望月 鏡翠
2025-06-20 12:53:48
13440文字
Public リアタイ
 

シズメ 01

シズメ/三角 麻弓/交流作品


 部室で観察しているダンゴムシの餌を集めないといけない。彼らの餌は枯れた落ち葉で、食べることで植物が土に還るのを助ける分解者の役割を果たしている。ダンゴムシ以外にも見えない微生物や他の虫が、枯葉を餌にしている。
 箒で少し履けば、いくらでも生き物を観察することができる。自然科学研究部として、活動していると虫への抵抗感は減る。葉なんて数枚で良いのだが、生き物観察を始めていると、あっという間に時間が過ぎていく。
「あ、まゆまゆ何してんの」
 隣のクラスの内海 想太が麻弓の手元を覗き込んでいる。
「ダンゴムシの餌拾いにきたんだけど、今は虫見てた」
「虫大丈夫な人なんだ。ダンゴムシ飼ってるの」
 その口ぶりからすると、想太も虫が苦手な方ではなさそうだ。人によっては悲鳴をあげてしまうから、可愛がっている相棒の紹介も慎重にしないといけない。
「飼ってる。部室でね」
 ただ飼育しているだけではペットと変わらない。ちゃんと研究として発表できるような内容も考えていて、生のものと枯れたもの。あとは木の種類。異なる種類の葉っぱを入れて、どれが好みなのかを探る実験をしている。
 数枚の葉っぱを集める行為に時間をかけるのも、それなりに意味があるのだ。
「へ〜部活で虫飼ってるんだ。面白いことしてんね」
「実験内容まとめたら見にきてよ。でもめんどくさかったら面白そうなことしてるときに遊びにきてくれるだけでも良いよ〜」
 成果を発表するのは主に文化祭だが、実験結果をまとめた冊子より、ペットボトルロケットを飛ばしたりする方が親しみやすいというのはよくわかっている。麻弓はどちらの活動も好きだから、目の前の人がどちらに興味があっても嬉しかった。
「うつやんは何してたの?」
「良い感じの棒見つけたから持って帰ってきた」
 想太が手にしている棒は樹皮が剥がれてつるりとした表面になっている。流木だろうか。
「いいなぁ、私も欲しいかも。浜とか言ったら流木見つかるかな」
「お、まゆまゆも探しにいく?」
「いくけど、葉っぱ置いてくるから一瞬待ってて」
 麻弓は立ち上がると、ジャージの膝についた土を払った。