黒竹
2022-05-30 22:11:18
32290文字
Public スタリラ
 

黄金の地平 銀の地図

【スタリラ】【晶栞】


11

 一房だけ跳ねた前髪を揺らしながら生徒会室のドアを開けると、おなじみの生徒会長がソファに腰かけていた。ドアが開く音で気づいたか、こちらを振り返り、「しぃ」と立てた人差し指を唇に当てる。
 言われたとおり音を立てないように入ると、ソファの背もたれで隠れていた座面、そこに横たわる少女の姿があった。その頭は晶の膝に乗っている。
「なにしてるの」
 公共の場ですけど、ここ。
 皮肉を知ってか知らずか、晶はひどく穏やかな笑みを崩さないまま、そっと少女の髪を撫でた。
「私が頼んだんだ。昨日少し話し込んでしまったせいで寝不足だったからな」
「あのねえ、生徒会長自ら生徒の体調管理を邪魔してどうするの。体調管理は健康的な食事と適度な睡眠から、だよ」
「分かっている。このような不手際は二度としない」
「も〜、結局ミチルの心配してたとおりになってるし。勘弁してよ、晶」
「そう言うな。今日だけだ。明日からまた、完璧な白金の君 フラウ・プラティーンに戻るさ」
「だといいけど」
 戻らなかったらお説教だ、と心の中で決意するミチル。
「心配、か。ミチルは少々心配性がすぎると思うがな」
「晶が楽観視しすぎなんだよ。いい? このメンバーでやるエリュシオンは一回きり、加えて、ミチルたちはこれが最後のエリュシオンなんだよ。絶対に失敗は許されない。心配に心配を重ねたって、やりすぎなんてことはないよ」
「ああ、お前がそうだから心強いよ」
 晶が小さく喉を鳴らす。その笑声は絶対の信頼から来るものだ。
「昨日から、不思議なほど爽快な気分なんだ」
「ん?」
「お前は私に守るべきものが増えることを危惧していたようだが、私としては、守るものが増えた途端、ひどく心地が良くて、しかし思考はクリアだ。こんな状態に今までなったことがない」
 その表情に嘘はない。それは、王の顔。獅子の顔である。
 獅子はより多くの個体を率いる者が強い。
 獅子の王なら、なおさらだ。
「どこまでも行けそうな気分なんだ」
 愛しい少女を膝に乗せ、生涯の友を見上げて、王は言う。
「お前は常に私の前にいろ。お前がえがく先に、私の進む道がある」
「晶……
 それは。
 それは、鳳ミチルが、ずっとずっと、望んでいたことだ。
「もちろんだよ、晶」
 八年前と変わらぬ視線が、鳳ミチルを包む。
「さあ、次は何をする? 我が戦友 フラウ・ザフィーア
「そうだね、何をしようか、我が戦友 フラウ・プラティーン
 ワクワクする。
 明日からも、楽しくなりそうだ。