02.止まらぬ歯車
やっぱり、ここの話はどうにもできないのか。
二日前に女子アナウンサー、山野真由美が変死した。
きっと明日の朝には、小西早紀が変死する。
どうにもできない。ここの部分は、何周しても絶対に変わらない、決められたストーリー。
わかってはいた、どうせそうなのだろうと、予想は出来ていたけれども。
お前が何をしようと何を望もうと、世界はなにも変わらないのだと、そう言われている気がした。
*
殺すつもりなんてなかった。だって好きだったから。
さっぱりしたショートカット、変に飾らず清潔感のある服装、綺麗に引かれた鮮やかなルージュ。はきはきとしてよく通る口調、声。コメントから度々伺えた真面目さ、聡明さ。落ち着きのある姿。時折見せる笑顔、それからちらりと覗く白い歯。
単に女子アナ好きと言うとミーハーみたいに思われるかもしれないが、自分にとっての彼女はもはや結婚相手にしたい理想像と言ってもいいくらいだった。その彼女が不倫なんてふしだらなことをするはずがなかった。
だから、恐怖と絶望の塗りたくられた酷い顔で落ちていったあの女は、僕が好きだった山野真由美ではない。
殺すつもりなんてなかった。ただ、少し自棄になっていただけだった。
生田目の奴、真由美と不倫しておきながら、今度は女子高生と親密になろうっていうのか。議員秘書の肩書きってそんなに良いものか。水戸黄門の印籠みたいにそれがあればどんな女も靡くっていうのなら、この上なくクソみたいな話だな。どうせここいらの女なんて金や地位さえあれば簡単に股開くんだろ。クソが。
世の中、あまりに不公平だ。ほんの少しのミスでこんなド田舎に飛ばされてクソつまんねー仕事やらされてる上に傷心中の可哀想な僕にだって、ちょっとくらい良いことがあってもいいんじゃないの。
だけど、良いことどころか平手打ちお見舞いされたし、そんなあまーい夢と希望すらもすっぱり捨てるしかなかった。
世の中クソだな。
特に女なんて。
『女難の相、が、出てますね』
不意に脳裏を掠めたフレーズ。
暫くの間はなるべく一人で女性に関わらないようにしたほうが。そう言う少女の顔が、一瞬遅れてぼんやり浮かび上がる。あの時のあの子、どんな顔してたっけ。段々と頭の中の映像がクリアになってくる。戸惑いを含んだ声色、強張った唇、ほんの少し下がった眉、やや下方に逸らされ、伏せられた瞳。
まるでおそるおそる、こちらの様子を窺っているような。
「
…………………………………」
もしかして。
もしかして。
そう思ったら、生まれた疑念はもうとどまることを知らなかった。
<了>
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