akinoshiroihana
2025-08-15 22:30:10
11438文字
Public
 

名刺置き場12





なぜ
招かれざる客人というものは
いつも

「よーし一回休憩じゃ。殺鼠剤を作るぞ隼人君、人間でもうっかり口にするウマそうなのを」
虎屋の羊羹の包みに板コンニャクが代わりにそっと入れてあったと聞いてから、敷島博士がいつもに増しておかしい。
ただでさえインドア派の研究者が現在敵対する人外の存在に遭遇もしたくないと寝具非常食を持ち込む研究室は、二本しか脚のない虫や毛深くないネズミをも寄せやすくなり、埃や体毛や砂粒、雑菌の混入をも許している。二号機パイロットというツレが副長としても所属しているせいで、その仲間二名が特に。

「俺の登山用の非常食でごまかしていたつもりですが、突破されましたか」
「カキ餅や干し柿はのー、カロリー考えて『これで足りる』とわかる賢い子以外は一気食いなんじゃの!」
「成程。」

死なせては博士の武器を試してくれる貴重な奴が一人減りますし俺はあの武器使用もそんな物騒なおやつ作りもやりたくないです、と応え背を向ける長い髪の彼に残念そうな顔になり、博士は

『どくいりようかん くったらたしぬぞ(あまいけど)』

十数年後のグリコ、森永事件の犯人のような文言をプラスチック爆弾にぺたり貼って、まあこないだのベトナム戦争では手を出したアホウが沢山おったんじゃがの、流石に真似せんじゃろいまどき、と言いつつ給湯室を去った

その晩、研究所内がえらい騒ぎになり、俺の学校の連中でも味見したのいましたよと長髪の青年は渋い顔になったし、後日彼が同じく登山用非常食の干しマンゴーをむしって分け与えた日には、その甘い香りがする粘土っぽい固まりに彼らは飛び上がって震えたという