「ほう、このカツサンドはメニューで見たイメージよりはるかに大きいな。クリームソーダまで頼むのは無茶だったかもしれない
…ヒルマジュンくん、本当に食べないのかい?」
メフィラスの問い掛けにジュンは無言で頷く。その視線はまっすぐに相手を捉えている。
「おじさん。」
「ヒルマジュンくん。何だい?」
「どうやって人間と怪獣が仲良く暮らせる星にするの?」
「ヒルマジュンくん、簡単なことです。私はこの地球にある植物の種を蒔きました。その植物が作る薬をこの星全ての原生生物に注射します。そうすると【みんな】が【同じ思考】になるのですよ。」
「みんなが同じ
…。」
「ヒルマジュンくん、みんなが同じことを考えるのなら生存権を争うこともなく、一方がもう一方に命を奪われることもなく、みんな仲良く暮らせると思いませんか?」
メフィラスは再び左手でシャツの襟を直しながら静かに語りかけ、カツサンドを頬張った。
〈防衛隊のことを訊いてきたのはこういうことか
…?いやそれよりこの男は出まかせを言っているだけだぞジュン!早く逃げてくれ!〉
【そこにいる】のに【そこにいない】父親の必死の叫びは息子に届いていない。ジュンは出されたお冷にも手をつけずに考えていた。
〈パパ、ママ、友達、怪獣、みんな、同じ
…?〉
ジュンは家族、友達、すれ違った人、怪獣たちがみんな同じ顔、同じ表情をして同じ行動をしている光景を想像した。そしてジュンの脳裏にアラタが手紙に書いた【おれはじゆうにいきる!】の文字がはっきりと蘇った。
「ヒルマジュンくん、私に地球をくれると言ってくれますよね?」
「あげない。」
「ヒルマジュンくん?」
「地球はあげない。おじさんの言うことは何か違うと思う。ぼくも【じゆう】に生きたい。」
「自由
…………。」
メフィラスの口が歪んだ。
「お待たせしました。デザートのクリームソーダでございます。」
女性の店員がクリームソーダを持って現れた
…が突然メフィラスの右手を強く握り締める。
「
…!?」
痛みと驚きでメフィラスの指先が緩む。すると何もないはずの壁から
…いや正確には壁の前からピシッと音がした。
「失礼しましたぁ♡どう見ても保護者ではない大人が児童を連れ歩いているのはあまりにも不審でしたので。」
爽やかな営業スマイルからサッと氷のような冷たい視線をメフィラスに浴びせる栗色の髪の店員は───
「エミ!」

壁の前の空間がガラスのように割れ、その中から拘束が解かれたゲントが現れた。
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