あの時見た
観用少女達も美しかったが、今は家でわたしの帰りを待っている彼がいる。なんとなく他の
少女を見ることが浮気をしているように感じてしまい、わたしは店主が淹れてくれた紅茶を飲みながら待つことにした。
「お待たせ~!あなたが頼んでいた品物よ」
店主が綺麗に包装された箱を渡してくれた。わたしが彼のために汗水垂らして働いた結果が今、こうして手元に形として残ることに達成感が胸に込み上げてくる。
「あの子、あなたからのプレゼントを絶対に喜んでくれるわ!」
店主に見送られ、帰路に着いた。帰り道でも彼の喜んでくれる顔を想像するだけでわたしの顔はにやけそうになる。それを我慢しつつ、早く家に着かないかなと逸る気持ちを抑え、彼への贈り物が入った箱を大事に抱えた。
「ただいま!」
ドアを開けると真っ先に彼が出迎えてくれた。手を広げてわたしを待っていた彼を、わたしはぎゅうっと抱き締め、彼もわたしを同じように抱き締め返した。幸福な気持ちで満たされていたが、彼への贈り物を思い出し、リビングへ向かう。わたしの持っている包装された箱に気付いた彼が不思議そうにわたしを見つめてきた。
「これ、君への贈り物だよ。気に入ってくれると嬉しいな」
箱を開けて、彼用に仕立てた服を見せた。わたしも実物は初めて見たが、やはりあの店主は要望を細かく聞いてくれていて、わたしの納得のいく仕上がりになっていた。彼の反応をちらりと見ると目を輝かせて、わたしを見上げてきた。喜んでくれているのがこちらにまで伝わって来る。わたしが笑うと、彼は今まで見たことがない程に極上の笑顔をわたしに向けてきた。これまでは控えめな笑みばかり見ていたので驚いたが、愛情をこの笑みで返してくれるだけでわたしは十分に幸福だった。
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その日、わたしは最悪な気持ちでいた。わたしのことを想ってくれる人がいた。母が亡くなった時もわたしのことを心配してくれて、わたしも彼のことが好きだった。彼からの小さな気遣いが本当に嬉しかった。でもそれはわたしだけの特別なものではなかった。わたし以外の女性に同じように愛を囁いて、たくさんいる彼女の中で時間があれば会う。わたしはそんな都合のいい女性の中のひとりだったのだ。それを知ったわたしは、文句のひとつでも言おうと思い彼に電話したが、彼はわたしの声に聞く耳を持たず、嫌なら別れればいいだけじゃん、と。ただそれだけ言って電話を切られた。怒りを通り越して呆れて笑えてくる。あの子はわたしの普段と違う様子に気付いているようで、お気に入りの人形を抱きながら心配そうにわたしを見ている。いけない、あの子の前で感情を激しく露にしてしまった。笑ってあげないと、そう思うと何故か目から涙が溢れてくる。拭っても拭っても止まらず、嗚咽まで漏れてしまう。堪えきれなくなり、顔を手で覆った。あの子を不安にさせたくなくて、こんなわたしを見せたくなくて、でも涙は止まらない。すると頭に何かが触れた。目から手を離すと、いつもわたしがしてあげているように、あの子がわたしの頭を撫でていた。あの子が自ら行動を起こすのは初めてのことで、驚きもあったが今はこの子からの優しさが嬉しくて、わたしは彼を抱き締めた。そしてわたしはぽろっと言葉を溢した。
「君が恋人だったら良かったのに」
「君がいてくれれば恋人なんていらない」
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