しくるの納戸
2024-10-05 21:54:37
21050文字
Public 狛日
 
777071

狛日/ss集

狛日/いろんな軸のいろんな小話詰め合わせ。


アイランド狛←日



 窓の向こうから遠く響くさざ波の音は、子守唄のように優しい。日本ではまずお目にかかれない細かな星々まで鮮明に映し出されたプラネタリウムは、今が草木も眠れる真夜中で、そして本来ならば自分たちもとっくに就寝しているべき時間であることを日向たちに知らせている。
 しかし、自室コテージのベッドに座り込む日向には、まだ当分眠気は来そうになかった。それは、心臓を激しく急かす緊張のせいであり、更に言えば、その緊張は今、隣で今日の出来事を楽しそうに語っている存在が原因であった。
 一番最初にパンツを貰った友だちであり、日向が密かに想いを募らせている青年、狛枝凪斗。
「本当、今朝はツイてなかったよね!」
 日向の鼓膜を穏やかに揺さぶる声が隣で絶えず紡がれていて、日向は自らの頬が火照りそうになるのを抑えながら必死に相槌を打つ。
「そういう割には、楽しそうだけどな」
「そりゃそうだよ、ボクのコテージが爆破するだけの不運で、キミと一晩を共に出来るんだからさ」
「その表現はやめろ!」
 わざとやっているのか、俺が鵜呑みにしたらどうするんだよ、内心で頭を抱える日向の葛藤を、狛枝はきっとしらないのだろう。純粋な喜びだけを浮かべた顔で、諸々を堪える日向を見ている。
「ああごめん、やっぱりこんな仲良しみたいな言い方不快だったよねボク、浮かれてるみたいだ」
「そ、それは違うぞ、嫌なんじゃない、俺も、嬉しいから」
優しいなあ、日向クンは」
「い、いいから今日はもう寝るぞ!」
 優しい、と告げる狛枝の声の優しさに、堪えきれなかった頬が一瞬で火照るのを感じて、誤魔化すように声を張り上げた。狛枝は、はーい、とやたらと甘ったるい声を出して、本人の「浮かれている」という言葉が本音であることをあからさまに示してくるから、それすらも恥ずかしくって仕方なかった。
 とっとと寝て、この羞恥を手放してしまおう。そう思った日向は、そこではた、とあることに気がつく。
……そういえば、寝床どうする?」
「ボクは床にでも転がっておくよ」
「それは駄目だ!」
 だが、だからと言って日向が床に眠るのも嫌だし、せいぜい二人がけのソファは眠るには小さすぎる。
 でも、ならば。
 残る可能性にぐるぐると頭を回される日向に、狛枝が控えめに肩を寄せた。元々近かった二人の距離は、日向が振り向けば予想以上に近づいていて、どうにかなってしまいそうだ。
……烏滸がましい提案ではあるんだけどさ、」
 そんな距離で、さっきとは打って変わって随分としおらしい声で、狛枝は続ける。
「その、キミさえ良かったら、同じベッドで、眠ってもいいかな」
「!い、」
「嫌?」
「いい……ぞ」
 この瞬間、不眠が決定した日向を慰めるように、夜半の月が雲から顔を出して、狛枝の姿を美しく照らした。