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ロンド
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奈落の大穴
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Lost Children【再録】
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六 オーゼン、夜籠もりに醒める
ある日の宿に転がり込むなり金勘定をしていたライザが眉をひそめた。
「路銀が足りない」
「変なものばかり買うからだよ」
「変じゃないもん! お土産だもん! よし、遺物売って金にする」
ライザが無一文になると困る手ぶらのオーゼンは好きにさせることにした。翌日ライザは宿泊した街で一番の金持ちだという邸宅に乗り込みに行った。オーゼンは宿で朝飯を取ってから、だらだら惰眠をむさぼっていたが、昼過ぎにもライザが帰ってこないので迎えに行くことにした。ライザがいざこざを起こして邸宅を破壊していたら、さっさと回収してずらかろう。
あくびをしつつ丘の上の城門まで出向いたところで、ライザが城門から意気揚々と現れるところだった。オーゼンを見つけて飛び跳ねるように駆け降りてくる。飛びつかれたので反射で即座にはたきおとした。
「首尾は上々だったようで」
「まぁな! 令息がアビスの遺物蒐集に熱中してるらしくて眼の色変えてきたから、相場の四倍吹っ掛けてやったんだ! 『保存器(フォーゲッター)』なんて相当数出てるのに馬鹿だなぁ」
「よく信用してもらえたもんだよ
……
。ずいぶん遅いからお前さんが館主ぶん殴ったのかと」
「オーゼンからの信頼がなくて私は悲しいんだが⁉ 令息が挨拶に来たんで、白笛を見せたら大興奮でさ。豪勢な食事の代わりに、根掘り葉掘り白笛の話をねだられた。あっ、『命を響く石(ユアワース)』とかハリヨマリ伝承とか口外無用の話はしてないぞ!」
「フーン
……
昼飯食ってきたんだ
……
私を置いていってさァ
……
」
ライザはさっと顔色を悪くする。
「わ、悪かったよ! オーゼンが食べると思って包んでもらったから、食っていいぞ!」
ライザが広げて見せたタレがけスペアリブが肉汁滴って美味しそうだったので、拳を落とすことで許してやることにした。香草の効いた味付けはたいそう美味だった。
ライザがたんまり手に入れた通貨でオーゼンとライザはなおも旅を続ける。
固有の鹿が群れる大草原、断崖絶壁に経営する料亭、水晶が育まれる鍾乳洞、塩分が固まった虹色の湖、死者を迎える行進がにぎやかな祭り。これほど勝手気ままに歩いたことはなかっただろう。早朝から日没まで歩き通し、夜は顔を突き合わせてガイドブックをめくってから眠る。ガイドブックはライザの書き込みにまみれていた。
オースからずいぶん離れてしまったが、ライザの歩みはずんずん止まらない。まるで帰り道を考えていないような道のり。半端な情報が乗った地図を片手に、未踏破の地へ突き進んでいく感覚と似ていた。終着地のない、あてのない旅はアビスを舞台にしない絶界行(ラストダイブ)のようだ。もしかすると、ライザはオースに、ひいてはアビスに還る気がないかもしれない。
ある夜の寝床で、寝相の悪いライザに抱き枕のように抱きつかれていたせいで目が覚め、うつらうつらと考えていた。オーゼンは初日以来、真意を訊ねていないままだった。
半生に染みついたものを切り離し、そぎ落としていくことは恐ろしいようで、ライザが一緒ならば構わないような気がしていた。オーゼンはライザを潰さないように寝返りをうち、吐息を聞きながらふたたび夢をみない眠りに落ちた。
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