Hizuki
2018-04-22 23:04:57
30628文字
Public FF14
 

黒き竜の果て

【FF14】エス光。3.3~4.0のニーズニャンIF話。いつも以上に捏造設定山盛り仕様。本当に何でも許せる方向け。注意書きをご覧のうえでどうぞ。



「拠点の側に下りる訳にはいかぬのでな」

そう言ってミドガルズオルムは静かに俺達を崩壊した集落の側に降ろした。
いきなり人前にドラゴンが現れたとあっては混乱を招くのは目に見えている。

「問題ない。すぐそこだろう?」

竜を警戒しているのか魔物の気配も感じられないし、降ろされた場所から既にエーテライトが見えていた。
エオルゼア三国にイシュガルドを加え、四国となった軍事同盟はそこを拠点にしているのだという。
あそこまで行ければもう心配はない。

「そやつのこと、任せたぞ」

ミドガルズオルムの姿が消え、できるだけ平坦な地を選んでエーテライトに向かって歩き出す。
まだ相棒に目覚める様子はない。
安全な場所で早く休ませてやりたい、ただそれだけだった。

「何者だ、止まれ」

拠点の警備に当たっているらしい兵に呼び止められる。
見慣れない色の装束はギラバニアの兵だろうか。

「負傷者がいる」
おい、待てこの人は!誰かアルフィノ様を!」

俺が抱きかかえている相棒に気付いたらしいもう一人の兵から懐かしい名が聞こえた。
また別の兵が走っていくのが見える。
やはりあいつもここにいるのか。
四国というのならきっとあいつも。
灯された炎をぼんやりと見ていると、途端に上層が騒がしくなる。
近づいてくる足音、人影。
炎に照らされてその姿がはっきりと見えた。

「彼女は!?」
「ああ、ちゃんと生きてる。意識はないがな」

連れてきた人物が何者かを問うでもなく、状態を問う凜とした声が発せられた。
脈も呼吸もある。
多少の傷や痣はあるが、すぐに癒えるだろう。
あとは目覚めるのを待つだけ。

「よかった!」

見覚えのある若いエレゼン族が大きく安堵の息を吐いた。
その様子に警備兵達からも張り詰めた空気が消えた。

よう。久し振りだな、アルフィノ」

声をかければ、まるで何か化け物でも見たかのような顔をして、その目を丸くする。

「エ、エスティニアン殿!?病院にいるはずでは!」
「会って早々に随分な挨拶じゃないか」

相棒や氷女と一緒に旅をしていた頃を思い出す。
けれどあの頃よりもしっかりした顔つきになっている。

こいつに借りを返しに来ただけだ」

それ以上は何も聞かず、アルフィノはただ頷いた。

エスティニアン殿も無事でよかった。何はともあれまずは彼女を安全な場所へ。それから戻ってきたことを皆に知らせなければ!」

先導をアルフィノに任せ、その後に続いた。
あいつが戻ってきた、という報せに拠点が沸く。
後方の救護所に案内され、ベッドの上に相棒を寝かせる。
この場でできるのは応急手当程度だという。
夜間は奇襲などの恐れがあるため、翌日ラールガーズリーチという拠点に移送して、それから本格的な治療に入ると説明を受けた。
手当てを治療師に託して救護所を離れる。
人の多いところを避けて階段を下り、外壁の縁に腰を落ち着けるとふぅと息を吐いた。
眼下には先程俺を呼び止めた兵の姿が見えた。
改めてこの場を見回せば各国の盟主にグランドカンパニー所属の兵、そして冒険者とそうそうたる顔触れが勢揃いしている。
またあいつは世界の動乱の渦中に身を置いているのだと知る。

「彼女の側にいなくていいのか?」

ぼんやりと夜に染まった空を眺めていると、背中から声をかけられる。
名を問う必要もない、俺を友と呼んだアイメリクの声。
俺と相棒の間柄を察して、そう言ったのだろう。

「今いても治療の邪魔になるだけだ」
フフ、そうか」

側にいたい、とは思う。
だが、今行ったところで何も自分にできることはないし、むしろ邪魔になるだけでしかない。
それならば専門家に任せるのが道理というもの。

「クローンの動きが止まったのは彼女が救出されたからだったのだな」

俺の横に立ち、アイメリクが言う。
こうして肩を並べるのもいつ振りだろうか。

「どこもかしこも同じタイミングで一斉に崩れ落ちたようだ」
「思った通り、連動していたか」
「そういうことらしい。そして、君も無事に戻って何よりだ」

アイメリクが安心したように息を吐いた。

「あいつのおかげでなったく、まさか帝国の技術を引っ張ってくるとは思わなかった」
「やはりか」

あいつが帝国の技術を使ったのではないかということ、そしてその交換条件として研究所に捕らえられているのではないかということまでは考えていたらしい。
そして奪還に行こうとしたところで、蛮神の力を持ったあいつが現れた、と。

