ユキ
2026-03-02 13:48:45
12513文字
Public 🌲🎏
 

🌲誕SSまとめ

こちらのワードパレット(https://x.com/torinaxx/status/2020069268432568568?s=46 )をお借りして🌲🎏ssを書かせていただきました
設定は違いますが、全部🌲の誕生日のお話です


7.『陽炎』(現パロ/6の続き)

逃げていく
強い力で
隠しきれない

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チピチピと鳥の鳴き声が窓の外から聞こえてくる
ヒヤリとした肌寒さに腕の中にある温かさに擦り寄ってほぅと息を吐いた
パリパリと張り付いているようなまぶたを開くと、まだ薄暗い部屋の中に外から光が差し込んでキラキラと埃が光っている
小さく呻くような声が腕の中から聞こえて視線を落とすと、ぎゅっと眉間に皺を寄せてからゆっくりと鯉登が目を開いた

「おはよ」
「ぁあ……おは」
びくりと逃げていくように身体を遠ざけようとする鯉登の身体を強い力で引き止めて引き寄せる
暴れられないように腕ごと上半身を抱きすくめて、足も抑えるように絡める。しばらくじたばたと動かしていた身体が諦めたように大人しくなってからほんの少しだけ身体を離して顔を覗き込もうとするとそんなに顔が見られたくないのか胸に顔をぎゅっと押し付けてきた
それでも髪の隙間から覗く耳と首が隠しきれないほど真っ赤に染まっていて、ついうっかり「かわいい……」と本音が漏れてしまった
その言葉にどすりと器用に抑え込まれた腕で脇腹を殴られる。そんな行動すら今の俺には可愛くてたまらなくて、すりすりと頭に頬を擦り寄せる

「ね、鯉登」
…………なんだ」
掠れた声で、それでもちゃんと声を返してくれる律儀さが好ましくてふふっと笑みがこぼれる

「昨日さ、何してもいいって言ってたよね」
………………しらない」
そんな頑なな態度を取っていても、いつもとは違うそんな鯉登の微笑ましさすら感じる様子ににやけてしまう

「えぇー、アンナコトまでしておいてそれはないでしょ――意気地無しだなぁ」
…………はぁ? 」
そう、浮かれすぎて調子に乗ってしまった
低くドスの効いた声にやばい思った瞬間、さっきまで大人しかった身体がするりと腕の中から抜け出して思い切り足を蹴り付けられた
ベンケイの泣き所を狙われて、足を抱えて悶えている俺ので立ち上がった鯉登がじろりと睨んでくるのを涙目で見上げる

「あ、あー鯉登さん……えっとその、ごめ」
「杉元佐一」
「はい」
まだジンジンと足は痛むけれど、座れと顎をしゃくられて慌てて正座した俺の前で仁王立ちになった鯉登からもう一度名前を呼ばれて恐る恐る見上げる

「誕生日おめでとう」
…………え、あ、ありがと」
思いがけない言葉に反射的に返せば、小さく頷いた鯉登がそのまま険しい顔で黙り込む。薄暗かった部屋の中が本格的に昇り始めた太陽に照らされて明るくなった頃、ようやく鯉登が口を開いた

「お前のことが好きだ」
………………えっ?! 」
じゃ、とそのまま踵を返して部屋を出ていこうとする鯉登を慌てて追いかけようとしたら、痺れた足がもつれて思い切りコケた
そんな俺を見て思わずといったように吹き出した鯉登がそれでも足を止めずに部屋を出ていこうとするのをずりずりと身体を引きずって追いかける
とうとうたどり着いた玄関の扉を開いた鯉登が振り向いて鮮やかに笑う

「10時に駅前で集合だ……最高の誕生日にしてやるから楽しみにしておけ」
…………はい」
朝早いからか静かに閉められた扉をしばらく見つめてから勢いよく立ち上がる
バタバタと身支度をしながら、叫び出しそうになる口を手で押さえて、どんな格好で行けばいいんだと、頭を抱えながらまずは風呂へと足を向ける

三月一日午前七時
気合を入れて向かった駅前に、花束を抱えた鯉登が立っているのを見つけて崩れ落ちるまであと三時間