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史加
2025-12-19 12:28:25
53658文字
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str(ファイモス)
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さいごのばんさん
ファイモス/転生×現代×学パロ/完結した物語を本棚にしまうまでのお話
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「もしも明日世界が終わるとして、最後にどう過ごすのかを選べるとしたら、君は何がしたい?」
問いかけに、メデイモスはこう答えた。
「
……
そうだな。お前と他愛のない話をしながら食事をして、最後を迎えたいと思う」
それは紛争を背負う神として、あるいはひとつの都市国家の王として君臨する者が抱くべき願いではないだろう。
だが、世界が終わるその日に、自らの役目も立場も何ひとつ気にすることなく、我欲を優先して選べるというのなら、最後は目の前の男と一緒にいたいと思った。
いつかの輪廻で彼がメデイモスに再創世を見届けてもらうことを願い、ともに創世の渦心へと至ったように、メデイモスも彼とともにこの世の終わりを見届けたいと思ったのだ。
「ちょっと意外だな。でも」
答えを聞いた救世主は、少年のように破顔する。
「僕も、君と一緒に最後を迎えたいと思うよ」
重なった願いは、世界にとっては本当に他愛のない、取るに足らないものだったけれど。
神となるより前に人間であったふたりにとっては、そう簡単に無かったことには出来ない、大切な想いだった。
三三五五〇三三七冊の蔵書を抱える広大な図書館にて、過去と未来が無事に切り離される。分かたれた現世の己がどうなるかは未知数だが、メデイモスに出来るのは「ファイノン」と「モーディス」の迎える明日が優しいものであることを祈り、せめてその明日が悪意ある者によって書き換えられ、失われたりなどしないよう守ることだけだ。
此処は紡がれた物語の最終防衛線、つまり、旧き世界の果てとなる。皆が西風の向こうへと旅立ち、明日を掴んだ中で、過去の残響に過ぎない前世の己は在るべき場所に在るものを守る。
最後の我儘も叶えたから、後悔など何ひとつない。
これより先は、独りで
――
「君だけ我儘を叶えるなんてずるいじゃないか」
目を閉じ、決意を固めるメデイモスの耳に、聞き覚えのある声が届いた。
はっとして目を開ける。本棚の群れを背に、ひとりの男が立っていた。白銀の髪がカンテラの光を受けて淡く輝き、青いひとみがメデイモスをどこか恨めしそうに、困ったように見つめている。
何故、と問おうとして、けれどそれが愚問であることに気付き、メデイモスは開きかけた口を閉ざした。
ここは現世の己の図書館とリンクしていた場所、すなわちメデイモスの図書館だ。そこに紡がれた物語を収蔵しているに過ぎない。戸を開けて立ち入る資格を与えたのは、他でもない自分自身である。
かつて世を背負った男は、静かにメデイモスへと歩み寄る。そうして頬に触れ、かすかに笑ってみせた。
「君だけのものじゃない。僕と君の我儘だろ?」
男の手のひらの熱が、メデイモスに伝わってくる。かつて怒りの炎で壊滅の星神に傷をつけたとは思えぬ、穏やかで優しい温度だ。
愛に満ちたその温もりと、どうしようもない願いへの執着に、思わずあきれて笑みがこぼれる。「モーディス」とともに生きる明日を望んだ「ファイノン」に前世の記憶はなかったが、目の前の男の生まれ変わりであるのは確からしい。
「
……
余計なことをしたんじゃないだろうな、カスライナ」
「まさか。傷口にきちんと瘡蓋がつくられるようにしただけさ。来世でも僕と君が一緒にいられたらいいと思ったのも事実だけど、それは彼らの選ぶことだからね。それに、もう君をひとりで戦場に置いていきたくなかった」
「そんなことを気にしていたのか」
「気にするよ。それに君だって本当は望んでいるから、ここを最期の戦場にしたんだろう?」
まったく、この男の前では何の嘘もつけないなと、メデイモスは目を伏せる。
幸いここは終着点だ。これ以上ここに立ち入る者も、ここから続く物語もない。あくまでこの終着点は土壌となるだけで、すでに花は咲いている。
ならばもう構わないかと、頬に置かれている男の手に己の手を重ねた。
「
……
そうだ」
頷いて、認める。
これが最期ならば、お前とともにいたいのだと。
救世主たる男はメデイモスの答えを確かめると、心の底からうれしそうに笑った。
そうして静かにメデイモスの身体を引き寄せ、その耳元で囁く。
「それじゃあ、決まりだ。今度こそ最期まで見届けて、一緒にいよう」
――
この物語を軸に咲く花々のすべてが散り、この本そのものが朽ちて土に還るその日まで。
僕は君を愛し、ともに戦うと誓うよ、メデイモス。
最期の告白
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