ゆの
2024-07-13 16:43:51
57084文字
Public あつむとあの子
 
639508

かけらの紡ぎ

あつむとあの子の本編連載 (サイト掲載:2023/08/19~2025/3/23完結)
隣の席の宮くんとゆっくり進む両片思いの話。サイト掲載済。
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!夢主の設定が少し強めです。苦手な方はご注意ください。

4/4 17~21話(17~21ページ目)UP !完結



16


 宮くんがリンクに来てくれたあの日以降なんとなく、お互い忙しくなったせいか直接顔をあわせて話すことが今までよりも少なくなった気がする。それでも遠いなあとかもっと一緒に居たいとかは思っていなかった。
 たぶん、メッセージや電話のやりとりがこれまでよりも多くなったから。数が増えたというよりはたぶん中身が今までよりも濃くなったから。もっとずっと、宮くんを知って近くなったような気がしたからなんやろうなあとふと思った。


あかり、最近どうなん?」
「何が?」
「何って、ミヤアツと! なんかあったやろ?」
「なんかって何、なんもないよ?」
「はぁ? あんたら付き合うてるんちゃうの?」

 嘘やろなんで? と本気で呆れた顔をしてあやちゃんが天を仰ぐ。嘘やろってそれは私のセリフなんやけど。あとちょっと声が大きいです。誰が聞いてるかわからないからもうちょっと抑えてほしい。
 それにしてもどこからそんな話になってるんだろうと聞いてみたら何となくそう思ったらしい。曰く〝なんかそういう雰囲気に見える〟とか。

「なんそれ……いつどこでそう見えたん……
「いつって、いっつもやんかあんたら」
「えっ」
……無自覚やったん?」

 あやちゃんから二回目の嘘やろが出て崩れ落ちそうになった。みんなでよかったなぁって言うてたんやけど、とがっかりした顔で言われてしまって言葉を失ってしまった。いっつもて。ここ最近の一日を頭の中で振り返ってみたけれど、心当たりがなさすぎる。そう言えばでもさ、とあやちゃんが小さくため息をつく。

「心当たり無いていうてもさ、あんたら付き合っとるようなもんちゃう?」
「そっ……んなことはない……と思う……
「実際好きでもない相手に毎日連絡する?」

 あかりからちゃんと言うたら、案外応えてくれるんちゃう? と教室の向こうに視線をやりながらそう言った。つられてその視線を追うように向けると、ちょうどこっちを向いた宮くんと目が合った。一瞬目を丸くして、そして笑う。ああやって笑う顔が好きやなあとつられて笑えばその様子を見ていたあやちゃんが、あんたら、そういうところやと思うで……と言いながら呆れたようにつぶやいた。
 どういう意味? と聞いてみたけど分からんならええわ、と頭を撫でられた。



……真嶋? 寝てもうた?」
……っごめん! 起きとる!」
「どうしたん? 疲れとる?」
「ううん、だいじょぶ……

 今シーズンありがたくも枠を獲得できたグランプリ、ひとまずひとつを終えてひと息つきましょうと行きたいところだったけれど、またすぐにもうひとつが迫っていてのんびりはしていられない状況だ。現に今ちょっとぼんやり、というか一瞬睡魔に襲われかけた。そのくらい追い込んだ練習が続いている。そんな中でもこうして話をしたりしているのが、いつも通りを感じられてありがたたかった。
 同じ頃宮くんも春高予選があったりで忙しそうにしていたけれど、バレーの話をしている時はすごく楽しそうで私も頑張らなきゃなあと思う。宮くん見てると、なんかやらなあかんなぁって思うねんなぁと言ったらちょっと呆れた声で〝お前に言われたない〟なんて言うからふたりで笑っていたのはついさっきのことだ。
 気合を入れすぎて空回るみたいなことはない。シーズン最初の時のように何もかも上手くいかないということも今はなかった。試合の時の心構えとかやりやすいルーティンが少しずつ分かってきて落とし込めてきたからというのもあるんだと思うけれど、なにより気の持ちようってすごいんやなと思う。と同時に、もっと欲しがってしまう自分も心の中に居て少しだけそれが怖かった。昼間あやちゃんから聞かされた話も相まって、余計に。
 今はまだ、もう少しだけこのままでいさせてほしい。けれどもっとよくばりになりたい。宮くんはどう思っていか知りたい。もしも同じ気持ちでいてくれるなら、私が今こうして抱えているこの気持ちをちゃんと伝えたら笑わずに、呆れずに聞いてくれるのだろうか。けれど。

……せや」
「どうしたん?」

 急に声色が凪ぐのを感じてつられて姿勢を正す。あんな、と言った後宮くんは黙ってしまって声をかけるべきか迷いながら側にあったクッションを手繰り寄せてぎゅっと抱きかかえた。まさか。昼間あんな話をしていたせいか、それとも今話しながらこんなことを考えていたせいか。まるで心を読まれてしまったみたいだと思ったら急に心臓が早鐘を打つようにバクバクと鳴る。落ち着け、落ち着け、と思いながら宮くんに気付かれないように深く息を吸って、ゆっくり吐いた。

「俺な、ユースの合宿選ばれてん」
……ユース……、えっ⁈」
「まあ一応、代表候補やんな」

 まだユースのやけどな、と言って笑ったのがわかった。その声から嬉しさが伝わってくるし、本当にすごいと思う。そして。

「すごいやん……! えっ、嬉しい……!」
「え、なんで、てかユースやって……
「カテゴリがちゃうだけって言うたの、宮くんやん!」
「はぁ? なん、そんなこと……
「言うたよ、前に私にそう言うた!」

 あの時宮くんに形がどうあれすごいものはすごいのだと、そう言われて素直に嬉しいと思った。きっとそう感じるのは私だけじゃなくて、宮くんだって同じだと思う。だって本当にすごいと思ったから。嬉しいと思ったから。だからこれはちゃんと伝えなきゃならないと、抱きしめていたクッションを膝から降ろして改まる。

「宮くん、おめでとう」
……おん、ありがと」
「がんばって……、がんばろうね」
「せやな、がんばろ」

 さっきの緊張はどこへやら、けれど違う意味でドキドキしている。一度だけ、小さな画面で見ただけだったけれど宮くんがバレーをしている姿は本当に楽しそうできらきらしていた。大変なこともきっとあるだろうと思うけれどそれ以上に、もっと楽しいと思えるといいなとそんなことを考える。
 電話の向こう、なんとなく宮くんのご機嫌な様子が伝わるような気がして思わず笑い声をもらしてしまったら、負けへんぞと楽し気に宣戦布告されていよいよ声を出して笑ってしまった。きっとさっきの緊張がとけたせいでちょっとおかしくなってるのかもしれない。そんなことを思いながら私も負けへんからねと返したところでそろそろ寝ようかとなって電話を切った。
 ホームに戻った画面を見つめながら、しみじみとすごいなあとひとり呟いた。嬉しくて眠れそうにない。ステージは違うけれど、一緒に頑張りたい。そんなことを思いながら目を閉じた。