「神道の神々は夜に出入りや移動の儀式が執り行われることがある」
俺達には感知できないが、俺達の世界からも観測や認識がしやすいところまで近付いたり、声が大きくなったり、振り回す手足が際どい所に来ていたりしていて、その相手の仕方のわかる連中が神職で、今夜もその仕事をしているのかも
まあよくわからんが、とは二年参りに出た二人連れの片方であるヒュンケルだった。
「二年分の御利益がある」などという謳い文句は鼻であしらう、しかし祝祭日の昼間の混雑にもてあそばれるのは本意でないラーハルトが結局二礼二拍手一礼した後やはり祝祭の熱気と自分は関わりの無い事であるかのように腐すので。
「まあそう言うな、何なら今夜この社の主たちに聞かれているかもしれんのだぞ」と銀髪の青年はこともあろうに友を脅かす、嘗て
―――前の世か、彼らが共有する奇妙な夢の中で、地下の亡者たちの王か領主であった彼は、いまも夜は自分の領分であるかのように、いたずらっぽく。
そんな友の、「嘗て」時折見せた重すぎる業が今は彼を苦しめてはいない事への安堵と、あの苦しみに耐える様まで含めていとおしかったのだと思い返す「元」半魔は、
なあに今夜は日の出前のフェーン現象が予報されている、寒風が吹きすさびだした時が見ものだと今は待つことにする。
思い出す。
共に旅に出た朝の友の姿を。
新しい朝に凍てつく空気に澄み渡る空に、吹き下ろした風は彼の銀色の髪をめちゃくちゃに乱し、両の目から涙をはらはらと零させて
なんて気持ちいい夜明けだろう日の出だろうラーハルト、これから何か素晴らしいものが始まる光だ
うんだから感動はしているが泣くほどじゃない、寒さで自律神経がちょっと壊れただけだ、台無しな事態になる前に鼻紙をくれ
そんな何もかも纏めてが愛しかったから、今も結局のところはそうなのだと
お題『日の出』
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