八上
2026-03-17 17:22:38
16185文字
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鬼の打掛

夜昂と玖寂の話。夜昂の因習実家関連の決着話(予定)





 ――帯から、鬼女が消えていた。
 馬鹿な、そんなわけはない。そんな事が有り得るはずがない。天槻の祖、金翠山の鬼女が祓われることなど有り得ない。今まで誰もそんなことは出来なかったのだから。
 天槻兄妹の大伯母――天槻・弥貴子はえも言われぬ焦燥に取り憑かれていた。
 ――あの敬悟の息子に、端女が産んだ子供に、そんなことが出来るはずがない!
 昼間の、勝利を確信して驕っていた弥貴子は気づかなかった。自身の帯に夜昂の髪の毛が仕込まれていることに。
 今の、怒りと困惑が混ざった、表現の出来ない感情が頭に満ちている弥貴子は気づかなかった。
 誰もが寝静まった深夜の、背後の障子に、鬼の影が映ったことに。

 夜昂の髪の毛を目印に山を下った鬼女が、己の信奉者を連れて行くべく牙を剥いた。