望月 鏡翠
2025-06-20 12:53:48
13440文字
Public リアタイ
 

シズメ 01

シズメ/三角 麻弓/交流作品


 お店の前で煙草を吸っている人がいると、高校生の身分だとそこには近づいてはいけないような気がする。結界を張ったみたいだ。いや、煙で遠ざけられるのだから、蚊取り線香と虫の関係だろうか。
 麻弓は子供扱いされると腹が立つ年頃ではあるけれど、まだ成人ではない。
 居酒屋に緊張するくらいだから、悔しいけれど本当は名実共にまだ子供なのだろう。今は時代の流れに合わせて居酒屋でも全席禁煙だ。だからお店の前にある喫煙所に、煙草を吸いたい人が溜まっている。
 たぶん、今よりもっと幼かった頃に、親に連れられてきたことがあるはずだ。夕食の準備をするのが面倒になったときや、お酒を少しだけ飲むと決めたとき、あとはただ美味しい刺身が食べたくなったとき、地元の人が子供を連れてやってくる。
 幼いときの麻弓は、お魚もおつまみも好き嫌いせずにちゃんと食べただろうか。
 ハンバーグよりも刺身が食べたくなる大人の気分もちゃんとわかるから、昔よりは楽しめるはずだ。
 今日は、麻弓がたつみ屋に来たいといったのだ。
 同学年の巽 栄心がここで働いているらしい。というか、実家がここらしい。麻弓にとっては「同じ学校の栄心くん」だが、両親にとっては「たつみ屋の息子さん」だ。だから親が昔から通っているにもかかわらず、同じ学校に通っていると知ったのはだと知ったのは最近だ。
 試食のプリンをもらったあたりだろうか。配っていたのがプリンだったから、喫茶店なのかと思っていたが、もらったチラシは居酒屋のものだった。それが家でも見覚えがあるクーポンで、ようやく頭の中で彼の巽という名字とたつみ屋が繋がったのだ。
 放課後に釣った魚も時折メニューに並ぶのだという。魚の大きさの記録観察にいったときに見せてもらった、あのとっても大きな鯵もきっと何かになったのだろう。