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2025-04-04 14:06:13
10685文字
Public 演劇【推しの子】
 

虚ろの手紙

廻り金魚の後、旅を続ける匁から届く手紙。
※捏造に捏造を重ねているので訳がわからんところもありますが、わし時系列からなんとなくお察しいただけますと幸いです。

手紙(1)手紙(2)手紙(3)手紙(4)手紙(5)手紙(終)



東京 新宿區 歓楽街
キザミ将軍閣下

本気なのか皮肉なのか顰めつらしい宛名で手紙が届く。
差出人の名はただ一文字。


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手紙(3)

匁からの手紙が届く。
文字が震えている。
珍しく何枚かの箋が入っていた。

取り留めもない呟きが、取り留めもなく綴られている。
山中の宿場で雪に降り籠められて立ち往生し、暇を持て余しているらしい。

「どこにいるんだよ……

新宿はもうすぐ夏だ。抜けるような青い空にまだ柔らかな入道雲が立つ日もある。前の冬は東京にも雪が降った。その頃に書かれた手紙だろうか。

王が即位し國がひとつになったとは云え、物の流れは以前とさほど変わりがない。
個人の手紙は礼金を添え、遠方へ運ばれる荷に託される。礼金が尽きてから先は、届け先での礼を期待して宛名の所在へ向かう誰かが引き受ける。運任せの受取人払いなのだ。
匁の手紙がキザミのもとへ届くのは、新宿の将軍閣下という宛名に依るところが大きい。それでもすべての手紙が届いている訳ではないのだろう。

なにもみえない。

なにもきこえない。

どこへもいけない。

さむい。

いつまで。

最後の箋の裏に一言だけ小さな文字があった。


あいたい。


キザミはしばらくじっとその文字を見つめていた。
それから拳で眼を擦り、文箱の一番奥にそれをしまった。この手紙は他の誰にも見せない。

その夜は白と黒の夢を見た。
しんしんと降る雪の中を影のような旅人が遠去っていく夢だった。