地球防衛隊日本支部教江野基地。ここ最近月光怪獣デルタンダルFが群れをなして飛び回る事態が続出しており、特殊怪獣対応分遣隊SKaRDは警戒体勢に入っていた。今日の任務が終わった後でも各隊員は後処理に追われている。隊長のヒルマゲントもまた連日の出動に疲労を感じていた。
「───お疲れ様です、ヒルマゲント隊長。」
不意にかけられた聞き覚えのない声に気づいた時にゲントの目の前に広がっていたのは灰色の空間だった。これは何だと思うゲントの前に濃いグレーのスーツを身に纏った男が現れ、小さな紙を差し出した。
「失礼、私はこういう者です。ヒルマゲント隊長。」
「種蒔く人 メフィラス
…?」
「今日は貴方に報告をしに参りました。ヒルマゲント隊長。」
「報告
…?」
「貴方のご長男ヒルマジュンくんにお願いをしました。地球をあげますと言ってくれないかと。」
「!?」

「この星では子供
…成長期の地球人の意志はさして尊重されないと伺っております。そのため保護者の貴方には知らせておかなければと、ヒルマゲント隊長。」
「さっきから一体何を
…?」
「しかしながら地球の未来を担っているのはその子供たちではありませんか。ならば地球の運命は彼らにこそ任せるべきだと思いませんか?ヒルマゲント隊長。」
「勝手なことを言って
…」
「貴方は!」
メフィラスはシャツの襟のヨレを直しながら声を荒げた。
「自分の息子のことを何でもわかっているとでもいうつもりか!山に行こう、釣りをしよう、それらは全て貴方がやりたいことではないのか!ジュンくんが本当にそれらを望んでいると思うのか!彼に理想の子供の姿を押し付けているだけではないのか!ヒルマゲント隊長!」
「
…問題はそこじゃない
…ジュンには手を
…」
出すな、と続けようとした時にゲント目の前にあったのは鳩が豆鉄砲を喰らったようなナグラテルアキ副隊長の顔だった。
「
…ゲント隊長
…?突然大声を出してどうされましたか
…?」
「えっ?ああ?えーと
…。」
さっき見ていたのは夢だったのか
…?とゲントは困惑する。
「出動が続いてますからゲント隊長お疲れなんと違います?」
バンドウヤスノブが苦笑いしている。
「ゲント隊長、休める時には休んだ方が
…。」
ミナミアンリは心配そうにゲントを見つめる。
「いや!大丈夫!俺は大丈夫だから!みんなこそちゃんと休───」
そこまで言った時にゲントは胸のポケットに何かが入っていることに気づいた。
「えー
…ちょっとトイレ」
そう言って席を立ったゲントの姿をアオベエミは無言で見つめていた。
「あれ、パパ?これから帰るの?」
ゲントが自宅に電話をかけると妻のヒルマサトコが嬉しそうな声で答えた。
「あー
…ごめん
…今日も帰れないんだ
…ジュンはどうしてるかな?」
「もう10時前よ?とっくに寝ちゃってる。
…そうだな、塾から帰ってきた時にちょっとぼんやりしてたかも
…。」
「
…そうか、いや、何もないならいいんだ。ごめん、帰れる時にはまた連絡する。」
ロッカー室で携帯を切った後ゲントは胸のポケットに入っていた紙を取り出した。そこには【種蒔く人 メフィラス】と書かれていた。
ジュンは部屋のベッドに座り眠ることなく窓の向こうの夜空を見上げていた。そこにはガヴァドンの形をした星座が静かな光を放っていた。
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