akinoshiroihana
2025-08-15 22:30:10
11438文字
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名刺置き場12




ムメイ
@mumei_774
髪を伸ばし始めたところ「顔だけ見たらマジで女と見分けつかない時あって吃驚する」など風呂時に言われ、疲れてるだろうに吃驚させるのもなと人が少ない時間帯にと深夜入ってみたら「濡れ髪の女の幽霊が」など噂が立った隼人の話は多分漫画版。

ふむ。ってことでw
東映版は字が無印DVDBOXのブックレット並みに不親切チッチャイのでこっちで読んでくだせえ💦



「ぼちぼち少し切らないとまずいかな」と、『同校生徒としての品格を保つ範囲』での自由を謳歌する竜馬が、三分刈りや五分刈りでは済んでいないその頭の具合を確かめるべく、しげしげと鏡を覗き込んでいる。
それを彼より余程、自由な校風の恩恵に預かる隼人はちらりと見やり、ひとりで占領しているロングソファの上、ちいさく伸びだけした。
「まだ床屋には行かないのか」
「行かねえよ」

一緒に、などという誘いを挟み込む暇などそれこそ毛ほどもない。その顔を覗き込みに身を屈めた竜馬は、そのつれなさに大きな目をばちぱちとさせた。
「適当な頃合いに、プロ用鋏で見苦しくならねえ程度に自分で切ってる」
「え」
「これについてはきっと、武蔵の散髪代が一番高いぜ」
寝転んだままふんっと笑ったのは、ひそかに自慢なようである隼人だ。
「えっ、でも後ろ髪はどうしてるんだ」
「襟足なら合せ鏡と剃刀で大体いけるぜ?ああでもお前さんは」
―――ぅわっ?」
ああやっぱり、後頭部の毛が多いんだよ、だから伸びるとすぐに人の目につく
寝たままの隼人に手招きされて竜馬がソファの端に座り込めば、少し体温の低い長い指が髪の中に差し入れられ、好き勝手まさぐっていった。

いきなりの無体を許してしまった身持ちの緩さを悔しがる―――のは女子のすることだろうからこれは違う、いきなりはよせよと文句を言う―――そんな程度で不平を言うような関係を望む自分と彼であろうか?ならばこれも違う。
「後ろが?場所ごとに生え方が違うっていうのか」
言えば―――誘ってみれば、そういうもんだぜ、ほらこの辺、ともう一度ひやりと気持ちのいい侵入があり、タテガミだなこりゃあ、との評がある。それが気持ちいいとは言えないままに好きにさせていると、なんだよ頭の後ろをいじくってもらって喜ぶのはワンコぐらいだぜ、と隼人は興醒めしたのか半笑いでやめてしまう。少し心外が過ぎたので、おそらく隼人は床屋で首から上を好きにさせる密かな快感を忘れて久しいのだと、そう言ってやれば
「しらねえよ」
そうにべもなく返したあとの隼人が
「いや、そうじゃないや」
一段、素直な物言いになった

ガキのころ、お袋が頭を撫でてくれるだろう?そうすると髪の毛の終わりまですいと撫でる。客観的に見て姉貴の方が長く多く撫でて貰ってると思ったからそれからは髪を短くしなくなったんだ、お袋の病気が見つかって、そんなことのために体力を使わせたくなくなるまで。
今になってみればかあさお袋がそうしてやってくれと親父に言い残したんだろうな、葬式のあとで頭に触られた日にゃ、理髪店に飛び込んで坊主頭にしちまったが
「ボウズ」
「ん。」
いっぺんそりゃあもうばっさりと。先日和解した父親とのことをそんな風に隼人は話す。その恩讐の念の激しさに驚き、呆れもし、ため息をついたあとで竜馬は

「撫でてやろうか?」
「もう撫でながら言うんじゃねえよ。」



「他人に触られたくなくなってから」とは震った返事だ
隼人が床屋にまめに通うではない身になった事情を聞いたときの話だ。
自治を認められた校舎であるのに、不法占拠の学生活動家のごとく、籠城のような登校状態になっていたあの頃のなごりかときけば

「いいや成人してもねえのに学校側と交渉するんだ、なりはまともにしたしさせたさ」
確かに当時の隼人はヘルメットをかぶった蜂起写真もみな短髪だった、その双眸の奥にこの程度の衝突では消化しきれない意志力と行動力が液状のニトロのように不穏にあふれゆらいではいても。

ガキのころのな、IQの高い幼稚園児小学生と持て囃されてテレビにも呼ばれてたころ、あの時分全国で流行ってた上に芸能人の家庭も狙われた幼児誘拐に遭ってよ

覚えちゃいないが割と手荒な目にも遭ったらしくて他人に触られるのがすっかり受け付けなくなったり、そのときの傷を隠したり、傷を消す整形手術を待つ間に伸びた髪がそのままだっりした。「天才チビッ子ハヤトちゃんは今どこに」って時期さ。あの頃の殺されちまった子たちといっしょにされて猟奇的事件集扱いされてる番組もある筈だぜ

あーあったあった、俺も長年、変態野郎にナニされて殺されたんだと思ってた子がお前だとイテッ
髪が伸びっぱなしだったから、同年代の被害女児と写真が差し代わっちまったんだろな、申し分けねえんだか何だか

病院を出てきたところの幸薄そうな写真が上手い具合にフォーカスかフライデーかAERAされた幼い少年の写真は、後年長らく惨殺された少女のはかない往時の姿として取り扱われた、源頼朝の肖像が、あれはじつは頼朝じゃなかったと言われても一定以上の世代にはもはや覆らないように。それほどに日差しの下に出ることを忘れた白いちいさな細面の、長い黒髪の「少女」は過去の悲劇のアイコンと化し―――

「で、触られるのが嫌だったのがこの頭ってか」
よく言う!と竜馬はシーツの中の隼人をぺしり叩いてから風呂に行った。