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2025-04-04 14:06:13
10685文字
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演劇【推しの子】
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虚ろの手紙
廻り金魚
の後、旅を続ける匁から届く手紙。
※捏造に捏造を重ねているので訳がわからんところもありますが、
わし時系列
からなんとなくお察しいただけますと幸いです。
手紙(1)
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手紙(2)
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手紙(3)
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手紙(4)
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手紙(5)
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手紙(終)
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東京 新宿區 歓楽街
キザミ将軍閣下
本気なのか皮肉なのか顰めつらしい宛名で手紙が届く。
差出人の名はない。
————————
手紙(5)
匁からの手紙が届く。
両が血相を変えてキザミのところへ駆け込んで来た。
手紙は酷く汚れていた。
「キザミ。こいつは血だ。古い痕だが間違いねえ」
「誰が持ってきた?」
「貫が探してる」
箋にも同じように黒く血が染み付いている。むしろ指で血をなすりつけて文を書いたのだ。その上に更に血が滴ったらしく、もう何も読めない。封筒の裏にも血を指で掻いた跡が残っていた。文字ではない。箋も封筒もすでに乾き切って赤黒い。
程なく貫は何も見つけられずに戻って来た。入れ替わりに両が港まで行くと言い残して走って行った。今の季節、東京には海路で入る荷が多い。
キザミは手紙を懐に入れて急ぎ渋谷へ向かった。
途中で両の伝言を持ったつるぎと会った。手紙を持って来た者はまだ見つからないらしい。
入る船が多いということは出て行く船も多いのだ。手紙がどこから運ばれて来たのかはわからないままかも知れない。
鞘姫は匁の手紙を見て眉を顰め、刀鬼に一言告げた。
「ナカゴをここへ」
ナカゴはとらえどころのないつるんとした顔の女だった。若いようにも老婆のようにも見える。深く被ったフードがどこか匁を思い出させる。
ナカゴは渋谷の術師である。長く王家に仕え、薙王とハバキの死に立ち会い、鞘姫の名付親でもある。ということは、かなりの年齢なはずなのだが。
血塗れの手紙を手に、ナカゴは静かに眼を閉じた。
ここではない何処かで何かを見ようと探しているようだ。
「
……
声」
「声?」
「この手紙から読み取れるのはそれだけじゃ。これは遠くから旅をしてきた。あまりに遠すぎて何も見えぬ」
声。関係はないのかも知れない。だが今は少しでも手がかりが欲しい。
「あの
……
匁は流水死命の声が聞こえると言っていた。流水死命が匁を喚ぶって
……
でも俺は獄楽天女の声を聞いたことはない。
俺はこの刀を信頼してるしこいつもそうだと思ってるけど、そんな気がしてるだけだ。剣主は盟刀の声を聞くものなのか?」
キザミは腰の盟刀を軽く叩いてみる。獄楽天女は何も応えない。
視線を投げると鞘姫も刀鬼もふるふると首を振った。
「盟刀には剣主を選ぶ意思があり、理を超えた力もある。それは間違いのないことじゃ。だがその意思は人や鬼に伝わる言葉になるものだろうか。我ら術師が星辰の意を読み解くには言葉に依らぬ」
ナカゴは謳うように話す。その声は耳に心地よいが内容がいまいち頭に入って来ない。
新宿には術師がいない。キザミは眼をぱちくりさせながら話を聞いていた。
その様子に気づいたのか、ナカゴは少し口調を変えた。
「我は剣主ではないゆえ、はっきりしたことは言えぬが
……
匁は己の心を盟刀に映していたのではないか。ならば声とは匁自身の声であるやも知れぬ。あれは己にも嘘をつける子だ」
匁は息をするように人を誑かす。それはキザミもよく知っている。匁の真意がどこにあるのか、キザミには知れたことがない。
「匁は
……
どうなる
……
どうしてる? また流水死命で虚ろを埋めるのか?」
「それは誰にもわからぬこと。ただあの子が必死に足掻いていることだけは、この手紙が示しておる。我らはただ次の報せを待つしかありますまい」
重苦しい空気を払うようにナカゴはふっと息を継ぎ、改めてキザミに眼を向けた。初めは無表情だった顔が、今はいくらか優しく見える。
「ナカゴは礼を申します。キザミ。匁はよき伴侶を得たようじゃ」
「伴侶
……
て。伴侶?」
「あるいは魂の番。よき同胞、何ものにも代え難き輩。遠く離れてはいても互いの隣に立ち、同じ道程を征く旅人だ。
我はあの子に何もしてやれなんだ。それは悔いておる。そなたの思いが我らをも救ってくれましょう」
旅をしているのは匁だ。キザミは一緒には行けなかった。再会の約束もしなかった。
何も出来ないのはキザミも同じ、ただ手紙が届くのを待っているだけで返事も書けない。
「匁は俺に、思い出してくれと言った。俺にできるのはそれだけだ。
……
匁も俺のことを思い出してくれてるといいけど」
鞘姫が何も言わずただキザミの手を取った。
零れそうなほど涙に潤んだ瞳が、どんな言葉よりも雄弁だった。
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