akinoshiroihana
2025-06-05 21:49:10
14405文字
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名刺置き場11






東映隼人の白さ大好き侍のねごと。
ソース:介護風呂の職員さん達のおしゃべり

蝋のような、とは白いだけをいうのではない。そんなにまですべすべと常ならぬ滑らかさで、わずかになら透き通りそうで、そばかすも浮かないと決まっていて。

実家の私営での身障者、老人介護施設において、幼い竜馬はときに彼ら彼女らの入浴や爪切りなどを手伝った。
いくら言い聞かせても脱衣所で泣き叫ぶ一部の老婆は戦前の意に沿わない婚姻の前段取りで無体をされた、嘗ての乙女だったのだと聞かされもして。とうじ五、六歳だった竜馬は、まだ子供だから辛うじて恐怖の対象にならないからと、子供にはいささか酷な体格差と体重と汚れの匂いのあいだでたまに、不思議に少しきれいなものも見た。

もう老いて縁起絵巻の中の木々や粗末な家のようにすべてが下方向に萎れしなだれた裸体がそれでもとても白い者がときどきあった。血筋だなんだではなく、薄茶色の群れの中にときおり混じっている色としてそれはいつもどこかにあった、数十年を生きても使い込んだ手元のほかは変わらなかった変われなかったようなそれはここに来るまで生き苦しそうで孤独そう恥ずかしそうに見える者もいて、それでいて触れればとてもきれいだと竜馬は思った、ほかよりもう少しなにかしてやりたくなるほどに。もう少しやさしく、もう少しあたたかく、もう少し怖くないよと伝わるように。

シャワーブースから出て来た隼人が手早く服を纏うのを、タオル一枚纏っただけの竜馬は、そんな記憶の蓋が開いたまま眺めていた。
「なんだい、なにか見えるかい」
言っておいて返事を待たず部屋を出て行った隼人の、髪がまだ水を多く含みうなじを白く輝かせるようだった残像。自分はまたあの色に触れる時になったのだなあと、竜馬は不思議に確信だけした。