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八上
2026-03-17 17:22:38
16185文字
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鬼の打掛
夜昂と玖寂の話。夜昂の因習実家関連の決着話(予定)
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■仕事の終わり
「鶴の一声だよ」
天槻・敬悟は氷とブランデーの入ったグラスを傾けた。カラン、と涼やかな音が鳴った。
「うちの年寄りが、夜昂を受け入れていいと言い出した。分家どもはもう口も手も出せない」
俺も、とグラスを掴む彼の手に力が籠る。彼には彼なりの葛藤があるのだろう。
「だから、俺からの仕事もこれで終わりだ。八上・玖寂」
「玖寂さん」
端末で呼び出した鳳仙寺・夜昂(f16389)は、素直に約束の時間に約束の場所にやって来た。彼の姿を己が目で確認した八上・玖寂(f00033)は肩を竦めた。
「すみませんね、急にお呼び立てして」
「いや、いいんすけど
……
珍しいなと思って。何?」
首を傾げる夜昂に、玖寂は目を細めた。
「僕の雇用が終わるので、最後に、と思いまして」
「雇用って
……
あれ? 殺し屋から守ってくれたやつ?」
誰も彼も、理由はさっぱり教えてくれなかったが、夜昂はしばらく殺し屋に狙われていた。それを、『誰か』に雇われて夜昂を守っていたのが八上玖寂だった。その雇用が終わるということは。
「
……
俺に死ねってことか?」
「いいえ」
玖寂は普段通りの営業用笑顔だった。
「ようやくお迎えが来たということです」
そこで夜昂は、背後に気配を感じた。ばっと振り返れば、そこには見知らぬ黒服の男が複数と、黒塗りの車が数台。
夜昂の価値観で言えば、まず真っ当な集団ではない。夜昂が助けを求めるように玖寂を見た。が、玖寂は表情ひとつ、指一本として動かさない。思わず後ずさると、その肩を玖寂に掴まれた。
黒服のうちの一人が夜昂と玖寂に近付いてきた。
「遅参をお許しください。お迎えに上がりました、若様」
「ッ、説明しろよ!」
夜昂が玖寂に掴み掛かる。が、軽くいなされ、却って黒服の方へ押し出された。
「あんたは、あんたはいつもそうだ、俺に何も説明しない」
「説明はその人たちにしてもらってください。僕の契約外なので」
「~~~~ッ!」
黒服に後ろ手に押さえられた夜昂は、捨て台詞のように吼えた。
「死ねって言うのと何が違うんだよ!」
「
……
」
夜昂が車に押し込まれるところを、そして車が走り去っていくところを、玖寂は見ていた。
「
……
死ね、か」
玖寂の白い手袋に覆われた指に、夜昂の茶味がかった長い後ろ髪が一本絡んでいた。
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