「
…本当に夢みたい」
ベッドの横に置かれた小さな天蓋付きベッドで眠る彼を見つめながら呟いた。振り返れば、目まぐるしい1日だったと思う。アグライアさんからの助言がなければ、わたしはこの子と出逢えていなかったのだ。明日、出勤したらお礼を言わなくては。目を閉じ、これからの日々をこの子と過ごせると考えるだけでも、明るく前向きになれるのだから
観用少年とは魔法のような存在だと思ってしまう。少しうとうとしてきた頃、視線を感じてうっすらと目を開ける。ベッドの縁から此方を覗く彼と目があった。
「
…どうしたの?眠れない?」
彼からの反応はない。店主曰く、目覚めたばかりの
観用少年は感情が薄く、反応が返ってこないことがほとんどだが、過ごした時間や食事の質、そして与えた愛情の量で多種多様な可能性が広がっていくという。何を考えて、何をわたしに伝えたいのか。まだ全て分かるわけではないが、今、彼が考えていることはすぐに分かった。
「わたしのベッドで寝たいの?」
やはり彼からの反応はない。それでもわたしから視線は離さない。肯定の意味だと解釈して、わたしは掛け布団を持ち上げて彼が入れるスペースを作る。すると彼はベッドをよじよじと登り、わたしの横にころんと寝転んだ。そしてやはりわたしをじっと見つめてきた。わたしという存在を観察しているような
…不快感はないが、その大きな目で見られるのは、落ち着かないような恥ずかしいような、複雑な気持ちだ。でも、この子が満足してくれるならわたしも嬉しく思う。
「いつか、君とお話ししたり
…声が、聞いてみたい
…な
…」
段々と目蓋が重くなり、視界が自然と閉じた。頬に何かが触れた気がしたが、目を開ける気力は残っていなかった。
□□□□□□
わたしと彼の共同生活が始まってからそれなりの月日が経った。彼のお世話をしていくうちに母がいなくなってできた喪失感のような心の穴は感じられなくなっていき、以前とほぼ変わらない生活が送れるまでになっていた。それに出逢った頃と比べると、彼の毛づやや青白かった肌に艶やかさが見えるようになり、より一層、彼の美しさが際立ってきたように見える。彼とわたしの関係もより親密なっていて、彼がわたしに微笑みかけてくれる回数も多くなった。それだけで十分に心は満たされていたし、彼のためにと勤勉に働くようにわたしも変わっていった。その功績も認められて、わたしの生活もゆとりができるようになり、少し奮発して彼用のオーダーメイドの服を仕立ててもらうことにした。そして今日は、その服が届いたと店主から連絡が来た。
「いらっしゃい!あら、あの
少年との生活、うまくいってるみたいね」
あの時と同じように紅茶の入ったティーカップを渡しつつ、わたしの顔が以前よりも明るくなったと店主の少女は笑顔を向けてくれた。アグライアさんからもこのお店を紹介して良かったと言われたが、わたしの方が感謝してもしきれない。
「あなたがオーダーメイドした洋服、届いてるわよ!奥に保管してるから持ってくるわ。それまで好きにお店を見ててちょうだいね」
小さなスキップをしながら店主はお店の奥へ入っていった。あれから暫く経ったため、あの時見た
観用少女達と顔ぶれが変わっているみたいだ。だが、目の前には店主が出してくれた紅茶も置いてある。さて、どうしようか?
観用少女を見ながら待つ
紅茶を飲みながら待つ
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