「彼女から手紙は来ていたのだろう?」
「ああ」

病室に残してきたままの荷物のことを思い出す。
きっとあの時にいた神殿騎士団の奴が整理して持ってきてくれたのだろう。
ことある毎にあいつから手紙が届いていた。
何か方法が分かったら連絡する、と言っていたものの、ほぼ定期連絡のように送られてきていた。
届けに来たのはドラヴァニア雲海のあいつを困らせたモーグリ族。
新しい街に着いただの、何を食べただの、何があっただの。
目的のものとはかけ離れていることがほとんどだったが、それを楽しみにしていた自分がいたのも事実だった。

「それどころか助けられるかもしれないと直接言いに来たぞ、あいつ」
彼女らしい」
「どうにかなったからよかったものの、全く何を考えてるんだ

手紙を送るより、転移魔法で直接行ったほうが早い。
きっとそういうことだったのだろう。

「それにしても君も君だ、エスティニアン」
「何がだ?」

アイメリクの声に呆れの色が見える。

「本来ならまだ安静にしていなければならないはずだろう」

そういえば、と思い返す。
病院で意識を取り戻してからは検査三昧だった。
何せ竜から人間の身に戻ったなどという前例は存在するわけがなく、参考にできるようなものはイシュガルドに何もなかった。
俺の状態を確認するという名目でここぞとばかりに様々な情報を集められていた気がしなくもない。
ようやく解放されて一般の病棟に移り、ほっとしたのも束の間。
急に目が覚めたのはその日の深夜のこと。
同時に血が騒ぐのを感じて、何故かそこにあった青い服に袖を通し、すぐさま用意をして窓から飛び出した。
戻ってすぐで以前のようには動けないかと思った身体はそうでもなく、元の自分の身体というのも変な話だが、竜の身に宿る前と感覚は変わらなかった。

「相棒を助けに行くのに理由が要るのか?」
「何かあったら彼女にどう説明するつもりだ?」

俺の口から出たのはドラゴンズエアリーで相棒が俺に言ったことと全く同じ。
アイメリクの言うことも一理ある。
だが。

「何もしないままあいつに何かあってもらっても困る」

ドラゴンズエアリーで元の身体に戻ってすぐの俺は意識が朦朧としていて、あいつには何も言えずじまいだった。
ただ、『もう少しだけ待ってて』とだけは聞こえた。
それがまさかこんなことになろうとは。

まだちゃんと礼も言えてないんだ」
「エスティニアン

自分の身を差し出してまで俺を助けてくれた。
待っているだけなんて、できるはずがない。

君が彼女を案じるように、君を案じる人間がいることは記憶の片隅にでも置いておいてくれ」

ああ、そうか。
アイメリク、と呼びかけた声は別の声でかき消される。

「お二人とも、ここにいたのですね!」
「アルフィノか」

拠点内を駆け回っていたのか、少し息が乱れている。
呼吸を整えて、俺達の様子を見て思うことがあったのか、控えめに問いかける。

もしかして取り込み中でしたか?」
「いや、大丈夫だ。何か問題でも?」

どう答えたものかと俺が言葉を探すよりも先にアイメリクが返事をした。

「問題ではないのですが、治療師の方々がエスティニアン殿を探しています。ひとまず一度診察を受けてほしいと」
「行ってこい」

それはきっとでき得る相棒の手当てが終わったということと同義。
手が空いたから次は自分をということなのだろう。
イシュガルドを抜け出して好き勝手に動いてきた身、ここらで少し大人しくしないと今度こそこいつらに怒られそうだ。
観念して肩をすくめ小さく息を吐く。

アイメリク、アルフィノ」

先程相棒を運んだことで救護所の場所は分かっている。

「迷惑をかけたな」

二人の側を離れて歩き出す。

「ああ、そうだ」

ふとあることを思い出して足を止めた。

「理由がなくなった以上、竜狩りは終いだ。蒼の竜騎士の称号は返上させてもらうぜ」
分かった。近々またゆっくり話を聞かせてくれ」

人間に戻ってから決めていたこと。
もう竜を狩る必要はない。
アイメリクの返事を聞いてから階段を上り、その場所へ向かった。