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るいざき
2024-09-06 03:22:35
120816文字
Public
AC6_ラス6_銀環
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銀環 解√ラスティ+621♀ 🐺🐥
ルビコンの解放者END、その直後のお話。
ルビコン解放戦線の拠点へ合流したふたりは、ルビコニアンの抱える諸問題に巻き込まれていく。
ここに、安息は無い。
⚠️モブあり
⚠️児童虐待表現、精神的切迫、その他暴力あり
Prologue/
鉄錆
1p.
1/
狼は森をみつめる
p2.
2/
窮鳥
p3.
3/
比翼の君
p8.
4/
女王
p14.
5/
片翼
p16.
6/
曙光
p24.
Epilogue/
狼はかごとなる
p28.
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窮鳥
この腕は止まり木たりえるのか。
あの穹を往く白鴉が何故羽を休めぬのか、私は知らぬまま腕を掲げて待ち侘びる。
その翼が私を選んでくれる事を。
彼は──久方ぶりの寝床、質の良い弾力、清潔なシーツ──間借りしたベッドで微睡みからさめた。
身体は鈍重で深呼吸とともにやや呻く。そこかしこの痛みに顔を顰めて、肋をさすってみると少しは和らぐ気がした。ザイレム襲撃の際、艦隊戦を経て撃墜されたのはつい昨日のことで、アドレナリンでやり過ごした傷は医師からしてみれば頭を抱える容態だったらしい。添え木の宛てがわれた右腕は少なくとも一週間はこのまま三角巾に吊られていなければならないらしく、寝起きざまそれらカルテの情報を思い出して溜息をついた。
軽い頭痛
……
は、確かに精神的なものかもしれないが、これは先刻の負傷によるものだろう。
「
……
」
こめかみのあたりに施された丁寧な治療の痕跡を指で撫ぜる。口煩いドクターによって全身の包帯あて布は呪物めいたものに見えてくるが、これだけは愛おしく思える。独立傭兵レイヴンは実は医神だったのでは無いだろうかと思うほど、繊細で思慮深い手当てだった。
さあ、と身を起こす。アラーム10分前に目覚めたラスティは、ゆるめたパイロットスーツの金具を締め直し、寒冷地用にカスタムしたジャケットを羽織る。胸元には未だV.IVのエンブレムが縫い付けられているが、身一つでルビコンの地上へ帰還した彼にはそれ以外に換えがない。
無機質で簡素な部屋は、きっと来客用というような気の利いた個室でないことはすぐに分かった。染み付いた消毒液や薬品の香り、捨て損ねたくずかごに積もる、夥しい数の注射針。
(レイヴン
……
)
強化人間が人道的扱いを受けるかと言えば千差万別である。しかし、かたおもいを寄せる相手ともなれば、境遇の一片を見つける度に切なくなる。
手荷物らしいものは無く、私物は少ない。サイドテーブル代わりのチェストには男物の服数着が畳んで仕舞われている。──かのハンドラーはその猟犬の普段着をひとつとして用意していなかったらしい。この凍土に薄い術着と治療用着圧スーツに膝掛けのみの姿は傍から見ても寒々しかったことを、今でも覚えている。見かねて古着の幾つかを見繕い、武器パーツ納品の際に荷物にしのばせたのは他でもなくこのラスティだ。
上段の引き出しには護身用だろうか。拳銃とマガジンひとつ、いくつかの錠剤
……
開封間も無い精神安定剤のラベルが目に付いた。あとは何かしらの治療キット、メモ紙──筆跡からしてハンドラーのものか──それから
……
。
「
……
。」
自分は何をしているのだろう。戦友の身辺調査をしに来た訳では無いのだ。大事そうに仕舞われているアナログ雑誌はアーキバス刊行のもの。これも古着を贈る際に用意したものだ。何度も読み返したような折りぐせが冊子のフチに刻み込まれているのを見つけた途端に、突然この職業病じみた手つきに後ろめたさを感じた。
拳銃にしてもそうだ。よく磨かれてカドが滑らかになるほど撫で付けたような光沢がある。彼女のプレシャスボックスは、このチェストひとつきりなのだと理解した。
「すまない
……
」
ひとりつぶやいて、引き出しをそっと戻す。
室外はかなり冷え込んでいた。寒冷地の厳寒には比較的慣れているが、戦友は果たしてどうだろうか。
給湯室を借りられれば何か用意しようと、別室にいるであろう戦友を訪ねる。
「レイヴン、起きているか?」
三度ノックし、はて応答がない。たしかに起床予定より幾分か早いが。それとも寝起きは悪い方かと、そっと扉を開けて覗き込む。
……
いない。
「
……
?」
先刻このガレージへ招かれた際には、ここにいると聞いていたのだが。寝台から落ちた毛布が、何とは無しにラスティの胸をざわつかせる。
踵を返して、ある機能を視界上にオーバーレイする。追跡捜査機能のプラグインによって僅かに浮かび上がる足跡痕は、管制室を目指してフラフラとした軌道を描き出した。微かな皮脂残留の酸化具合から数刻も前に起き出しているようだ。
斯くして半ば開かれたままの管制室に辿り着く。ガレージ内に冷えて滞留する風を吹き込んで扉が軋み揺れる。夜と夜明けの狭間、最も暗い夜闇に沈む室内に、何か黒い塊がある。
「
……
!」
鉄板床に転がり眠る彼女を見つけた。男物のコートを握り締め、額を擦り付けるように眠る様は、丸まる動物のようだった。
不思議と管制室内の空調は作動しており、いやむしろかなり高く設定された温風がなんとか少女レイヴンの肩を冷やさずにいた。
何とも奇妙な光景だが
……
しかし、その床にいくつかの赤黒い
しみ
を見つけ。ああと溜息をついた。
ハンドラーは集積地点でスネイルの策に落ち、再教育センターへ更迭されたと聞く。現時点での収容者回収のリストには、彼とおぼしき人物は見つけられなかったが
……
。
「
……
ぅ」
もぞ、と鼻面を埋める少女の傍に腰を下ろし、コートを肩まで引き上げる。
「
……
うぉる、たー
……
。621は
……
大丈夫、です
……
」
──大丈夫です。大丈夫です。
なんども彼女が口にする言葉だ。電子音声を介さない寝言はか細い。
「戦友」
起こすべきか、それとも。あと数分で起床予定時刻となる。
……
だが。
「
……
あと5分、かな」
コートの裾から覗くつま先を覆うように、自らのジャケットを着せかけた。
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