●五月五日
(東映武蔵の命日は、放映日的には五月八日です。達人さんは前月四日)
測ろうぜ、元気ちゃん
もう使わなくなったが惰性で置かれたきりになっていたらしい大きな木馬の向こう、リビング隅の柱の一本。きれいに住まれた邸宅であるのに、そこにだけあからさまな傷が刻まれている。
例年ならそこに小卓を置いて、兜飾りを出しなどもしていたのだという。
柱の傷は一昨年の
そう歌った人がいる通り、その日に子供の背を測ってくれていたのは年の離れた『兄さん』だったという。気丈な学園のマドンナが寂しげにも涙は見せず、ほんの一月前に逝った肉親のことをそう語ったから、リビングを覗いた三人の若者の内、パイロットスーツとは到底言えない一番珍妙な恰好の武蔵がそう子供を呼んだ。
「えっ、でも」と最初嬉し気に、しかし次に不安げに見上げる子供の目線と、はっとした表情のミチルのそれを、竜馬はまっすぐ見返し隼人は鼻で笑ってみせたがけっして意地悪くはなかった。
『こんなのお安い御用さ、トカゲどもとど派手にやり合いに行く前だって構やしない
ははーんオイラ達が信用ならねえなら無事生きて帰ってから測ろうか』
などと言われたから、子供はぷうっと頬を膨らませ、そののちきゅっと唇を結んで、
竜馬がそこにあったブルーナ絵本の紙箱を子供の頭の上に乗せ、よしここだと武蔵が背負った刀で柱に新たな刻みを入れ、隼人が早乙女家の洋裁用の巻き尺で百二十三と読み上げた。思わぬ三人での共同作業。
翌年もそうした三日後、彼等は二人になって、茫然と空を仰いだ
「どうする今年は俺達からお願いしてみるかい」
測らせてくれないか、元気ちゃん
もう俺達勝手に先に行きやしないからさ。約束するよ。
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