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望月 鏡翠
2025-07-01 01:19:03
23156文字
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リアタイ
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シズメ 03
シズメ/三角 麻弓/遊泳期間作品
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今の海は麻弓が知る海よりも透き通っている。
それに夜になれば空も、記憶にあるよりも星がよく見えるようだった。
今は夏だというのに。
大気中の湿度が増す夏場は、一般的に星の観察に適した季節ではない。市街地にある麻弓の家も、学校からも星はよく見えなかった。街が明るすぎたし、人の営みはどうしたって空気を汚す。
それが今は、天の川を彩る星の細かい粒まではっきりと見える。
街が消えているからだろうか。
外に探索に行った人から聞いたが、単に学校が沈んでいるだけではなく、一定以上離れると、街だった場所が消えて何もない景色が広まってるらしい。だから家族がどうなったのかとか、学校にいなかった人がどうなってしまったのかという心配は、今のところしなくても良さそうだ。
たまには星空を眺めようと夜ふかしをした麻弓は、周りの人を起こさないように静かに体育館を出た。眠れない人もいるようで、案外学校の中には人がいる。先生は昼も夜も忙しそうだ。
空を見るために屋上に向かう途中で、御母夜 歩路の背中が見えた。
「やっほ〜、ほろちゃん。寝れないの?」
窓の外は光に招き寄せられてくる類の魚が屯している。それを眺めていたらしい。
「これから星を見にいくんだけど、一緒にどうかな」
「え、何それエモってやつじゃん、いく〜」
「でしょ? 久しぶりに夜更かししちゃおうと思ってさ〜。いこいこ」
連れ立って屋上に向かう。
最近は夜の屋上の混雑もようやく緩和してきた。
七夕のイベントが過ぎたからなのか、夜更かししていた人がそろそろ睡眠負債を解消しようとしているのかもしれない。麻弓は寝過ぎて久しぶりに夜ふかしをしたくなったタイプだから通常と逆だ。
運良く天候にも恵まれて空も晴れている。扉を開けた瞬間に潮風の匂いと満点の星空に出迎えられた。
星は星図を見ながらでないとどれがどれだかわからないけれど、有名な星座ならいくつかわかる。
きっと本当なら、遠くの山の上などに登らないと見えないものだ。図書館にあるものと見比べたら今いる場所が本当に現実と一緒になっているのかも、確かめることができるだろう。
「こんなにくっきり見えるんだね」
「ね、空が近く見えるよね」
夜空が落ちてきそうだ。波の音が絶え間なく屋上の縁を洗っている。
空いた場所を見つけて。腰を下ろす。
「プラネタリウムにいるみたい」
歩路が呟く。
体を受け止めてくれる寝心地のいい椅子はないけれど、あまりにもはっきりと星の見える空は、作り物と錯覚するくらいに精巧で美しい。
波の音がちょうど良いBGMになっている。
「なんか前にさあ、星の位置に穴を開けたボウルか鍋をこうくっつけて中に光源いれて手づくりでプラネタリウム~っていうのがあって大好きだったんだよね」
空を見上げたまま、歩路が呟く。
麻弓は思わず、腰を浮かせた。とっても素敵なアイデアだ。
「何それ、面白そう。作ってみようよ。この星空をそのまま映せるやつ」
「めっちゃいい! 形に残る思い出とか良過ぎじゃんね」
流石に鍋に穴を開けるのは大変そうだ。厚紙で代用できるだろうか。多分、光が透けてしまうのが問題になるはずだ。丸い形はザルに紙を貼り付ける形にしたら代用できるだろうか。
それかプラスチックのボウルならどうだろう。穴を開けていいものはあるだろうか。ビーチボールも切ってよければ綺麗な半円になる。
「ねえ、早速明日やってみようよ。完成したらさ、部室かどこかの教室借りるの」
あれこれ方法を考えていたら、ワクワクしてきた。
麻弓の意識はもう目の前の星空ではなく、頭の中で組み立てる工作の設計図に移り変わっていた。
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