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望月 鏡翠
2025-07-01 01:19:03
23156文字
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リアタイ
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シズメ 03
シズメ/三角 麻弓/遊泳期間作品
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玄間 裕一郎が海を見ている。その横顔は不安よりも楽しみが全面に出ているように見えた。
気持ちはよくわかる。
麻弓も、自然科学研究部の一員として目の前の光景に胸をときめかせずにはいられなかった。こんな現象見たことがない。見たことがない生き物がたくさんいる。
「裕一郎先輩、何してるんですか」
「さっき遠くに鯨がいた気がするんだよ。もう一度見れるか張ってみようぜ」
「鯨ですか!? ぜひ見なくちゃ」
海の近くにいても、鯨の姿は見たことがない。テレビの中にしかいない存在だ。
前のめりにフェンスに身を預けて、海に身を乗り出す。
おちるよ、とのんびりと言いながら裕一郎は双眼鏡を差し出した。部室にあった備品らしい。テプラで自然科学と印刷したテープが貼り付けてある。
「太陽の方は見ないこと」
「はーい」
双眼鏡や望遠鏡を使うときのお決まりの注意事項だ。
しばらく双眼鏡を覗き込んでいたのだが、途中でおろした。腕が痛くなったし、決定的瞬間は自分の目で見たいが、カメラにも納めたいと思い。デジカメの望遠でどこまで映るのかわからないが、レンズを覗き込んだ。
しばらく海面を眺めていたが、時々魚影が跳ねるだけで、大きな鯨のシルエットは見えない。きっとどれほど遠くにいても、鯨みたいな大きな生き物が跳ねたらわかるはずだ。
波の音が規則的に打ちつけている。
季節はもう夏に近いけれど、海を見ている最中はどことなく空気が冷たかった。海の只中にいるから体温が下がって感じられるのだろうか。
そういえば、と思う。この双眼鏡の場所、どうして先輩は知っていたんだっけ。
同じ部活だから。うん。当たり前だ。なんで今そんなことを不思議に思ったんだろう。
違和感を追いかけている隙はなかった。
「あ、あれ」
裕一郎が水面を指差した。
「どこどこどこ」
近くを指差している。水面を覗き込むと、暗い影が見えた。大きな影がゆっくりと横切っていく。
慌ててカメラを向けてシャッターを切る。ちゃんと写っただろうか。近すぎて大きな魚影はちょっとくらい水面としてしか映らなかったかもしれない。
「ジンベエザメだ。俺見たの、初めてだ。写真とれたか?」
「微妙です。あとでデータチェックしときますね」
動いているものを撮影するのは難しい。
「下の階にいたら泳いでいるところもっと見えたのかな」
泳いでいるジンベエザメが見られる場所なんて、沖縄か大阪にしかないと思っていた。たまに千葉県あたりに来ているらしいけれど、海の生簀の中にいるからダイビングができないと観察できないだろう。
楽しい二ヶ月間になりそうな予感がした。
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