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史加
2025-12-19 12:28:25
53658文字
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str(ファイモス)
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さいごのばんさん
ファイモス/転生×現代×学パロ/完結した物語を本棚にしまうまでのお話
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「もしも明日世界が終わるとして、最後にどう過ごすのかを選べるとしたら、君は何がしたい?」
いつ訪れるかわからぬ戦いのときに備えて英気を養うための場において、それはずいぶんと相応しくない話題のように思えた。
ただの世間話のつもりなのだろう。男は難しい表情をするでもなく、メデイモスが用意した食事をせっせと口に運び、噛み応えのあるそれをよく咀嚼しながら、問いの答えを待っている。消化に悪そうな話を持ち出しておきながらずいぶんと呑気なものだ。呆れそうになったが、変に眉間にしわを寄せて考え込んでいたり、ひとりで何かを抱えて思い悩んでいるよりはマシかと思い直して、羊乳を混ぜたザクロジュースを飲む。
「最後、か」
たらればの話など馬鹿馬鹿しいと一蹴したとて、男は唇を尖らせて少しうるさくするだけでそれ以上は何もないだろう。くだらぬことを考えている暇があるのなら、先日暗黒の潮の造物との戦いで不覚を取ったことを反省し、鍛錬に励めと言ってやりたい気持ちもある。だが、目の前の男が今日も朝早くからトレーニングに打ち込むあまり、朝食をうっかり忘れそうになっていたことも知っている。少なくともこの男に関しては、必要以上に追い詰めていいことなど何ひとつない。ならばジュースとともに飲み込めるものは飲み込んでしまったほうがいいし、他愛もない話題に乗ってやるのも悪くないだろう。
口の中の液体をじっくりと味わうふりをして熟考したメデイモスは、男を見た。空を映す薄氷のようなひとみには、この世界が待ち望む黎明の紋がしかと刻まれている。メデイモスが何と答えるのか気になっているらしく、好奇心を滲ませているのがあどけなく見えて面白い。
その目が戦場で闘志をみなぎらせてぎらぎらと光るときの色も、守れなかったものたちを見つめて静かに伏せられたときの色も、はるか遠い故郷に思い馳せてゆるく細められているときの色も、並々ならぬ熱情を秘めて真っ直ぐとメデイモスを射抜くときの色も、すべて知っている。万華鏡のように色を変える目はよく回る口以上に雄弁で正直だ。その色のすべてを好ましく想っているし、変わらぬままであればいいとひそやかに願っている。
願っているからこそ、もし世界が終わりを迎えるとき、己がなすべきことを選べるのだとしたら。
「
……
そうだな。俺は
――――
」
メデイモスの紡ぐ答えに、男は何と言ったのだったか。
どのような表情をしたのだったか。
それは物語として残すにはあまりにも取るに足らない内容だ。注釈として書き添える価値すらない。
だが。だからこそ。
消え去ることも出来ない、ひとひらの余燼となったのだろう。
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