望月 鏡翠
2025-06-20 12:53:48
13440文字
Public リアタイ
 

シズメ 01

シズメ/三角 麻弓/交流作品


 ジリジリと蝉の声が聞こえる季節になった。
 シズメ高校の周りは林に囲まれていて、近くにある施設も霊園と霊山ときている。緑が豊かな場所だ。夏になれば相応に虫が集まり、豊かな自然を観察することができる。
 春に目覚めた自然は夏になると更に活発になる。春に咲いた花が実る季節であり、春に生まれた虫が成虫になる頃合でもある。海の生き物も水温が暖かくなってくると格段に増えて、水に濁りが多くなる。
 葉っぱの裏を見ればこれから羽化する蛹が見つかるだろうし、木の幹に蝉の抜け殻がついているだろう。それにそろそろ雑木林にカブトムシが出てくる頃だろう。
 何かを探すのなら、人手は多い方がいい。
 麻弓は心強い助っ人に声をかけることにした。
「龍之介く〜ん! 今日ってバイト!?」
 二組の立間 龍之介は自然科学研究部ではない。クラスも違う。放課後はアルバイトをしていて日々忙しくしている。しかし、予定が空いているときなら、楽しそうな遊びに付き合ってくれるノリのいい友達だった。
「カブトムシ取ろうと思ってるんだけどね、手伝ってくれない?」
 今から準備すれば放課後には間に合う。
 用意した蜜を木の幹などに塗っておき、翌日の朝早く見にくる。そうすると夜の間に餌を求めた虫がまだそこに残っている。やることは簡単なのだが、虫が眠ってしまう前に学校に来るというのが、しんどいのだ。
 付き合ってくれる人がいないと、また今度でいいかなんて諦めて普通の時間に起きて登校してしまう。
「いいよ。大きいの取ろう。ヘラクレスオオカブト」
「さっすが龍之介頼りになる〜」
 早速、スーパーで買ってくるものを書き出す。昼休みは短い。効率的に時間を使わないといけない。
 カブトムシを呼び寄せる餌はこってりした甘みと発酵臭だ。バナナトラップを作る。黒糖とバナナまでは購入できる。問題はお酒だった。
 焼酎と書いてあるところとワインと書いてあるところがある。いずれにせよお酒なのだ。高校生の二人には、まだ手に入らない。
「どうする?」
 龍之介は不安そうな顔こそしないが、答えを探す目で麻弓を見た。
 バナナトラップでなくても、カブトムシは捕まえられる。例えば光を使えばいい。しかしそれだと照明機材など集めなければいけないから、もっと時間とお金がかかってしまう。
「顧問の先生に聞いてみる」
 先生だって、仕事中にアルコールを買いに出るというのは難しいだろう。
 結果、カブトムシ取りは少し先延ばしになった。
 やはりお酒の当日用意が難しかったのだ。何に使うのか説明して、持ち込みの許可はもらった。虫の餌に加工した状態のものならばいいだろうということになったのだ。
 家に帰って、親に材料を買ってもらって、準備したトラップを学校に持ってくる。
 龍之介には次にバイトが休みの日を聞いて、そのときに改めて一緒に虫取りをすることにした。