行させる騎士と治療師を選抜し、教皇庁の地下へと向かう。
最奥にある聖堂の扉を開けて中に踏み込むと、そこには鍵のついた棺が安置されていた。
棺を慎重に運び出し、非常用の脱出口に手配していた飛空艇に積み込むとドラヴァニア雲海へと飛んだ。